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Case16-15.『決戦』

 ドローンが光を放つ。

 側近は動きを止め、目を庇うように腕を構える。


 光はすぐに消える。

 だが視界いっぱいに強い光を受けた側近の視界はすぐには機能しない。


 その隙を使い、シアは側近から距離を置く。

 そして蔦で相手の足を捕えると枝のように硬化させ、蔦としてのしなやかさを敢えて失わせる。

 距離を詰めることができないよう敵をその場に縫い留めたシアは自身の顔半分から半身にわたるまでに植物化を拡大させ、太い蔦をいくつも側近へと放つ。


 それは男の腹部や脚を次々と貫いていく。

 だが体の中心を捉えるには強度が足りず、また頭や首の急所は男が腕を交差して構えた事によって防がれてしまう。


 貫かれた腕の隙間から、側近は顔を顰めながら瞼をこじ開ける。

 まだろくに機能していない目を使ってなんとか状況を把握しようとした。

 顔を大きく左右に向けた側近はそこで倉庫の中へ入り込もうとしている敵の存在に気付く。


 シアは今度こそ止めを刺そうと、先程よりも大きく太い蔦を一つ生成する。

 最早小さな木の幹のような太さになったそれは目にも留まらぬ速さで側近の頭を狙う。


 だが次の瞬間。

 いくつかの蔦に貫かれた腕が動かされ、蔦を振り解く。


 そして自身の足を捕える蔦へ向かって拳を振り下ろした。

 衝撃が足場を揺らし、コンクリートの床の破片が弾け飛ぶ。


 側近は足の蔦を無理矢理叩き切ると、残りの蔦を肉を巻き込みながら引き千切り、ビルの外――倉庫へと飛び出した。

 ビルから倉庫の前まで一瞬にして移動した彼は大きな音を立てて地面を傷つけながら着地する。


 その後ろ姿を目で追ったシアもまた、すぐに彼を追いかけてビルを飛び降りたのだった。




 倉庫から離れた路地裏。

 停められた車の中でスマートフォンを持つレーナは画面を二分して映るルカとシアの様子を窺っていた。


 そしてルカがズールイへ接触した瞬間、突然飛び込んで来た巨体が彼を吹き飛ばす瞬間を見る。

 血肉を飛び散らせ、細い体があらぬ方へ曲がる瞬間に鋭く息を呑みながらもレーナは能力で過去へ遡る。

 既にルカの死を回避する為に十回は能力を使っているレーナの顔色はあまり良くない。

 彼女の体には大きな疲労が押し寄せていた。

 しかしその疲労に気を抜けば仲間が死にかねない。


 レーナは一刻も早く、迫る危機をルカは伝えなければならなかった。


「ルカ! 避けて!!」

『ッ……!』




 無線から必死の指示を聞いたルカはすぐにズールイから距離を取ろうと大きく後退する。

 この眼前へ太い腕が迫った。


 なんとか避けた攻撃。しかし咄嗟の回避で体勢が崩れ、次いで繰り出された強い蹴りに対応しきれない。

 ルカは腹部に強い衝撃を受けながら吹き飛んだ。


 倉庫内のコンテナへ激突し、彼は肺に溜まった空気を全て吐き出す。

 コンテナの壁を凹ませ、その傍に落下したルカはうつ伏せに倒れながら大きく咳き込む。


「……ッ、クソッタレ」


 喘ぐ彼の口から血が溢れて地面を濡らす。

 朦朧とする意識をなんとか繋ぎ止めながらルカは腕を立てて体を持ち上げる。

 上げた頭の先。ズールイの傍に立つ側近がルカへ止めを刺すよりも先に彼の背後から蔦が伸びる。


 ズールイを狙ったそれを側近は片手で掴み、引き千切る。


 倉庫の前にはシアが立っている。周囲の構成員は彼によって殲滅されたらしく、背後から発砲音や人の声が聞こえることはない。

 何とかシアの存在を確認してから、ルカは無線を繋ぐ。


「問題ありません。能力は使わないでください」

『っ、でも』

「覚醒者の能力は体力を消費する。今レーナ様の体力が尽きれば死に直結する攻撃を避ける術がなくなります」

『……っ!』

「致命傷以外は目を瞑ってください」


 ルカはゆっくり体を起こすと口に溜まった血を吐き出し、口元を袖で雑に拭う。

 そして鼻で笑った。


「大丈夫です、死にませんから。シアさんも、俺も」

『……約束よ』

「はい」


 ルカは激突の衝撃で手放してしまった拳銃を足元から拾い上げ、それが使える事を確認する。


「ズールイ様」

「戻るのが遅い」

「申し訳ありません。……彼の企ての確認をお願いできますか」


 シアを警戒して睨みながら側近はズールイへ小声で指示を出す。

 この場で何かを企むとすれば、流浪者として理性を殆ど失ったシアでなく青年の方だと側近は考えていた。

 そしてズールイもまた考えは同じ。


「言われなくてもわかっている」


 ズールイはルカを見据える。

 そして鼻で笑った。


「あいつはもうろくに動けない。回避に徹する程度の力はあるようだが、自身の状態を鑑みて攻めに入ればすぐにやられる事を悟っている。あれならぼくと対峙したところで勝てやしないだろう」

「畏まりました。ありがとうございます。彼の動向にはくれぐれもご注意ください」

「いちいちうるさい奴だな。わかってるって言ってるだろ。それよりそっちを早く片付けろ」

「はい」


 側近はシアへ集中する事を選択し、ズールイはルカを牽制――そして、あわよくば彼を殺害する事を画策する。


(まだ余力はある。僕の力があれば遠くからのあいつの攻撃くらい簡単に避けられる)


 ズールイは拳銃をルカへ向けて勝ち誇った笑みを浮かべるのだった。

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