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Case7-2.『住宅街の奇襲』

「ごめんねぇ、あんま力になれなくて。ボク今、銃を握れないからさ」

「いいえ」


 隣に並ぶエミリオが困ったように笑う。

 彼の右腕は肩から指先に掛けて形を失い、服の袖はだらりと垂れ下がっている。左手も元から失われているエミリオが武器を手にするのは無理な話であった。


(せめて身軽であればもう少し動きようもあるが……護衛対象がいる中、動き回る訳にもいかない。一先ずは時間を稼いで応援の到着を――)


 刹那、バイクの排気音が遠くから鳴り響いた。

 離れた位置から聞こえたそれは急速にルカ達との距離を詰める。

 そして煙の中へと一台のバイクがルカやエミリオの脇をすり抜け、彼らの背後へ回り込む。

 タイヤがアスファルトを激しく削りながら急停止し、ほぼ直角に曲がったバイクは大袈裟な音を立てて動きを止める。


 何事かと目を剥くルカの目の前でバイクの運転手はヘルメットを取る。

 一つに纏められた長い黒髪に茶色の瞳。隠された顔を晒したイザベラはルカとエミリオへ笑い掛ける。


「お待たせ」

「イザベラさん……!?」

「相変わらず思い切りがいい運転だなぁ」

「うふふ」


 驚くルカをよそにエミリオがのんびりと呟き、イザベラは妖しく笑う。

 また、前方を走っていたシアもイザベラの存在に気付き足を止める。彼はバイクの傍まで近づくとレーナをイザベラの傍に下ろした。


「良い子ね」


 イザベラは一度バイクから降りると用意していた二つ目のヘルメットをレーナへ手渡すと素早くシートの後方に座らせる。

 そして再び機体に跨るとルカ達の顔を順に見やる。


「先に戻るわ。勿論、追手は全て撒いてね。……それとも現状は貴方達の手に余る程深刻なのかしら」

「おおっ、煽る煽る」

「ここはいつだって人手不足だもの。この程度で音を上げられては困るわ」

「……問題ありません」


 茶色の瞳が挑発的に細められる。

 反応や手腕を試すような問い掛け。ルカはそれに頷きを返した。

 それを見たイザベラは満足気に笑みを深める。


「安心したわ。それじゃ」

「イザベラ」

「大丈夫ですよ、レーナ様。シアさんがとてもお強いのは良く知っているでしょう? これくらいなら大丈夫です。……しっかり掴まっていてください」


 不安を滲ませるレーナを宥めるようにイザベラが話す。

 そして自分の腰に腕を回すよう促すと彼女はエンジンを吹かし、高速でバイクを走らせてルカ達の傍を去っていった。


「さぁて。そろそろ警察が来てしまうからね。それまでにとんずらしてしまおう」

「……日本って治安が良いんじゃなかったんですか」

「あっはは!」


 げんなりとしながら呟かれる言葉にエミリオが大きく笑う。

 だがいつまでも無駄話をしている余裕もない。エミリオはすぐに笑う声を抑えるとルカとシアへアイコンタクトを取る。


「三秒数えたら視界を晴らすからね。後は各々頑張るって方向で」

「了解」

「いくよ。三、二、一……」


 ルカは銃口を右側へ向けて構える。

 そしてエミリオが「ゼロ」と呟くと同時、辺りを満たしていた煙が一瞬にして薄まった。

 ルカ達の周りへ集中していた煙の範囲が大幅に拡大し、その結果煙の濃度は大幅に減少する。


 視界が晴れる。

 瞬間、ルカは真っ先に引き金を二度引いた。


 敵の大まかな配置を既に把握していたルカは確実に敵が立っていると判断した位置へ銃を構えていた。

 そして煙の先が目視で確認できたと同時、素早く敵の背丈を視認して銃口の角度を微調整し、発砲したのだ。


 突如晴れた視界に相手が対応するよりも先、不意を衝かれるようにして放たれた弾丸は敵の頭を二つ貫いた。


「お見事」

「茶々入れてないで働いてください」

「だぁって、ボク武器触れないんだもん」


 口笛を吹くエミリオの傍でルカが文句を言うも、それは軽く流されてしまった。


 既に騒ぎを聞いて逃げ出したらしく、一般人の姿はない。

 追手は後方から三人、左右の道からそれぞれ二人。その内右側の二人は既に撃破済み。


 ルカ達はそれぞれが敵の様子を窺う。

 煙が薄れたことにより、追手の様子がはっきりと見えるようになった。だがそれは襲撃者とて同じ事だ。


 ルカに後れを取りながらも襲撃者達が三人へと銃口を向ける。

 だがその引き金が引かれたその時、一人の顎が銃弾で撃ち抜かれた。


「こういう事は出来るけどね?」


 大きく仰け反ったまま仰向けに倒れ込む死体が一つ。

 銃が握られていた手を別の手首が掴んでいた。


 エミリオの能力は体を煙化させる事も出来ればその逆も出来る。

 彼は相手が引き金を引く瞬間、辺りを漂っていた煙を収束させて象った自身の手首で相手の腕を掴み、銃口の軌道を大きく逸らした。

 前方へ向けられていたはずの銃口は顎に向き、敵は自身の放った銃弾で命を落としたのだった。


 だが残された襲撃者達が放つ弾丸は真っ直ぐとルカ達三人へと向かった。

 しかしそれが獲物の体を貫こうと迫った次の瞬間、三人を囲うように植物の壁が飛び出す。

 太い蔦が絡まり合い、隙間を埋め尽くして作られた壁は頑丈だ。

 シアが作り出した障壁はいとも容易く銃弾を弾き返した。


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