二人の師匠
ある程度仕事を覚え始めて数ヶ月後、郊外にある廃坑へ呼び出され向かうとクリスティーナ先生とルミア先生が立っていた。
「今日は試験を受けてもらうわ」
「試験ですか?」
「うん、まぁ試験と言うよりどこまでの能力があるか見ない限り教えれないからね。だから変に緊張しなくていいわ。まずは、魔法使ってみてなんでもいいから」
「分かりました。では、数多の星に願う、有象無象を屠れ【魔星招来】」
宙に浮かび上がった魔法陣から星が現れ、地面に衝突した。
「嘘っ、、この威力は帝級魔法!?」
大きくできたクレーターを見てルミア先生が唖然としていた。
「帝級?」
「い、一応聞くけど誰に教わったの?この魔法」
「えっと母親からです」
「あなたの母親って何者?」
「母親は自分の事は決して話さなかったのでわからないですね」
「そう。でもこれだけの魔法を使えるということは素質だけで見るなら私と同じ、ううんそれ以上ね」
とルミア先生が魔法でえぐれた地面を直しながら答えた。
「そんなことも分かるんですね」
「教えないといけないことは色々ありそうだけどその前に、加減を覚えることから始めないとね?それと常識を」
「はい」
「しかし、凄いな。まさかあんな魔法を使えるとは感心感心」
「褒めてる場合じゃないのっ」
「本当に仲がいいんですね」
「そう?」
「はい、少し羨ましいです。自分にはそういう人がいないので」
ずっと奴隷生活だったため友達は当然いないから二人の関係が少し羨ましく感じた。
「気になってたんだけどクロアってなんかこう、子供っぽくない」
「子供っぽくない?」
「うん、なんて言えばいいかわかんないけどまだ十二歳くらいなのに十二歳っぽくないというか少し大人っぽい雰囲気」
「うむ、確かにルミアの言う通りだ。クロアは奴隷商も倒したしな」
「えっとそれは褒めてるんですか?」
「もちろん」
「さて雑談はこの辺にして次は私だな」
「クリスティーナ、加減はちゃんとしなさい」
「うむ、了解した」
クリスティーナ先生から渡された剣を鞘から抜き構える。
「お願いします、クリスティーナ先生」
「私を殺す気でかかってこい、クロア」
「は、はい!」
呼吸を整え、地面を蹴ってクリスティーナ先生の懐へ入る。
「ほう」
剣戟をクリスティーナ先生の首目がけ放つが剣は空を斬り、クリスティーナ先生は後ろに立っていた。
「まだですっ!」
回し蹴りでクリスティーナ先生へ攻撃を当てる。
「甘いな」
しかしクリスティーナ先生はそれをかわし、気づいたら自分は宙へ浮いていた。
「ーっ!?」
なんとか受身をとり、地面へ着地する。
「うむ、鍛えがえがあるな」
「もうクリスティーナってば。クロア、怪我とかない?」
「大丈夫です」
受身をとった時についた砂を払う。
「でもまさか、クリスティーナとあそこまでやり合えるなんて凄いわ」
「そうですか?自分はかなり圧倒されましたけど」
「いやいや、十分だ。部下はみな数秒で終わってしまう。一分以上続いたのはクロアくらいだ」
「お褒めいただき光栄です」
剣を鞘へ戻し、乱れた服装を正す。
「クロア様、すごくかっこよかったです」
リリシア殿下が走ってきた。
「リリシア殿下っ!?なぜここに?」
「侍女からここにクロア様がいると聞きましたので」
「だからって、、リリシア殿下、危険ですから来ちゃダメですよ」
「むぅ、クロア様のケチ」
「では王宮へ戻るか」
王宮へと戻るとリリシア殿下はアリシア殿下にこっぴどく叱られていた。
国王陛下に呼び出され執務室へ入ると陛下、リリシア殿下、アリシア殿下、クリスティーナ先生、ルミア先生が座っていた、
「話は聞いている。魔法の才はヴィレット魔法師団長を上回ると」
「はっ、そう言って頂けると光栄です。しかしまだ私は若輩者ゆえ剣と魔法どちらとも先生方にはおよびません」
「お父様、クロア様はすごくかっこよかったです。まるで英雄様です。私にとってクロア様は英雄様ですが」
「やはりクロアに護衛騎士の任を任せておいてよかった。さすがだ」
「はっ。それで陛下、話というのは?」
「すまぬがアルカトラズ伯爵領に出向いてもらいたい」
「アルカトラズ伯爵領、ですか」
「ああ、本来であれば財務のゼルビス卿が行くんだがな。急遽別の用事が入ってな。アルカトラズ伯爵にはかなり貢献してもらっているから遅らせる訳には行かない。頼めるか?クロアよ」
「はっ!喜んでお受け致します」
「一応サポートとしてアリシアを同行させる」
「分かりました」
「お父様、私も行きます!」
「リリシア、これは遊びでは無いのだ。すまんが耐えてくれ」
「嫌ですっ!」
「リリシア殿下、何かお土産を買ってきますから」
「うー」
「では参りましょうか、アリシア殿下」
外に止めてある馬車に乗る。
「クロア様、少しリリシア姉さんに甘すぎると思うのですが」
「そんなことないと思うんですが」
「姉さんにはもう少し厳しくてもバチは当たりませんよ。最近の姉さんはクロア様に甘えて仕事もしてません」
「では私が今度注意を」
「クロア様はすぐ許すので別の者に姉さんの注意をしてもらいます」
「リリシア殿下はいつも頑張ってますし」
「それが甘いのです。姉さんの仕事の五割以上私がしています」
「いや、そのですね」
「分かりましたか?クロア様」
鬼の形相でアリシア殿下に睨まれ諦める。
「はい」
「それと姉さんへのお土産は月一度までにお願いしますよ」
「あ、はい」
言われてみれば出費のほとんどがリリシア殿下への土産だ。
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