反王族派
クレティアとして王都に住み着き、数ヶ月が経つと王族による統制が落ち着き始めた。
王国と皇国、そして精霊の森による同盟はなんとか締結できたという話を数日前ミアーデ様の使いから聞いた。
それも含め話をしたいと言われ王宮内の応接室へ入る。
「お呼びたてして申し訳ありません。クロア様」
「いえ、同盟を結べたようで何よりです」
「これもクロア様のおかげです」
「それで話というのは?」
「姉さんとこん、、」
リリシア様へ渡していた指輪型の魔法具が何か反応したようだ。
「失礼します!」
侍女が部屋へ入るとアリシア様に何かを伝えた。
「嘘っ!?」
「どうしました?」
「緊急事態です。姉さんが何者かに攫われたようです!!」
「なっ!!クリスティーナ様は?」
「クリスティーナ様は深手の重傷を負ったようでして」
「アリシア様、お話はまた今度で。俺はリリシア様の行方を追います!」
部屋の窓から中庭へ降り、王宮から出る。
さっきちょうどリリシア様へ渡した魔法具が反応したためそんな遠くには行っていない。
「クロアっ!!」
「静かにしろっ!」
店の前に行くと兵士たちがルミア様たちを拘束していた。
「どういうつもりだ?」
「クレティア、いや、クロア・レディウス貴様にはここで死んでもらう」
「ふざけるなっ!ルミア様たちから手を離せ」
「断るっ!」
魔法で応戦するが倒しても倒しても増兵が現れキリがない。
「ルミア様、みんなをお願いします」
「クロア?」
転移魔法を使い、ルミア様たちを精霊の森に移動させた。
「貴様っ!!」
「これで心置き無く戦える」
数百を超えたところで増兵は無くなり、同時に魔力も無くなった。
「いやあ実に驚きましたな。さすがはルミア・ヴィレットの弟子だ」
気づいた時には遅く、瞳から光を失ったクリスティーナ様の奇襲を受け意識を失った。
目を開けるとそこは王宮地下にある独房だった。
手足には枷が付けられ壁と鎖で繋がれていた。
それからは拷問の日々が続き、途中からは何日経ったのかも分からなくなりストレスで髪は白くなり記憶も意識も曖昧となった。
髪が腰の所まで伸び切り髭もかなり伸びた。
地下であるため光は通らず外の空気も入ってこず気が滅入る。
そんなある日誰かが独房の鍵を開けた。
その誰かはすぐに居なくなり誰かは分からなかったがチャンスと思い、独房から出る。
王宮内には侍女が一人もいない。
そして、王族も見かけない。
アリシア様の部屋の近くまで来ると兵士がいた。
「これで俺達も勝ち組だな。ついに王族はアリシア・ティル・ラクルティアのみ。この第二王女も数日後には奴隷に売り払うんだろ?」
「らしいな」
「勿体ねぇな。俺たちにやら、、ぐぁ!」
怒りが湧き、兵士二人を殺してしまった。
しかし昔のような罪悪感は自然と湧かなかった。
「だ、れ?」
「アリシア様っ!!」
しゃがみこむ人影に近寄る。
「クロ、ア、、様?」
「こんな見苦しい姿で申し訳ありません。数ヶ月地下の独房にいたもので」
「私、、私!!」
アリシア様は突然泣き出すと数ヶ月前に起きたことを全て話し始めた。
要約すると俺が独房に入れられた後、反王族派の貴族が一斉に王宮内にいた王族を拘束しアリシア様以外の王族に濡れ衣をきせ処刑したということだ。
「くっ、、俺が早く気づいていれば」
「クロア様は悪くありません」
「とりあえず、王宮から出ましょう。ここにいてはやられるのも時間の問題です」
アリシア様の話が事実なら既にこの王国すらも敵地ということだ。
「は、はい」
アリシア様と共に転移魔法で精霊の森へ移動するとそこは既に廃墟と化していた。
「なっ!なんで!」
最悪の場合を考えてしまいそうになったがすぐに考えるのをやめ、公国に転移した。
しかし公国も荒れ果て国といえるものでは無かった。
「クロア様?」
「はぁはぁ、嘘だっ嘘だっ嘘だっ嘘だぁぁぁぁ!!」
考えないようにしていた最悪の可能性が頭に過り、吐いてしまう。
「クロア様、、」
「あきらめ、て、、たまる、か」
力を振り絞り最後の望みである皇国に転移した。
神に笑われているかのように同じ光景であった。
まるで何かが壊れたかのようで膝から崩れ落ち、絶望した。
「う、そ、、そんな、、、」
アリシア様も同じように絶望していた。
「あ、あ、、ああああああああああああああああっ!!」
ひたすらに自分の無力さを呪い、この運命を呪った。
クロア様は叫び疲れたあと、まるで抜け殻のように何も喋らなくなった。
私たちはただひたすらに何も無い大地を歩き続けた。
壊れてしまったクロア様の手を握り、ひたすらに何日も何日も歩き続けた。
「私には何も出来ないの?クロア様はいつだって私たちを助けてくれたのに、、」
歩き続けた結果足が限界となり倒れてしまう。
日陰にクロア様を寝かせ、魔法で襲ってくる魔物を倒す。
それも長くは続かず、二日経つと魔力は底を尽きてしまった。
「おねが、い、、だれ、か、、たすけ、て、、、」
「しっかりしてください!!」
声をかけられ目を開けるとルミア様が立っていた。
「ルミ、、ア、様?」
「良かった」
「クロア様は?」
「大丈夫です。彼も無事です」
「ここは?」
「精霊の森です」
周りを見渡すと見知らぬ部屋でルミア様と隣にはクロア様が寝ていた。
「でも精霊の森は廃墟に、、」
「それは儂が説明しよう」
「あなたは確か、、精霊の森長老のミアーデ様?」
「うむ、久方ぶりじゃな。王国の姫君よ。
王国でクーデターが起きたあと帝国の兵によって精霊の森、シラサギ皇国、そして公国は攻めいられ命からがら逃げ延びたわけじゃ。で、儂がこの森の中に精霊の森を作った」
「そうだったのですね。ほかの人たちは?」
「無事じゃ。幸い、他国での死者は無し」
「クロア、早くめを覚まして」
「申し訳ありません。王族の不甲斐なさ故にクロア様を危険な目に遭わせてしまいました」
「謝らないで謝るということはクロアの行動を否定するのと同じこと」
少女は静かに怒る。
「はい」
「分かればいい。ユズアがご飯作ってくれたから食べて」
避難していた皇国の皇女と精霊の森長老のミアーデ様と今後についての話し合いを行った。
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