王国の内通者
会場に向かうと既に始まっていた。
奥にはリンベル卿と師匠がいる。
その間を目がけて、ナイフを飛ばした。
「ーっ!!何者だっ!!」
周りにいた貴族や騎士達が魔法を放つが自分に届く前に消滅する。
「相手との実力差も測れないとは、、私が何者かという質問でしたね。"光眩の魔女"の血を継ぎし者、クレティアです。以後お見知り置きを」
師匠の後ろに回り気絶させ、身体を抱き寄せその場から立ち去る。
「何をしている!貴様ら、賊を追えっ!!」
王宮から街へ出ると待ち伏せていたようにクリスティーナ先生が立っていた。
「死を顧みず王宮へ忍び込んだその愚かさを称え、王族直属騎士団騎士団長の私が貴様を処刑してやる」
「死ぬのは嫌なのでお断りします」
煙幕を張り、その場から立ち去ろうとしたが剣戟で防がれてしまった。
「この目くらまし程度で逃がすと思ったか?舐めるな!」
「さすが最強の剣士。エミリアっ!」
「ん、なに?」
「一か八かで呼んだらほんとに来た。エミリア、悪いがこの人を屋敷に頼む」
「分かった」
エミリアの背中を見送り、クリスティーナ先生へ向き直る。
「そろそろその魔法を解いたらどうだ?不肖の弟子」
「あちゃあ、バレてましたか」
指輪を外し姿を戻す。
「見た目は変えれても気配までは変えれないようだな」
「気配でバレるなんて。見逃してくれませんか?剣の師匠であるクリスティーナ先生を殺すのはさすがに」
「それは私への侮辱と受け取ってもいいのか?」
「非礼を詫びます、申し訳ありません。偉大なる我が師、クリスティーナ先生貴方へ決闘を申し込みます」
「我が剣を以って弟子の過ち食い止めてみせよう」
【付与魔法】のひとつ【身体強化付与】を全身にかけ、クリスティーナ様の懐へ入り首めがけ剣戟を放つ。
「皇国流剣術凰華烈風斬!!」
「やはりここを狙ってきたか。変わらないな!」
放った剣戟よりも早く蹴り飛ばされ、クリスティーナ先生の頬を掠めた。
「そう簡単には行きませんか、、」
「弟子に負けるほど私は弱くない」
「知っています。だから、、、ーっ!?」
剣を構え直した瞬間、何かが直撃し砂煙が舞った。
「皇帝陛下が右腕、"三牙獣"ムーグここに爆誕!!」
「皇帝?、、帝国のやつがなぜここにいる」
「貴方を殺すためですよ。皇帝陛下の敵」
「っ!」
避けた瞬間、頬を矢が掠めた。
「師弟の決闘を邪魔する愚か者共め」
「すみませんがクリスティーナ先生、ここら一帯にいる国民を全員王宮内に避難させてください。俺はこれから敵を全員転移させます」
「うむ、分かった。今回の一件が落ち着くまでは死ぬな。お前との決闘は終わってないのだからな」
そう言ってクリスティーナ先生は去っていった。
「さて、と、"三牙獣"といったか?帝国が何をしに来た」
「言ったはずですよ、魔女の子よ」
「それだけじゃないはずだ。それだけなら王国に立ち入る必要は無い。王国にいる内通者の処分か?」
「ほう、やはり気づいていましたか」
ムーグが連れてきたのはリンベル卿だ。
「リンベル卿、やっぱり裏切っていたんですね」
「黙れっ!!クロア・レディウス!よくもよくもっ!ルミアは私の物だ!」
「物、だと?下衆がっ」
【炎弾】でリンベル卿の足を貫く。
「ぐぁっ!!」
「お前は後で殺す。ルミア先生を物扱いし利用したお前を決して俺は許さない。その前にあんたらだ」
「これは怖い。そんな目で睨まれると怖気付いてしまいますよ」
王宮にある鐘が鳴り響いた。
合図と判断し、転移魔法でその場にいる全員を王国から数キロ離れた更地へ移動する。
「ふぅ、かなり魔力使ったか」
「我々を転移させるとはさすが、魔女の子」
「ここなら邪魔は入らない」
「貴方程度、陛下の足下にも及ばない。ここで死になさい。【獄炎の矢雨】!!」
「数多の星々は悪を滅し、揺蕩う光と闇は根源の渦へと至る。破滅を呼び、破壊の限りを尽くせ、【暴虐ノ凶星】!!」
「星が落ちてくるなんてっ!こんなの有り得ない!」
「半分正解。確かにこの魔法は星を落とす。だが、これは俺の作りだした星だ。帝国の犬共、その死をもって贖罪と成せ」
自分の放った魔法によって周り一体がクレーターだらけになり、砂埃がかなり舞っていた。
「これは驚いたな。いやぁ、様子を見に来ていて良かったぜ」
見覚えのある中年の男が狙撃してきた女を抱え、砂煙から現れた。
「っ!?あんたは、母さんを殺したっ!」
「久しぶりだな、小僧」
「ここで殺してやる!!」
剣を掴み、男へ剣戟を放つがあっさりと躱され反撃をくらってしまった。
「この程度では俺には勝てねぇな」
「かはっ!」
斬られて血が溢れ出す腹部を男は蹴る。
「もっと強くなって出向け。じゃあな、小僧」
「ま、待てっ!!」
立ち上がろうとたがその前に意識を失い、その場に倒れ込んでしまう。
目を覚ましてすぐ痛む体を無理やり起こすと床に膝をつく。
「クロア!」
「ルミ、ア、、様」
ルミア様に支えられ、ベッドに戻る。
「クロア、無理に起き上がらないで折角塞いだ傷口がまた開くわ」
「こ、こは?」
「貴方の屋敷です、クロア様」
声のした方を見ると目の周りを腫らしたリリシア殿下とため息をつくアリシア殿下が立っていた。
「心配したんですよっ!!クロア様ぁっ!」
「申し訳ありません、リリシア殿下」
「それで、クロア様事情話してもらえるのですよね?色々と」
「はい、これから話すことは内密にお願いします」
「分かりました」
試験以降から今に至る全てを話した。
「そう、でしたか。今回の一件も含め全ては我々王族に責任があります。大変申し訳ありませんでした。クロア様」
リリシア殿下とアリシア殿下が膝をつき頭を下げた。
「お二人共どうか頭をあげてください。気にしていないと言えば嘘にはなりますが、リリシア殿下とアリシア殿下が謝罪する必要はありません。それにこれは俺が勝手にしたことです、だからこの怪我も自業自得です」
「クロア、でもこれからどうするの?」
「クロア様が望むのであれば王国へ戻すことも可能ですが?」
「いえ、まだやり残したことも沢山ありますので。それに帝国の企みを止める必要がありますし」
そう、帝国が何を企んでいるのかそれはまだ分かっていない。
それどころか帝国に母を殺したやつがいたことも分かった。
「そうですか」
「そういえば、俺は帝国の"三牙獣"に襲撃されました。けどあの場にいたのは一人です。あと二人は見かけてないですか?」
「それなら私が倒した」
胸を張ってエミリアが現れた。
「えっ?」
「エミリアさんが襲撃してきた二人を倒したわ」
「ならまた襲撃ということはなさそうですね」
安全のため結界を重ねて張る。
改めて記憶を思い出すが母を殺した男は圧倒的な強さで歯が立たなかった。
あそこまで圧倒されたのは初めてだった。
「クロアあの傷誰にやられたの?」
「俺の母を殺した男です。突然現れて攻撃をしたんですが全くと言っていいほど歯が立ちませんでした。正直勝てる気がしないです」
「クロアでも勝てないなんて、、、悔しいけど師匠を倒しただけはあるって事ね」
「はい、あの強さは異次元です。二度と戦いたくないと思えるほどです」
「クロア様、私と姉さんはまだ王国の方で処理が色々残ってますから戻りますがくれぐれも面倒事は起こさないでくださいね」
アリシア殿下とリリシア殿下を転移魔法で王国へ送り椅子に腰かけ少し目を閉じ眠る。
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