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成り上がり庶民の英雄伝説  作者: 九十九 薛
王国騒乱編
8/19

シラサギ皇国Ⅱ


数ヶ月にわたり、シュカ様とコウジさんの仕事を手伝いながら鍛錬を欠かさず行い両親の情報も探りつつ生活した。

しかし両親の情報は全くと言っていいほど無かった。

「今日もダメでしたね。クロア様」

「すみません、毎回付き合ってもらって」

「気にしないでください。私に出来るのはこれくらいしかないので」

「そんな滅相もない」

どたばたと廊下を走る音が聞こえた。

「クロア殿っ!」

「ムラサメ、騒がしいですよ」

「申し訳ありません、殿下。ですがいい情報を手に入れてきました!」

「「いい情報?」」

「はい、クロア殿の御両親についてです」

「ムラサメ、間違いの情報とかではないですよね?」

「はいっ!確かな筋から聞いてきました」

「話してください、ムラサメ」

「御意。その前にかなり重要な話ですので盗み聞きされないように結界を張ります」

とコウジさんが部屋全体に【無音】と呼ばれる結界を張った。

「聞かせてください」

「はい。クロア殿の母親の名前はシーファ・セレディアナというらしいです」

「セレディアナっ!?」

シュカ様がお茶の入っていたカップを落とし、唖然としていた。

「どうしたんですか?シュカ様」

「クロア様、セレディアナというのは魔女の一族の名です。即ち、クロア様のお母様は滅びたはずの魔女の生き残りということになります」

「魔女ってそんなに驚く程凄いんですか?」

「はい、桁外れな魔力量に加え膨大な知識量、何より高度な魔法を使えるんです。それ故に多くの人間に恐れられた末魔女の一族は皆殺しにされたんです」

「母が魔女の生き残り、、、」

ようやく納得出来た母親が帝級魔法を使えた理由が。

「手に入れた情報はそれだけではありません。一度クロア殿の御両親は不可侵領域である"精霊の森"に立ち寄っていたらしいです。もしかしたらそこに行けば情報が手に入るかもしれません」

「"精霊の森"?」

「はい、【認識阻害(ジャミング)】が施された亜人族や精霊の住む森で決して同じ場所には滞在しません。故に通常干渉は不可能です。しかし唯一シラサギ皇族だけは干渉が許されているのです。亜人族を一度迫害していた旧シラサギ皇族だと難しくたとえ私達が一緒に行ったとしても可能性は低いです。でも一つだけ方法があります」

「それは一体、、?」

「適合するかどうかはクロア様次第ですが」

「その方法というのは?」

「シラサギ皇族に伝わる秘伝の魔法で魔眼を与えるというものです」

「魔眼?」

「魔力を持った眼のことで人智を超えた力も宿しているんです。今のシラサギ皇族で私だけが唯一使える魔法です」

「分かりました、よろしくお願いします」

「はい。少し痛むと思いますが耐えてください。シラサギの巫女が願い奉る、彼の者に超常たる力を与えん」

ゆっくり目を開けると左眼だけ魔力の流れを映していた。

「うぷ、、酔いそうですね。これ」

(大っ嫌いなジェットコースターを思い出しそうな気持ち悪さだな)

「慣れないうちはそういうものです。これを使ってください」

渡されたのは何の変哲もない眼帯だ。

「これは?」

「魔眼の力を抑える魔法を付与させた眼帯です。魔眼は使いすぎると魔力切れを起こしますから」

「ありがとうございます」

眼帯をつける。

「それがあれば恐らく"精霊の森"にたどり着けると思います」

「この御恩はいずれ必ずお返し致します」

「ご武運をお祈り申し上げます」

【飛翔】の魔法を使い大きな魔力の流れを辿るように向かう。

(この尋常なまでの魔力、、複数体の反応じゃない。一人分の反応?"精霊の森であるなら複数分の反応なはず)

その魔力の流れの下まで近づくと少女を取り囲む男達がいた。

「これはガキへの見世物じゃねぇぞ」

突っかかってきた男の足元に【炎弾】を狙い撃ちした。

「次は脳天を撃ち抜きますよ?」

「くっ!くっそ!!」

男たちは走り去っていった。

「感謝するぞ、妾を助けてくれるとはのう」

「何を勘違いしてるんですか?俺が助けたのは男達の方です。そのただならぬ気配と魔力量、、ただの人間じゃないでしょう、何者ですか?」

「先に名乗るべきではないか?」

「これは失礼。私はクロア・レディウスと申します」

「妾は魔族領領主、"魔王"フェリシス・グラビアーターじゃ。しかしお主もかなりの魔力量じゃのう。妾に及ばぬとはいえかなりの魔力量じゃ」

「その魔力量で言われても皮肉にしか聞こえませんよ」

「かっかっか、まぁそれはそれとしてお主どこへ向かっておるのじゃ?」

「"精霊の森"ですが?」

「奇遇じゃな。妾も丁度、"精霊の森"に用があってな。してどうやって"精霊の森"に行くつもりじゃ?妾には方法があるが」

「とある人に貰った力で魔力の流れを視認できるようになったので」

「・・・、それは魔眼か!ということは皇国の巫女によるものだな」

「そこまで分かるんですか?」

「うむ、魔眼を与えるなど皇国の巫女くらいしかできぬ。適合しないかも知れないものを受け入れるとはお主本当に人間か?」

「人間ですよ。というか普通そこまで言います?」

「魔力量は人の域を超えとるし魔眼にも適合するわ。"魔王"と聞いて驚きもせん。妾のアイデンティティをなんだと思っておるんじゃっ!」

「なんとも思ってませんしそれアイデンティティだったんすね」

(はぁ、めんどくさい人に捕まったなぁ)

「っ!逃げるなっ!」

と複数体の魔力の流れを感じ、【身体強化付与】で直ぐにその場から離れた。

「一々あの人に構ってたら夜明けになる」しばらく走っていると何かの魔法にかかり、すぐさま【強制覚醒】を自身にかけた。

(今のは【認識阻害】か)

すると多方面から敵意を向けた視線を感じ、【光爆】を使い目を潰してから敵意を向けてきた人たちを気絶させる。

「ほう、"精霊の森"の精鋭を一人残らず気絶させるとはな」

追いついたのか後ろを振り返ると息を切らしたフェリシスさんが立っていた。

「誰かと思えば貴様か、フェリシス」

コツンコツンと杖をつきながら老人が歩いてきた。

「久しぶりじゃな、ミアーデ。しかし年老いたのう」

「たわけ。儂は貴様と違って不老ではない。当たり前じゃ」

「クロア・レディウスと申します。この度は突然来訪し申し訳ありませんでした」

「こちらこそすまぬことをしたな。儂はこの"精霊の森"最長老、ミアーデじゃ。皇国の使者からある程度聞いておる。中へはいるが良い」

ミアーデ様に案内され、"精霊の森"の居住地に入るとエルフ族や精霊、獣人族など亜人族と呼ばれる者達が住んでいた。

向けられる視線は憎しみに似たものだ。

恐らくそれは俺個人に対してのものではなく人間という種族に対してのものだろう。






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