冒険の始まり
驚きのスキル結果から三日後。
シノラは今出発の準備をしていた。
あれからスキル共有で得たスキルを使って少しずつ自分のスキルにしていた。
しかし、未だに全属性魔法のスキルは完全に覚えていない。
その理由は全属性に含まれている光魔法と闇魔法が原因だった。
光魔法と闇魔法は全属性の中でも極めて稀少な属性であり、手にする事自体が困難なようだ。
又、手にするにも努力して得る事が出来ず、調べてみた所、ある場所に行くと得られるとのことだった。
ただそこは何処なのかはこの万能図書館でも見ることはできないようだ。
だが、その二つの属性以外は既に習得し、五大元素魔法はより強い魔法を使えるようになった。
シノラにはかなりいい装備を渡した。
カオスウルフの革で作ったかなり強い鎧、ナイトスパイダーの糸で編んだ治癒も付与したマント、ミスリルで作った魔法を付与できる魔剣『グラム』、さらに魔力の消費を抑えつつ自身で放つ魔法よりも少し強化した魔法を放つ事が出来る指輪、『導師の指輪』を渡した。
本当なら賢者の杖を渡そうかなと思ったが、あれは威力だけでなく装飾としても最高級みたいだから、それをまだ冒険者になっていないシノラに渡せば必ず悪党に狙われる危険性がある。
その為、あの杖はきちんと冒険者としての実力がついてきたら渡そうと思っている。
他にも移動速度アップの付与したブーツ、有限ではあるが多くのアイテムを収容する事が出来るアイテムポーチ、隙間時間に教えた料理をする為の料理グッズ一式や多少の食材をシノラに与えた。
この世界は放牧や養殖をしているとは書いてあったが、食える魔物の数の方が圧倒的に多い為、実力さえあれば食材には困らないみたいだ。
準備も終わり、後はこの空洞だけだな。
このまま放置しててもいいが、ここ結構気に入ってるし、それにあの湧水に使っている装置を盗まれたらここは全滅してしまうだろうと思い、人が入ってこられないように結界を張っておいた。
全てを終えた俺たちは外へと出た。
しかし、まさかこんなボロ屋の地下に空洞があったとは思ってもいなかったな。
シノラ「クリス」
クリス「どうしたんだシノラ?」
シノラ「この家を隠すことできるかな?」
クリス「ん?あぁできるけど」
そう言い、俺は認識妨害魔法をかけ、まるでボロ屋がなくなった様に見せた。
クリス「ここが名残惜しいのか?」
シノラ「うん、少しの間だったけどこの家にはお世話になったから、また帰ってきたいなって思ったの」
クリス「そうか…」
まぁ、人は別れが辛い生き物であるから、少しの間でも愛着が湧くこともある。
このボロ屋もシノラにとってはそうなんだろうな。
一応朽ち果てない様、強度強化と劣化耐性の付与もつけておこうっと。
クリス「さて、そろそろ行くか」
シノラ「うん」
そして俺たちはその家と一時期の別れを告げ、冒険の旅を始めたのだった。