Logs.□□□□
「君が再び目を覚ますときは、僕はもうこの世に存在しないのだろうね。」
白衣の女性が優しく少女の頭を撫で、呟いた。
「...博士?」
「でも寂しがらないで、ミューファ。」
ラボの照明は無規則に点滅し、不穏なサイレン音が何かを催促しているように叫ぶ。
「全て忘れてしまえば、もう何も寂しくはないのだから。」
ミューファと呼ばれた少女は、突然襲ってくる睡魔に抗おうと懸命に目をこするが、どうしても重くなる瞼を支えきれなかった。
「はか...せ...」
悲しげに呟きながら、少女は最後にも一度博士の顔を脳裏に焼き付こうとするが...
「個体名:ミューファ。
インテリジェンスモジュールシャットダウン。
メモリデスク初期化開始。
完了まで30...29...28...」
次の瞬間、感情の感じない声で、少女は全ての終わりをつける様にカウントダウンを始めた。
「許して...ミューファ...」
博士の声が掠れた瞬間、ラボの重厚なドアが鈍い音を立てて閉ざされ、明滅していた照明も漆黒に飲み込まれた。
「...2...1...0。 初期化完了。
マスターコードのオーダーを受信、スリープモードに切り替えます。
切り替え成功...」
その言葉が響き終えた刹那、世界は深い静寂に包まれた。