"竜魔王"イヴティア
翌朝、日課である剣の鍛錬をしているとウォーレンさんに話しかけられた。
「朝一から鍛錬とは感心感心」
「おはようございます、ウォーレンさん」
「最上位精霊と契約したのだろう?ミアーデ様から聞いたぞ」
「ええ、まぁ。ウォーレンさんは精霊と契約してるんですか?」
「いいや。俺はしていない。どうも祠に行くと寒気がしてな」
(ミアーデ様が言ってた話ってウォーレンさんだったのか)
「ウォーレンは筋肉ダルマじゃからな。がっはっはっは」
「いい度胸だな、小娘」
と二人が争いを始めたため巻き込まれないためにその場から立ち去り、ミアーデ様から許可を貰って水浴びをする。
「く、クロアさんっ!?」
布一枚着ていないサリアさんが赤面して立っていた。
「さ、サリアさん!?。す、すみません」
「あ、いえ、私は後で入りますのでー!」
サリアさんが走り去っていった。
『クロア、鼻の下伸ばしてる。変態』
「の、伸ばしてないっ。そ、それに今のは不可抗力だ」
汗を洗い流しすぐに服を着てから会合室へ戻った。
「クロア、貴殿に言ってなかったことがあった。両親のことで」
「なんでしょうか?」
「実はな、あの二人には貴殿とは別に子供がいたんじゃ。名は忘れたが戦争孤児だったと思う。西のシルフィア神聖国にある孤児院で里親になったと言っていたな」
「じゃあシルフィア神聖国に行ってみます」
「もう出るのか?」
「はい、時間は有限ですから。それにこれ以上いてはご迷惑になりますから」
「少し寂しいがまぁ無理しない程度にな。フェリシスを連れて行っても良いぞ」
「あ、いや結構です。遠慮しておきます」
「く、クロアさん!これを」
息を切らしながらサリアさんが走ってきた。
「これは?」
渡されたのは綺麗な鉱石が埋め込まれた指輪だった。
「エルフ族に伝わる御守りです。どうかご無事で」
「ありがとうございます。では今までありがとうございました」
「達者でな、クロア」
"精霊の森"を抜け、シルフィア神聖国へ急ぐ。
しばらく歩いていると大きな地鳴りが起き、フェリシスさんに及ばないとはいえかなり大きな魔力を感じた。
『クロア、嫌な予感がする』
「同感だ。それに何かがくる」
その感じ取った大きな魔力が近づいてくる。
しかし、目視では確認できない。
『クロア、上』
「上?」
上を見るが何も見えない。
『来る』
砂ぼこりを立て何かが降りてきた。
「な、なんだ?」
『古代種の竜』
「竜?」
『ん、竜の中でも最強とされる古代種』
「なんでそんなのがここに?」
『分からない。古代種は誇り高い竜、本来は高山にいる』
砂埃が止みそこにはの言う通り大きな竜がいた。
魔眼でその竜を見ると別の魔力が流れていた。
(この魔力の流れ、、、)
「この竜誰かに操られているんじゃないか?」
「ウォォォォォォォォォォッッ!!」
耳を塞ぎたくなるくらいの咆哮をあげた。
『我、、ほこ、りたかき、、いちぞ、く』
微かに声が聞こえる。
『クロア、これは多分古代種の竜』
「やっぱり誰かに操られているのか。でもどうやって、、、あれはっ!」
よく見てみると竜の背中に禍々しい魔力を纏った剣が突き刺さっていた。
「エルミア、恐らくあの突き刺さっている剣が原因だ」
『分かった。クロア、お願い』
「ああ、来い誇り高き竜!」
【炎弾】を撃ち、狙いを自分に絞らせる。
「グォォォォォォォ!」
竜が放つ爪による攻撃をかわし、瞬時に【炎弾】を撃つ。
「どうした!そんなものか!竜は!」
「グォォォォォォォ!!」
再び爪による攻撃が襲いかかり、刀身で受け止める。
『ぬ、抜けたっ!!』
「ウォォォォォォォォォォ!!」
竜は剣が抜けたのと同時に暴れ回り、エルミアは振り落とされた。
「エルミア!」
『多分これで大丈夫』
しばらくして竜は力尽き倒れた。
「終わったな」
その瞬間竜が光に包まれ、幼い少女の姿になっていた。
「感謝する、人間。よくぞ我を解放してくれた」
「それは別にいいんだけど、、竜だったんじゃ?」
『クロア、彼女は誇り高き竜人』
「ほう、最上位精霊か」
「竜人?」
『ん、古代種の竜の中でもごく僅かの選ばれた者しかなれない。それが竜人』
「その通り、我は誇り高き竜の一族が一人"竜魔王"イヴティアだ」
「俺は旅人のクロア・レディウス。こっちは契約精霊のエルミア。なんで操られていたんだ?」
「うむ、我にも分からぬのだ。気がついたら意識を乗っ取られていた」
『彼女は嘘ついてない。その剣は刺したものの意識を刈り取り本能の赴くままに破壊の限りを尽くすという魔剣』
エルミアは地面に突き刺した剣を指さしながら言った。
「そうか。しかし一体誰が」
「意識を失う前に我を訪ねに来た男二人がいた。名は確か、、、ローカリア・ガットと名乗っておった。もう一人は、、、金髪で王国の貴族と言っておったわ」
「ーッ!?ローカリア・ガット!?、、しかも王国の貴族と、、金髪といえばルーガ・リンベル、、、そんなまさか」
(ということはローカリア・ガットを王国に招いたのは、、ルーガ・リンベル)
『クロア?』
「ご、ごめん、なんでもない」
「我、"竜魔王"イヴティアは汝、クロア・レディウスに忠誠を誓う」
イヴティアさんは膝をついた。
「な、何言ってんだ」
「我を助けてくれた恩は一生を以ってしても返しきれぬ。故に我は竜人の誇りにかけて汝に忠誠を誓う」
『クロア、受けないことは竜人への侮辱になる』
「ぅぐ、、わかりました。このクロア・レディウス、誇り高き"竜魔王"イヴティアの忠誠を受け入れる」
シルフィア神聖国を目指し歩くのを再開しようとしたらベルヘルムさんに袖を掴まれた。
『我が主よ、我が竜の姿になって行った方が速いぞ』
「いいのか?」
『主ならば構わぬ』
イヴティアさんは竜の姿に戻り、その背中へ乗ってシルフィア神聖国へ向かった。