断章
イスラティオ帝国宮殿玉座の間にてー。
玉座には天上天下唯我独尊の異名を持つ皇帝、クヴェル・ボルフ・イスラティオ十三世が座りその隣に唯一秘書として認められた女性、ニアが立っている。
入口側の両サイドには帝国各地を治める貴族と臣下が立っていた。
「皇帝陛下、申し訳ありませんでした。至らぬさ故にクロア・レディウスを取り逃してしまいました」
「ガット卿、貴方に発言権はありません」
「いや、構わぬ。私は今日かなり機嫌がいい。話せ、ローカリア・ガット」
「はっ!恐れながら申し上げます。あのクロア・レディウスという少年は魔法の才がかなりあり、殺し損ねました。王国の姫君も人質に取る事ができませんでした」
「そうか、、よくやった」
「は、ありがたきお言葉!」
「しかし私は、失敗が嫌いだ。視界から失せろ」
「で、ですがっ!」
「くどいぞ」
ローカリアは苦虫を噛んだような顔で入口の扉に触れたが物言わぬ肉塊となった。
「陛下の御前だと言うのに退出など言語道断」
その肉塊は一瞬で灰となって周りの臣下たちは次は自分たちではないのかと恐怖していた。
「皇帝さんよ、そのクロア・レディウスの始末俺に任せてはくれねぇか?」
中年くらいの着物を着た男が酒を飲みながら玉座の間へと入ってきた。
「アラト・シラサギ、 口の利き方には気をつけなさい」
「良い良い、アラトは私の友達だ。で、クロア・レディウスの始末だったか?」
「ああ、それを俺に一任してくれりゃあぶっ殺してきてやるよ」
「悪くない、、が、すまんな。既に別の奴らに頼んだ」
「それは残念。そいつらが失敗したら俺に行かせてくれよ」
「いいだろう。その時はアラトに任せる」
ご機嫌になったアラトは玉座の間から出ていった。
「陛下、正気ですか?あの者は危険因子と言っても過言ではありません」
「面白くなればそれでいい」
「陛下が仰るのであれば、、此度の会議はここまでとする。解散」
そうニアが言うと臣下たちは足早に立ち去っていった。
「ニアよ、あれは?」
「はい、順調に進んでおります。早ければ次の月には完成致します」
「さすがだ。完成したら言ってくれ」
皇帝とニアも同じように玉座の間から立ち去る。
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