雨の歌
真夜中の雨音に誘われて、
悲しくて涙がにじむ。
不思議に感覚ゆれ動き、
嬉しくて涙がにじむ。
雨粒は親しい一人ひとり。
どこから来て、どこへゆく。
はじまりと終わりを知るのは、
空をおおう雲ばかり。
雨粒は寄りあって水溜り、
軽やかに、かわるがわるにロンド舞う。
傾いた手摺すべる雨、
依りあっては糸紡ぐ。
田畑に染みた雨粒は、
やがて実る稲の根に口づけ。
母が恋しき雨粒は海に抱かれ、
揺籠でどんぶらこ。
軒に並んだ雨粒たちは、
両手を繋いで励ましあうが
一粒一粒おちてゆく。
どうすることもできないと
とめどなく零れる涙に似て。
両手を離れた親しき人よ、
どこから来て、どこへゆく。
雨粒たちは知るよしもなし。
知っているの雲ばかり。
だけど今は真夜中すぎ、
闇夜に雲は見えなくて。
ざわめく雨音、それだけが
雨の歌をうたってる。