進むべき道
これからどうするかについてを話し合うために、糸崎姉妹とルミア様、エミリア、そしてオルシアを呼んだ。
「いきなり呼び出してすみません」
「いいけどこの人は?」
「お初にお目にかかれてうれしく思います。聖神教会教皇兼聖女、オルシア・ミリエステラと申します」
「私はクロアの魔法の師匠でルミア・ヴィレットです」
「私は糸崎柚有です。こっちは妹のかりん。クロアさんに助けてもらいここに住まわせて頂いてます」
「今後についてなんですが、まず、オルシアさんはどうしますか?」
「私はクロアさんがいるところであればどこでも行きます」
「ーっ!?クロアっ!私だけじゃなくて他にもいるの!?」
「ご、誤解です!柚有さんは居候ですしオルシアさんは聖女ですからっ。決してやましい関係じゃないです!」
「あんなことしたじゃないですか」
「クロア?」
殺気を纏ったルミア様に睨まれ怯む。
「あんなこともそんなこともしてませんよっ!オルシアさん、お願いですから少し黙っててください」
「クロアはどうするの?」
「そうですね、しばらく帝国も動かないでしょうしとりあえずは、糸崎姉妹に自分自身で守れるように魔法を教えてあとは店を王都に作るつもりです」
「クロアにしてはすごく現実的」
「褒めてます?それ」
「そ・れ・よ・り、クロア私の婚約台無しにしたわよね?」
「え、あ、はい」
「責任取って貰うからね?」
「・・・、はい」
「証人はこの場にいる人全員だから」
「わ、分かりました」
「分かればよろしい」
一応まだ王国では指名手配となっているため、婚約はできない。
それに自分自身の方でまだ解決しなければならないこともあるためそれが終わったらということでルミア様を説得した。
しばらくはクレティアとして暮らすこととなった。
ちなみに魔法やオルシアさんの加護を付けたネックレス、指輪などアクセサリー型のお守りを取り扱う店を開いた。
「クレティアさん」
「なんですか?柚有さん」
「その、、店番私で良かったんですか?」
「はい、今や柚有さんは店の看板娘ですからね」
店は最初そこまで客が来ることは無かったが柚有さんの美貌が瞬く間に話題となり、客の数が増加し今や看板娘である。
「そう言われると、は、恥ずかしいです」
「柚有お姉ちゃん、クロアお兄ちゃん、出来たよ!」
にぱぁと笑顔でかりんちゃんが走ってきた。
「凄い」
かりんちゃんが持ってきたのはネックレスだが効力を見るとかなり凄いものだった。
【ネックレス】
《魔力探知》《剛力》《治癒魔法効果20%+》《女神の加護》《回避》
これだけ見れば国宝級である。
《女神の加護》が少し気になる。
「ここがクロア様のお店なのですね」
リリシア様がクリスティーナ様と一緒に現れた。
「リリシア様、クロアではなくクレティアです」
とすぐにクリスティーナ様が指摘した。
「そ、そうでしたね」
「リリシア様、クリスティーナ様御無沙汰しております」
「クロ、、クレティア様、ごきげんよう」
「リリシア様はどうしてこちらへ?」
「お恥ずかしい話なのですがアリシアに仕事の邪魔になるからクリスティーナと外に出ててと言われまして」
「アリシア様の気持ちは分からなくもないですね」
「ルミア様まで!?」
「店の外だと他の人の邪魔になりますから上がってください。リリシア様、クリスティーナ様」
「私はすこしルミアと話をしたいのだがいいか?」
「あ、はい」
ルミア様とクリスティーナ様が店から出ていった。
「クロア様、私の力が足りないばかりに過酷な道を選ばせてしまいました。申し訳ありませんでした」
今にも泣きそうな顔でリリシア様が頭を下げた。
「顔をおあげ下さい、リリシア様。確かに進んだ道は過酷なものでした。でもそれは俺が選んだんです。それにリリシア様やアリシア様、ルミア様が無事で良かったです。だからどうかそんな悲しい顔をなさらないでください」
「はい」
「お姉ちゃん、お姉ちゃんあそぼ」
「かりん、だめよ。その方は偉い人なんだから」
「構いませんよ。ここに来たのは王女としてではなく、リリシアとして来たので」
「リリシア様、無闇に外へ出ないようにお願いしますよ」
「はいっ」
リリシア様の笑顔を見るのは何年ぶりだろうかとしばらく二人の遊ぶ姿を見つめていた。
「クロアさんって何者なんですか?」
「別に何物でもないですよ。ただのクレティアです」
「じゃあなんで王女様と知り合いなんですか?すごく気になります」
「強いて言うならたまたま王女様を助けたんです」
「ほんとですか?」
「冗談です」
「クロアさんってたまに意地悪ですよね」
「バレました?」
何気ない会話をしていると見知った顔の青年が店内に入ってきた。
「すみませんが柚有さん、席を外して貰ってもいいですか?」
「分かりました」
「久しぶりだな、クロア・レディウス」
「アルク・リンベ、、すみませんが、どなたでしょうか?私はクレティアです」
「流石にその誤魔化し方は厳しいと思うが」
「なんで知ってるんですか」
「アリシア殿下から聞いた」
「あの人なに人の個人情報渡してんだ、、はぁ、アルク・リンベル、何の用ですか」
「昔、お前は私を信じると言った。だが私は裏切った。その結果兄は暴挙に走り、王国は壊滅の危機に陥った」
「何が言いたいんですか?」
「申し訳なかった。リンベル家は貴族という権力に溺れ、クロア・レディウスに濡れ衣を着せてしまった」
アルク・リンベルは悔しそうな表情をしていた。
それは俺に対するものではなく自身の不甲斐なさ故の悔しさなのだろう。
「そんなことで謝られても困ります。それに本来あなたが謝るべきは俺ではなく、王族とルミア様ではないんですか?。ルミア様はその結果自分の人生を捨てる選択をし、王族の権威は今や地に落ちた」
「・・・」
「あんたが本当に謝るべきは俺じゃない。それと本当に償いたいというのならこれからは権力のためではなく人のため国のために生きろ。それがせめてもの償いだ」
「ああ、分かった」
アルク・リンベルは走り去っていった。
「クロアさん、、」
「聞いてましたね?」
「ごめんなさい。気になって」
「彼は通っていた学院の同期です。彼の兄が王国の転覆を測った。そして王国内でも地位があったリンベル侯爵の信頼が地に落ちました。本来であれば王国の転覆を起こそうとした首謀者の一族として処刑されるべきでしょうね」
「そうなんですね」
「まぁ、その決定権を持つどこかの王女様は慈悲深いので地位と権力の剥奪で終わりましたけど」
「クロアさんもすごく優しいと思います。私たちを助けてくれましたし」
「大袈裟です」
「その通りですね。私もクロアさんに助けられました!」
オルシアさんが子供たちを連れて戻ってきた。
「誘拐はダメですよ、オルシアさん」
「誘拐じゃないですっ。クロアさんの偉大さを広めてたら子供たちに好かれちゃいました」
「何やってんですか。やめてください。広めなくていいですから」
「あれれ〜?照れてるんですか?」
「調子に乗らないでください」
「い、いひゃいれふ」
オルシアさんの頬を引っ張る。
この何気ない普通の日常も案外楽しくて、幸せな時間だ。
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