気付いたら龍になってた
俺の名は大橋直木。
東京の新宿神楽河岸に住んでいる三十路だ。
俺が勤めている会社は、無理な仕事を押し付けられるはもちろん、残業はほぼ当たり前、もちろん残業しているのにも関わらず給料もあまり少ない。
いわゆるブラック企業だ。
おまけに俺は頭が少し良かった為、仕事の量が尋常ではなかった。
こんな生活を続けていては、体が持たないと思い、もちろん俺は転勤したいと考えているが、その度に上司が
「私には君が我が社の金を横領している証拠を握っているんだよぉ?もし君が我が社を辞めるのであればこの証拠を突き出して、横領を巡って裁判を起こしてもいいんだよぉ?」
そう言い、証拠が入っているというSDカードをチラつかせて挑発してくる。
それを見て、あまりの悔しさに歯を食いしばり、手を強く握る。
もちろん俺は会社の金を横領していない。
多分この上司が横領しているのだろう。
だが上司は、自分が横領した罪を俺になすりつけて留まらせようということをしている。
やめなければこのまま社員として働き、金が自分に入ってくる...辞めれば裁判を起こして俺に賠償金を請求させ、さらに前科者として社会的抹殺するというどっち転んでも自分は痛くないというものだった。
こうなれば興信所か弁護士を雇わせてやりたいと思うが、給料も少なくいつも金欠の為、雇うほどの貯金もなかった。
それに辞めたとしても嘘の証拠で転勤希望した会社に入れられないかもしれない。
俺はやむ得ず社に留まることになった。
他の社員も同じ考えを持っているが、それごとに上司が犯した罪を他人に擦り付ける事で、心の弱みを付け込み会社に留めている。
本当にあいつは外道を超えた悪魔だった。
そんなある日の昼、俺は千葉県君津市にある会社にアポを取るために、車で走らせていた。
今回のアポは本来上司がやるべき事なのだが、上司は他の件の仕事をしていた俺に擦り付けて、そのままランチに行ってしまった。
本当にあいつは悪魔だ。
俺は遅れたお詫びとして菓子を自腹で急いで買い、アポ先の会社に赴いた。
もちろん相手側は遅刻してしまったことに激怒。
ただ「なぜ上司では無く俺が来たのか?」という質問が来た為、上司の腹いせとして上司がやるべきだった事を急に俺に押し付けて、自分は昼食を取りに外出していましたと嘘偽りなく伝えた所、相手側は上司に対して大激怒し、俺に対しては謝罪された。
そして話し合いの結果、アポは大失敗に終わった。
でも相手側は、「俺のような優秀な社員をあの会社にいるのは惜しい」と言われ、俺をヘッドハンティングしてくれた。
ただ俺は「あの上司に俺が横領したという事になった偽の証拠を持っていて、辞めることが出来ないのです」と言った所、相手側はもちろん、その会社の社長がさらに大激怒。
相手は俺に優秀な弁護士を無償で付かせて、上司の罪を暴かせてやると言われ、もう俺に縛られるものはないんだと希望が湧いてきた。
俺は上機嫌に鼻歌を歌いながら、東京につながるアクアラインを進んでいく...
キキーッ!!ドーンッ!!
と突然目の前に対向車線に走っているトラックがいきなり乗り上げてきて、目の前の車を潰していた。
運転席を見ると、運転手は目を瞑り首を傾げていた。
居眠り運転だった。俺はすぐさま近づいてくるトラックを避けようと左に避けるが、左に寄ったトラックにアクアラインから押し除けて、そのまま俺の車は海に向かって落ちていった。
どのくらい意識を失っていたのかわからなかった。
しばらくして目が覚めると目の前には、大きな空洞が広がっていた。
上も下も右も左も、何処を見ても土の壁しか見えない。
うーん、そういえばこんな所昔◯ラ◯もんの話で見たことあるような...
もしかしてここ、地底世界?
え、もしてかして俺地球空洞説立証してしまった?
...んな訳ないか。第一地底世界という確証はまだないし、多分海底にある洞窟に迷い込んだんだろう。
そう思い、取り敢えず出口を探すために体を起こす。
...あれ?俺こんなに背が高かったけ?
っていうか首を上げただけで天井が結構近くなったな。
この空洞大きいと見せかけて、実は意外と小さい?
そう思い歩き出きだしたが...
のっし のっし のっし...
全然前に進まない。
ていうか誰か俺の体を止めてないか?
そう思い自分の後ろを見てみると、誰もいない。
只ゆらゆらと振る剣みたいな尻尾があるだけ...
「んっ!?尻尾!?」
思わず声を出してしまい、再び見ると鱗がまるで鋭い刃の様なものが集まって一本剣みたいな尻尾がゆらゆらと動いている。
あれ?しかもこれ俺と感覚がある感じがする。
まさかと思い、改めて自分の体を見る。
二本足だった両足はもう二本追加されていて、それぞれの足には四種類の鉱石の鱗がついており、背中には水晶に覆われた翼が付いていた。
これ...ドラゴンじゃね?
...
「なんじゃこりゃぁあああああ!?」
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いったん落ち着いた俺は今現場を確認している。
目が覚めたら、俺は人間をやめてドラゴンになってました。
今の俺の体は鉄の尻尾に、足は金・銀・銅に後緑色の変な金属を持った鱗、羽は芸術品と読んでもおかしくない水晶で覆われている。
...これ、もしかして数年前に流行った『異世界転生』ですか?
え?どうして俺が知っているのかって?
実は俺、大学時代までにこう言った異世界ものの漫画を読みまくっていた程のオタクだったからさ!(フッ///)
でも体は見てわかったけど、肝心の顔がどんな雰囲気なのかわかんないよな。
ドラゴン「あ、そうだ。この鉄の鱗、今見返すと鏡みたいに反射しているからこれで自分の顔見れるんじゃね?」
そう言い、尻尾を足の前に置き、前脚で器用に鉄の鱗を剥がす。
...それにしても剣みたいに鋭い鱗なのに、足全然切れてないとは結構丈夫な体なんだな。
俺はすぐさま鏡の様に反射する鉄の鱗に顔をのぞかせた。
顔には白い輝きを放つ銀の鱗が全体を覆っていた...ていうかこれ銀じゃなくて白金じゃね?
金より希少価値がある別名『プラチナ』を持つあの白金じゃね?
俺、お宝じゃねぇかよ
てかやばいやばい!
くそっ!折角異世界転生して無双できるかと思ったのに、まさかのドラゴンとは!
幾らお宝でも俺、ドラゴンだから絶対討伐対象じゃねえかよ!
これだったら絶対冒険者とかいるだろうな。
あ、でもここ出口があるかどうかもわからないし、もしかしたら簡単に入ってこられないところかも。
まぁ、今は自分の命に関して心配しなくてもいいか。
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さて、今現場自分がどういった状況なのか分かった事だし、ここは一つあるものを確認してみたいと思う。
それはずばり、『ステータス』だ。
異世界ものだと、こういった転生には何かしらの特典は付いていると思う。
まぁドラゴンだから得点がなくても絶対強いと思うけど。
大体の異世界ものだとドラゴンは最強の魔物というしね。
さて、ステータスを確認するには大体は「ステータスオープン」と唱えれば、何かウィンドウが出てきて、ステータスを確認できそうな感じがするけど...この世界でもそうなのかな?
取り敢えずやってみるか。
ドラゴン「ステータスオープン!!」
...
なんてやっぱりドラゴンだから出来るわk
ブゥーン!!
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NAME:名無し
RACE:オミペントドラゴン RHEA:L
EXP:0/200
LV:1
HP:1000
MP:3000
PW:200
DF:150
SP:80
SKILL:
鑑定
成長速度アップL
ステータス成長倍率L
スキル共有
全属性魔法L
鍛治魔法L
回復魔法L
状態異常無効L
自動体力回復L
自動魔力回復L
超再生
RHEASKILL:
宝物庫
万能図書館
無限メモリー
EXCELLENTSKILL:
創造魔法
繧ケ繧ュ繝ォ蛻??
雜?カ企ュ疲ウ
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オゥ...本当に出ちゃった。
てか本当に特典らしきものがいっぱいあるじゃんか。
まずなんだ『成長速度アップL& ステータス成長倍率L』って。
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成長速度アップL
魔物を倒す際に得られる経験値を倍増できる(Lにより×1000)
ステータス成長倍率L
経験値が一定の量を達し、レベルアップをした際に上昇するステータスをさらに上げることができる(Lにより×1000)
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うわぉー、凄いね。
経験値の量が通常よりアップで得られて、レベルアップの際のステータス上昇が1000という無双チート待ったなしの凄いスキルだった。
人間だったら英雄か勇者になれるものだよ。
他にも全属性魔法Lは火・水・風・雷・土・光・闇・無の魔法を全て使えるスキルで、鍛治魔法Lはお馴染みの鍛治を扱う際に使う魔法だが、Lが付いた事で伝説的武器の鍛治が出来るスキルで、超再生は仮に戦闘中に肉体の一部が消滅した際、魔力を使って肉体を復元できるスキルらしい。
自動体力回復Lと自動魔力回復Lは...御察しの通り。
そして一番気になるのが、レアスキル。
まずは『無限メモリー』、これは異世界転生ものでおなじみの容量限界が無いアイテムボックスとなっている。
色んな物を無尽蔵に入れられ、念じれば取り出す事ができる。
さらには上手く出来ない人の為、『アイテムボックス』と唱えば操作ボードが出現し、その中のアイテムを押すだけで取り出せる初心者専用機能付き。
又保存したものはその瞬間物質の時間が停止し、新鮮な状態のまま取り出せる事ができる。
これはまだいいとして問題は『宝物庫&万能図書館』の二つだった。
次にレアスキル『宝物庫』って何だ?
取り敢えず説明っと。
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宝物庫
己の意思では発動できないレアスキル。
長い時間一定の位置に留まっていると、オミペントドラゴンの魔力が染み込み、そこを中心にあらゆる鉱石を無から生み出すことができる。
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へぇ、俺が居座ることで鉱石が生産できるスキルかぁ。
まぁ、この体からしていかにも金を生み出す魔物と言われそうだな。
只これもあまり人に見られない様にすべきだな。
こんなスキルが人間...特に貴族なんかが見られたら、それこそその国の財政がめちゃくちゃになったり、戦争の資金調達ができるようなものだ。
見せるんだったら、信頼できる人間だけだな。
最後に『万能図書館』は現実世界で言うとネット検索ということがわかった。
このスキルは、現実世界の検索はもちろんのことでこの世界の資料や歴史、さらには様々なものの製造方法まで調べることができるものだった。
試しにこの世界の天気を念じて調べてみた所、午前中は晴れで午後からは雲行きが怪しくなり、夜には雨が降るとのこと。
この世界魔法が主流だから、人工衛星等はないと思っていたが、それ無しで見られたので凄かった。
あ、そういえばさっきのスキルで最後のLはなんだろう?
LってもしかしてランクとしてのLかな?
でも異世界ものでは大体はSが限度だよな?
一応調べてみるか。
『Lランク:Sランクを上回る最高ランク。人間の間ではSランクが限界である為、知る者はいない。唯一知っている者はギルドマスター、又は王族の一部のみ。由来はLEGENDの頭文字から。今から1000年前、世界滅bry』
なるほど、あまり知られていない幻のランク的なものか。
そして由来はLEGENDの頭文字か。
凄いな、本当に知らないところまでわかるんだなこのスキル。
っと思っていたが、これ現実世界のものもここで検索ができるんだよな?
さっきの説明でもしやと思いある単語を念じて入力した。
『兵器製造』
すると出てくるわ出てくるわ、現実世界の様々な兵器の製造方法がより詳しく書かれていた。
うわっ!しかも核の設計から製造方法まで乗っていやがる!
...この単語等は封印だな。
こんなものがこの世界に公開されたら、俺が住んでいた地球以上の大惨事に為りかねない。
ましてや核なんて、第二次世界大戦以降の代物はより威力が上がっていると聞いたことがあった。
それを作られてしまったら、恐らくこの世界は滅びちゃうだろう。
そんな訳で、これは封印っと。
あ、あと俺の種族に関することも検索できるかな?
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RACE:オミペントドラゴン RHEA:L
この世界で数体しか存在しないと言われている幻のドラゴン。
その姿は金・銀・銅・ミスリルの鱗でできた四本足に、水晶の翼を持ち、顔は白金で覆われていると伝えられている。
あらゆる種族からは、この世界に鉱石等様々な恵みを与える存在である為、神の化身として崇められている。
ドラゴン自体も穏やかな性格の為敵対行動をせずに静かに過ごしている。
稀に善のあるもの者と出会えば膨大な財と力を与えると聞くが、もし野心に塗れ善の心を失ったときは、財と力は全て消え永遠の不幸呪が降り注ぐと言われている。
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ほう、どうやら俺が討伐される心配は完全に無くなったらしい。
しかもより詳しく調べると、俺は神の化身としている為、もし仇なすものがいればそいつは問答無用で死刑になるらしい。
そりゃあそうか、この世界にとっては俺は鉱石を生み出し続ける存在だしな。
まぁ、実際は宝物庫がある事で出来るみたいだけど。
あ、ちなみに鱗も鉱石と同じみたいで、たとえ鱗が抜けても宝物庫で新しい鱗が生えてくるみたい。
もう完全に成金じゃないかよ。どうだ明るくなったろうし放題やん。
レアスキルの説明を全部みたところで、もう一つのEXCELLENTSKILLって何ぞや。
EXCELLENTって翻訳すると優れている・優良の意味が取れるが、一体何が優れているのかがわからない。
しかも3つあるEXCELLENTSKILL(以降ES)の内二つは何故か文字化けしていて、どんなスキルなのか完全にわからない。
しかもこれ、説明を見ても同じく文字化けしているし、検索に至っては何でも知ってるはずなのに、この二つに関する資料が見つからなかった。
唯一、わかるのは創造魔法というなんか危ないスキル。
よくあるオリジナル魔法の生成スキルか、それとも無からいろんなものを生み出してしまうヤバい物なのか説明を見なければわからない。
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創造魔法
転生者の中でも僅かな者が持つことを許される伝説級のスキル。
魔力と元になる素材を使うことで、あらゆるものを生み出すことができる。
素材となる物のランクによって出来上がるものも高ランクになる。
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なるほど、よくある無から生み出すとはちょっと違って、素材と魔力があってこそ無から生み出す事が出来るというものか。
しかも、このスキルを持っている者は転生者...そしてその中でもごく僅かだった。
だから転生者でもこのスキルを必ず持っていることはないとわかった。
俺としてこのスキルを使って、この世界にとっていい物は生み出そうかなと思っている。
例えばこの世界にはない地球産の果物だったり、娯楽だったりといったものを生み出すのはいいなぁ。
...只僅かでもこのスキルを持つ者は必ずいることは分かっている。
もしそのスキルを持って、この世界で悪行をする者がいたら
俺はそいつを殺す。
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さて、ステータスの確認も終わったことで、この殺風景は空洞を俺好みに変えていこうと思う。
だって、何もないと退屈になって死んじゃいそう。
こういう空洞はやっぱり地底世界にしていくというのはありかもしれないな。
昔見た◯ラ◯もんみたいな感じではなくて、実際に存在する様にしてみよう。
となるとまず水は必要だよな。
とは言っても、地上の水を引くのは難しそうだし...ここは魔石を生み出してみようかな。
さっきネットで調べてみたが、『水の魔石』というものがあれば、魔力を吸収して水を生み出すことができるらしい。
当初は「水を生み出したらこの世界は水没するのでは?」という疑問があったが、ネットによると「自然エネルギーは世界に漂う魔力によって生み出されたものであり、時間が経てば自然エネルギーは魔力に還り、また再び自然エネルギーとして戻る」と書かれていて、要するに木炭みたいなものだな。
木炭は木を空気のない釜戸で作り、BQQ等で使い、終わったら土に返し、再び木が生えると言った循環が出来上がる。
この世界の水等はそう言ったものなのだろう。
よし、さっそく水の魔石を生み出しますか?
ネット詮索によると、水の魔石は本来海や川、湖等水に住う魔物からしか取れないが、創造魔法を使えば素材によって水の魔石を生み出すことができる。
おまけの俺の鱗も素材として扱われて、いくら剥がれてもまた生えてくるので実質作り放題。
という訳で、鱗の中で一番価値があると思うミスリル鱗で作ってみようと思う。
ミスリルはこの世界では白金以上の希少鉱石。
例え俺のレアスキルであっても、その地域にミスリル鉱山に出来るのに何十年もかかるとネットで書かれていた。
そしてミスリルは魔力の通しも良く、武具だけでなく、錬金術で作る最上級系ポーションの素材にも使われているみたいだ。
だから成功すること間違い無し。
まずミスリル鱗を剥がし、次に創造魔法を発動させ地面に魔法陣を映し出す。
そこにミスリル鱗を置き、最後に生み出したいものを思い浮かべながら、魔力を注いでいく。
水の魔石は、検索の際に画像も載っていたので、これを記憶している。
すると、ミスリル鱗が眩い光に包まれていき、光が全体空洞全体に広がっていく。
時間はわずか15秒で、その後は少しずつ光が弱まり、ついには光は完全に失った。
そして目の前にあったのは、青色で内部に水の紋章が描かれた宝石の様なものだった。
これが水の魔石であり、これを使えば周囲の魔力を吸収し、その魔力で水を生み出す。
すぐさま地面を土魔法で少し掘り、溜まり場の底に水の魔石を置く。
後はこれで水が出るのを待つだけ。
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どのくらい待っただろうか?
今田に魔石から水が湧き出てこない。
どういう事だ?
魔石があれば水が湧き出してくるはずだが...俺はもう一度ネットで魔石に関して調べ出そうとした。
※注意
水の魔石から水を出す為には、この魔道具が必要になります。
...という訳で、またミスリル鱗を使って今の画像の魔道具を制作しました。
いやはや、まさかこの俺が早とちりしてしまうとは、ここに人がいたら恥ずかしさの余り穴に入りたいくらいだ。
とにかく形状からして水晶を載せる台座の小型版が出来上がり、そこに水の魔石を置く。
え?どうしててもないのに置けるかって?
実はさっきのスキルの際に分かった事なのだが、スキルとは別に知性を持つ魔物は共通の能力として念力を持ってることがわかった。
念力は思い込むだけで、物体を自由に動かせることができる。
言ってしまえば、透明な手ができた。
いやぁ、四本足だからどうやって物を持ち運んだりすれば良いか迷っていたから良かったし、しかもこれ本当に手と同じ感覚なのに重さも感じないからこれは便利だわ。
しばらくして、効果が発揮したのかチョロチョロと水が魔石から出てきた。
初めて水が出る光景に少し感動を覚えていたが...これ時間かかるんじゃねぇ?
明らかに出ている量が蛇口をちょっと捻ったぐらいの量しか出てきていないが。
これじゃあいくら水が出ても、地面に吸収されるだけだな。
ドラゴン「そういえば水を生み出すには自然の魔力が必要だけど、MPの魔力を外に放っても魔道具の水を生み出せるのかな?」
魔法使いが生み出す水魔法は体内にあるMPを消費することで生み出せるが、そのMPを使うのではなくMP自体を外に放出することで、自然の魔力と同化するのではないだろうか?
そう思い、俺は意識を集中させて目の前に自分のMPを凝縮させた塊を生み出し、外に放出させた。
ドバァーッ!!
横から巨大な水柱が現れ、溜まり場が一瞬で水が溜まり、水柱から出た水は周りにブチまけた。
すぐ横にいた俺もそれを喰らい、全身がずぶ濡れになった。
気分が最悪なると思ったけど、それよりも自分の魔力でとんでもない量の水を生み出したことに若干感心してしまった。
ドラゴン「異世界魔法スゲェ!」
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それから俺は泉を中心に、殺風景な空洞を緑に覆わせるために、まず天井にネットで調べた太陽みたいな光を発する珍しい『太陽石』を創造魔法で生み出し、光源を獲得した。
次に、自分の世界にあったフルーツの種を同じく創造魔法で生み出し、それを埋めていく。
バナナにマンゴー、パイナップル、パパイヤ等の南国の種を埋めて、そこに念力で掬った水を注いでいく。
数日経って、埋めたところから小さな芽が出てきた。
小さい頃に家庭菜園していた事があったけど、改めて芽が出たときの喜びが隠せなかった。
ここからどういった感じで育っていくのか想像しながら育てていくので、楽しみだった。
と思っていたがそれから十日後、目が覚めたら目の前には完全に成長しきった南国の植物が生い茂っていた。
普通木が成長するにはもうちょっと時間がかかるものだと思っていたが、これは明らかに成長速すぎる。
おまけに果実も完全に実っていて、今にも食べごろになっている。
...これ食べていいのだろうか?
食べてみて実はとても不味いものじゃないだろうか?
念力で黄色く熟したバナナを一本取り、皮を剥いていく。
見た感じ美味そうな感じと匂いはするけど、味はどうなんだ?
中にはいい匂いだけど、不味いのもあるからな。
ええい、一か八か口に放り込んで不味かったらこの辺りを燃カスにしてやる!
バクッ
ドラゴン「...あれ?美味い」
驚くことに甘みも旨味もちゃんとあってビックリした。
しかもこのバナナ、とても甘くよく見ると中には蜜が凝縮されている。
下手すれば前世に一度食べてみたいと思い食べた事がある高級バナナ以上の美味さだ。
...ただ、コレジャナイ感がした。
やっぱ家庭菜園はゆっくり成長して美味しいものが出来ていくのを見ながらするもんだから、絶対コレジャナイ。