不可侵領域"精霊の森"
"精霊の森"最長老ミアーデ様に案内され、会合室と呼ばれる部屋へはいる。
「"光眩の魔女"シーファ・セレディアナと旧シラサギ皇族のキョウゴ・シラサギについてであったな」
「はい。知っていることを教えてください」
「あの二人がこの"精霊の森"に来たのは三十年前じゃ。あの当時、この森を焼き払おうとしたもの達がいた。それを撃退してくれたのがその二人じゃった。その恩を返すため儂はあの二人をこの森に招き入れた。しかし事件はあの日起こった」
「事件?」
「ああ、ある男がこの森に来た。魔女狩りに協力しろとな。最初は断っておった。しかしその男は当時幼かった儂の孫娘を人質に脅してきよった。そして儂はシーファから聞いていた場所を教えた。そっからは貴様の知っている通りじゃ」
「そんな、、、」
「本当にすまなかった。謝って許されることでないのは承知の上。儂を殺してくれて構わない。だがこの森に住むもの達は悪くない!」
ミアーデ様は深々と土下座した。
「ならば妾にも責任がある。妾の予知眼は事の顛末を見抜いていた。妾も殺してくれ」
「やめてください。俺は二人を殺しに来たんじゃありません。両親の事を知りたくて来たんです。それに憎しみがないと言えば嘘になりますけど母はきっとこう言います。済んだことを考えるよりもこれからできることを考えるべきだと。だからどうか頭をあげてください」
「その恩情感謝する。"精霊の森"を代表し必ずクロア殿に危機があった場合駆けつけることをここに約束する」
「妾も同じくだ」
「その時はよろしくお願いしますね」
「早速だが"精霊の森"各種族の代表を紹介する。まずこちらのエルフのー。」
「お初にお目にかかります、エルフ族族長兼財政を任されているベルクだ。よろしく頼む」
「私はエルフ族族長が娘、サリアです。不束者ですがよろしくお願いします」
「で、こっちの筋肉ダルマがー」
「がははは、我は獣人族族長兼"精霊の森"戦士長、ウォーレンだ。よろしく頼むぞ、坊主」
ガッチリした筋肉の大男で少し暑苦しい。
「"精霊の森"において一流の技術者ー」
「儂はドワーフ族族長兼"精霊の森"技術顧問、カラントだ」
「最後に"精霊の森"の長にして最も気高き精霊様ー」
「はじめまして、私は精霊長のレイティシアよ、よろしくね」
「私は旅人をしています、クロア・レディウスと申します。突然の来訪なのに手厚い歓迎感謝申し上げます」
「これで一通りの自己紹介は終わったな。では皆、座ってくれ。クロア、どうやってこの"精霊の森"に?」
「はい、それについてはこの魔眼の力魔の流れを視認できますのでそれを辿りここに来た次第です」
「ふむ、そういうことであったか。しかし、シラサギの巫女が他国の者に手を貸すとはなかなか見所があるのう」
「お褒めいただい恐悦至極」
「もうひとつよいか?」
「なんなりと」
「何故、王国に追われておる?」
反射的に剣に触れてしまう。
「そう警戒する必要は無い。取って食おうなどとは思っておらん。ただ儂らに出来ることがあれば協力させてほしい。貴様の母親であるシーファと父親のキョウゴには何度となく助けられた。それがせめてもの儂らにできる恩返しであり償いと思っておる」
「そこまで仰るのであれば分かりました」
ここに来たまでの経緯を全て話すとサリアさんとフェリシスさんが泣いていた。
「クロアよ、大変だったんじゃな。妾は何があってもお主の味方じゃあ」
「クロアさん、凄いです」
「そうであったか。安心せよ、この"精霊の森"にはいくら王国や帝国みたいな大国であっても攻めいられることは無い」
「ありがとうございます、ミアーデ様」
「坊主、義手をカラントに作って貰ったらどうだ?」
右腕がないのは確かに不便だ。
「さすがにそれは、、変えせるお金もありませんから」
「魔女の子だったな。ならばこの"精霊の森"に強力な結界を張ってくれ。それなら等価交換になるだろう?」
「わ、分かりました」
「ふ、腕が鳴るわい、腕だけにな」
カラントさんが親父ギャグを言い、一瞬でその場が凍りついた。
「クロアさん、申し訳ありません。お見苦しいものを見せてしまい」
「くくく、くはははははっ!面白いぞ!カラントよ!」
その空気を破るかのようにフェリシスさんだけが腹を抱えて笑っていた。
「すまぬな。バカ二人が見苦しいことをしていて。"精霊の森"を代表して謝罪する」
「いえ、賑やかでこういうの好きですよ自分は」
(寒いギャグは別だけど)
「ミアーデ、彼にあれを見せてもいいんじゃない?」
「あれですか。レイティシア様がよろしいのであれば」
「構わないわ。きっと彼ならあの子と契約出来るかもしれないわ」
「クロア、貴殿にやってもらいたいことがある」
「なんでしょう?」
「最上位精霊との契約じゃ」
「「「!?」」」
「正気ですかっ!ミアーデ様っ!。あの精霊は長年誰とも契約してないんですよっ!
?」
「しかしクロアは魔女の系譜、であれば可能かもしれん。反論があるなら儀式が終わったあとじゃ。よいな?」
「「「はっ!」」」
「騒がせてすまぬな。ゆくぞ、精霊のいる祠へ」
「あ、はい」
ミアーデ様について行きその祠へ来た。
祠に入った瞬間空気が変わった。
(温かい、、なんだろう。母親の温もり?)
「どうした?」
「いえ、なにかこう温かく感じるんですけど」
「やはりそうか。貴殿はどうやら精霊に好かれやすい体質のようじゃな」
「どういう意味ですか?」
「ここには微精霊が住み着いておってな。嫌われてる場合はものすごい寒気がするらしい。儂ら亜人族であってもそこまで好かれることはない」
「そうなんですか」
「亜人族と精霊は依存しあって生きておる。悪く言えば利用し合ってるだけじゃ。今は違うぞ?あくまでそれは何百年も昔の話で今は互いに協力し、友好も深めておる」
「てっきり仲が悪いのかと」
「それはない。儂らは互いに信頼してるからこそ共存の道を選んだ。雑談もここまで。あそこが精霊の眠る場所、儂はここまでここからは貴殿と精霊にしかできん」
ミアーデ様の指さした先には台座がありその上に剣が置かれていた。
ふと試験のときを思い出す。
あの場所も似たように剣が置かれていた。
(いや、考えすぎか)
台座の前までいき、剣に触れると体が光に包まれた。
目をゆっくり開けると翡翠色の髪をした少女が立っていた。
「君は?」
『私は精霊。名前ない。この匂いシーファ』
「母さんを知ってるの?」
『お母さん?クロアはシーファと親子?』
「え、うん。というかなんで俺の名前知ってるんだ?」
『クロアの記憶、みた』
「俺の記憶?」
『ん、クロアの記憶全部知ってる』
「そ、そうか。俺は君と契約したいんだ」
『いいよ。クロアなら』
「そ、即決?君のことなんて呼べば?」
『クロアに名前、つけて欲しい』
「俺に?」
『ん、シーファから貰った名前はシーファだけ。だからクロアにつけて欲しい』
「名前か、、、」
ふと考えていると母さんが好きだった花を思い出した。
『クロア?』
「エルミアなんてどう?」
『ん、それがいい!』
「よろしく、エルミア」
エルミアと名前を呼んだ瞬間、祠に意識が戻った。
「ーっ!?は、早いな。もっと時間がかかると思ったのだが」
「俺もそう思ってたんですけど」
置かれていた剣からはの気配を感じた。
「それが貴殿と契約した精霊の依代じゃ。持ってゆけ」
「ありがとうございます」
ミアーデ様が用意してくれた部屋へ戻った。
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