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こよみさんは勝たせてくれない~完璧美少女な幼馴染が僕だけに甘い勝負を仕掛けてくる~  作者: maricaみかん


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9話 小テストの対決

 テスト本番まで、もうちょっと時間がある。けれど、そう簡単に勝てるものではない。

 なにせ、こよみは首席合格なのだから。平均より高い成績という程度の僕には、かなりの難題になってしまう。

 ただ、諦めることもあり得ない。だから、僕はこよみにノートを借りて朝から勉強していた。


 そんな中、こよみは僕に声をかけてくる。


「次の小テストで、勝負しよっか。はると君が負けたら、罰ゲームだよ?」

「えっ……。罰ゲームだけ?」


 つい、そんな言葉が出てしまった。

 まるで、僕がご褒美を求めているみたいじゃないか。餌に釣られる魚じゃないんだぞ。振り払うように、首を振る。

 こよみはそんな僕を見て、ニンマリとして指でバツ印を作っていた。


「ご褒美の方が良かった? でも、今回はお預けー!」


 こよみマジックに、引っかかっていたみたいだ。僕の反応を、読み切っていたのだろう。だけど、反撃も思いつかない。仕方ない。このまま進めよう。


「そ、そうなんだ。というか、罰ゲームの内容は……」

「内緒、かな。負けた時のお楽しみ、なんてね」


 いたずらっぽく、こよみは唇に人差し指を当てていた。こんな時にも茶目っ気を見せてくる。

 こよみのことだから、ひどい罰ゲームではないだろう。それは信じている。だけど、どんな罰ゲームなのか気になって仕方ない。こよみの罠だと分かっていながら、僕は逃れられない。


 無心になれ、僕。こんなことで集中を乱していては、本番でも負けるだけだぞ。

 感情を引きはがすように、こよみに言葉を返す。


「うん、確かに。本番で勝つためにも、気合いを入れないとね」

「やっぱり、はると君もキスしたいんだー?」


 こよみは獲物を見つけたような笑みを浮かべる。完全に、スキを突かれた。

 くっ、甘かった。状況が分かっていて、なんて言葉を選んでしまったんだ。これでは、自分から攻撃に当たりに行ったようなものだぞ。


 そんな焦りを抱きながら、僕はさらなる追撃を避けるために弁解する。手をパタパタと振りながら。


「そ、そういうのじゃないよ。ご褒美は大きいし、少しくらいはって」

「答えを言っちゃってるんだよねー。はると君らしいけどー」


 わざとらしくニヤニヤしながら、こよみは追撃してきた。

 完全に、言う通りだ。何がご褒美は大きいだ。キスが嬉しいと言っているだけじゃないか。やはり、僕は心を乱しているのだろう。

 実際、キスについて考えると、ちょっと頭がボーッとしてしまう。完全に、大きな弱みが生まれている。


 なら、もう避けようとしても仕方ない。認めることで、攻撃に変化させてやる。


「そりゃあ、こよみさんとだし。誰だって、羨ましいと思うはずだよ」

「はると君は、どうなの?」

「もちろん、嬉しいなんてものじゃないよ。きっと、人生で一ニを争うくらいだろうね」

「そ、そこまでなんだ……。なら、学校でも頑張ってね。最高の瞬間を、目指すんでしょ?」

「うん。手を抜いて、こよみさんに勝つことなんてできないからね」


 こよみは、ちょっとだけ顔を赤くして頷いた。ひとまず、一矢は報いたと思う。けれど、本番で勝つことが大事だ。


 だから僕は、朝の勉強を終えて登校する時にも、こよみに勉強について質問を繰り返していた。当たり前のように答えるこよみに、実力の差や暖かい優しさを感じたりもした。


 その調子で、登校してからホームルームまでの間にも勉強をしていく。そんな時に、声が届いた。


「あれ、はると。そのノート、こよみの字じゃない?」


 声をかけてきたのは、クラスメイトの女子だ。僕よりも、こよみとの方が仲が良いと思う。実際、こよみの字を当てているわけだし。


 勉強途中ではあったけれど、ひとまず返事をする。クラスメイトを無視するのは、ちょっと違うから。


「うん、まあ。こよみさんに手伝ってもらって、少しでも点数を上げたくて」

「相変わらず、お熱いことね。ま、あんた達らしいけど」


 ちょっとだけ口の端を緩めながら、そう言っていた。お熱いってほどではない気もするけど。そもそも、まだ付き合ってすらいないのだし。


 そんな事を考えていると、こよみが僕の右あたりから、ひょっこりと出てきた。


「ゆりちゃん、何の話をしていたの?」

「こよみたちって、昔っから仲いいわよねって話よ」

「そうかもね。まあ、幼馴染だし?」


 こよみも、友達の前では僕が相手の時と態度が違うというか。からかうような感じではない。僕が特別だと喜べば良いのかどうなのか。

 まあ、少なくとも嫌ではない。やめてほしいとは思わない。だったら、それで良いんだ。


 ゆりさんは、ちょっとだけ遠くを見るような顔で僕たちを見ていた。


「あたしとあんたがケンカした時、はるとだけはこよみの味方だったもんね。ある意味では、あたしがキューピッドみたいな?」

「ゆりさん……」


 僕はゆりさんをじっと見てしまう。ケンカとは言うが、ゆりさんがこよみに突っかかったようなものだからな。

 女番長的ポジションだったゆりさんに、多くの人が追従した。結果的に、僕だけが味方になった。

 正直に言って、今も思うところがある。そんな気持ちが、顔に出てしまっている。


「そんなに、にらまないでよ。あの時は、確かに私が悪かった。ちゃんと反省してるのよ?」

「実際、よくある話だしね。気にしてないよ、はると君。でも、優しいね」


 こよみの言葉を受けて、僕は引き下がる。当人が気にしていないのに、勝手に突っかかるなんて論外だ。一番大事なのは、こよみが許しているという事実なのだから。

 そうだよな。腹に据えかねているのなら、仲良くなんてしない。僕も、気をつけないと。

 ということで、僕はゆりさんに頭を下げた。ゆりさんは、軽く苦笑していた。


「はるとくらい一途なら、良い相手なんだけどねー」

「ごめん、聞こえなかったよ。もう一回、言ってもらって良いかな?」

「待って! 冗談! 冗談だから! その目をやめて! 怖いって......」


 ゆりさんは、慌てた様子で手を振っている。こよみを見ると、いつも通りの笑顔だった。

 そんなに言われるほど怖いなら、ちょっと見てみたかった気もする。

 どうせこよみのことだから、猫がにらんでいるくらいの感じだろうとは思うんだけど。それでも、いつも笑顔だからな。ニタニタしている瞬間も含めて。

 まあ、いつもと印象が変わったから、インパクトが強かったんだろう。


「まあ、冗談なのは分かるけど。でも、私の前では言わないでね?」

「二度と言ったりしないって……」


 ゆりさんは、疲れた様子で肩を下げている。そんなに怖かったんだろうか。こよみが? ちょっと、信じられないかもしれない。

 まあ、実際に表情を見たわけじゃないから、なんとも言えないんだけど。ほんと、どんな顔をしていたんだろうか。


「ところで、ゆりさんは勉強しなくていいの?」

「ああ、邪魔しちゃったわね。あたしは、ほどほどで良いわ。はると、頑張りなさいよ」

「じゃあね、ゆりちゃん。はると君は、頑張ってねー?」

「もちろんだよ。そう簡単に負けたりしないよ」


 こよみとゆりさんが去っていき、僕はホームルームの時間ギリギリまで勉強する。


 そして先生がやってきて、ホームルームで小テストが出される。全問解けた手応えがあったけど、一問一問しっかりと見直しをした。そして終了の合図が出されて、隣のこよみと交換して採点する。

 当たり前のように、こよみは満点だった。


 そして僕は、こよみの方を見る。そうしたら、嬉しそうな笑顔が見えた。


「ふふっ、全問正解できたんだ。おめでとう、罰ゲーム回避だね」


 その言葉を受けて、ちょっと息を吐く。安心したのかもしれない。とにかく、ちゃんと成果が出ている。


「頑張ったからね。こよみさんこそ、全問正解みたいだけど」

「今回は、引き分けだね。くすぐりができないのは、ちょっと残念かも」


 そう言って、こよみはちょっとだけ下を見ていた。今回の罰ゲームは、くすぐりだったのか。回避できてよかった。

 こよみには、僕の弱いところを完全に知られている。負けていたら、メチャクチャにされていたはずだ。それこそ、陸に上がった魚みたいになっていただろう。本当に良かった。


 そんな気持ちを隠しながら、僕はまっすぐにこよみを見た。


「ただ負けるだけの僕じゃないんだよ。今度のテストでも、勝ってみせるから」

「小テストと違って、満点は難しいと思うよ? でも、頑張ってね。ずっと、応援しているから」


 こよみは、僕の手を握りながらそっと微笑んだ。僕は、深く頷いた。

 そして、こよみは自分の唇に人差し指を当てて、その指で僕の唇を押さえてきた。

 つまり、間接キスみたいなもの。ご褒美がないなんて、嘘じゃないか。完全に、騙された。僕をもてあそぶ術を心得ているんだ。

 そんな気分になりながら、目を合わせる。こよみは、とてもニコニコしている。


「ふふっ、本番が楽しみだねー?」


 本当に楽しみだというように笑っていた。僕は、強く目を引きつけられてしまう。きっと、こよみも期待しているのだろう。

 テスト本番まで、もうちょっと。絶対に、良い結果を残してみせるからね。

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