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シノノメナギの恋わずらい  作者: 麻木香豆
第三章

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暫しお別れの前夜

 あの後からの夕ご飯のきまずさといったら。

 とうとうお父様にもわたしが男であることがバレてしまい(ほとんど全裸に近い形だった)、お父様は台所でお茶の用意をしていた。驚くなり怒ったりして顔も合わせてくれなかったらと思ったけど。

 お母様はコタツに座って正月番組を見ている。着物でなくて黒のワンピースを着てとてもラフなスタイルである。


「さあさあみんな、すき焼き食べましょうー」

 と割烹着姿の慶一郎さんがニコニコと運んできた。割烹着!! と思ったけどすごく似合う。


 お茶を目の前に置いてくれたお父様。目線を合わせてくれない。そりゃそうよね……。


 こんな形で三人にはバラバラにわたしの正体がバレてしまい……。常田くんが夕飯の時にみんなに話そうと言ってくれた。






 すき焼きをたらふく食べ、お風呂に入り、それぞれの部屋に戻る。



 そしてわたしたちは最後の夜を過ごす。常田くんの部屋は和室でふすま一枚。

 声や音を最小限に……前読んだスローセックス入門の本を思い出しつつも。でも常田くんは少し暴走がちになるが、抑えさせてまったりゆったりしばしの別れの前の濃密な夜。


 わたしたち恋人になって約半年。最初、身体の関係は無しだとか言ってたのに。

 彼はわたしのことを女の子として、いや一人の人間としてとても愛してくれた。その愛を不可能に思えた身体の関係にまで発展してしまったのには正直驚いているし、それが可能であったのならなぜ今までしなかったのか? きっとそれは常田くんと結ばれるため。そう思うしかない。



 そして恒例の常田くんの腕枕でのピロートーク。これもしばらくないのか。常田くんと同じ感触の腕枕を作りたいくらい。なんちゃって。もう片方の手は繋いで、わたしは彼の胸元に顔をつける。


「面白かったわー、みんな互いに梛が男ってことを知ってるなんて思わなくて、いつ知った? みたいな感じになっててさ」

「面白いっていうか……ねぇ、こういうことはしっかりちゃんと伝えたかったなぁ。特に何も言われなかったから良かったけど」

「おとんが一番びっくりしたったわ」

「そりゃそうよ……身体見られちゃったし」

「すまんかったな……」

「でもみんな、優しかった……うれしかったよ」

「僕も嬉しかった。僕の大好きな人を認めてくれた……」

 常田くんはわたしの身体をもっと引き寄せる。彼の匂い、体温、感触……。

 頭を撫でてくれた。こんなふうにわたしを優しく扱ってくれる人なんて彼が初めてだった。

 涙が溢れてきた。

「梛……泣かんといてくれや。僕まで泣けてくる」

 ぼろぼろぼろ……本当はずっと病院まで付き添いたい。でも家族ではないから病室には入らないと。それに仕事もまだ残っているし。

 早く早く常田くんのそばにいたい。ずっとそばにいたい。涙を指で拭ってくれた……。暗闇の中でも彼も目を潤ませているのがわかる。


「手術終えたら、梛のウエディングドレス姿を見たい。梛の誕生日、七月に……」

 ウエディングドレス! 結婚式?! 結婚なんてできないのに。


「式するくらいならべつにええやろ。僕もそれまでに痩せなかんわ……見てみ、このお腹」

 もう、泣かせた後に笑わせる……いつもの常田くん。タプタプのお腹を触らされて、笑うしかないわよ。


「わたしも痩せなきゃ。くびれが無いもん」

「いや、梛はこれでええ。ぽちゃぽちゃしてたほうが可愛ええから」

 とわたしの脇腹を撫でる。くすぐったいよ……。


「ほら、笑ったー。梛の笑顔好きや。もっと笑ってや」

 ……わたしは頷いた。でも涙が止まらない。常田くんはまたキスをしてくれた。そして抱きしめられ……。




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