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シノノメナギの恋わずらい  作者: 麻木香豆
第三章

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常田家

 大阪駅手前で目が覚めてわたしは慌てて常田くんを起こしてバタバタしつつもなんとか降りた。

「ほんま焦ったわー」

「わたしも……」

 やっぱり大事な日の前日の夜は大人しく寝るのに限るわ。


「改札に兄ちゃんが迎えにきてくれてるから」

 慶一郎さん……密かにまた逢えるの嬉しかったり。常田くんよりもすらっとしててシュッとしてて……。腕も長くて少しヤンチャそうな悪い男な匂いがする。


「なんかさっきより元気になった?」

「べ、別に。早く行こう」




 改札にはベージュのロングコートに黒スーツで立っている慶一郎さん……ああああああ、かっこいい。

 わたしたちを見つけるとものすごくいい笑顔。

「あけましておめでとう」

「あけましておめでとうございます」

 そいや常田くんに言ってなかったなぁ……バタバタしてて。


「はい、梛行くよ」

「すいません……」

「なんのすいません、や」

 常田くんが笑ってる。またうかれちゃった、わたし。





 慶一郎さんのかっこいいスポーツカーに乗せられ、わたしは常田くんの実家へ。

「あそこが浩二の入院する病院。大きいやろ。んでなー……」

 慶一郎さんが運転しながら教えてくれた。緊張もしてたし、常田くんは地元に戻ってリラックスしてポエーっとしてるし、わたしは外の景色を見ても全く分からない場所だし……。

 それを察したのか慶一郎が話し始めてくれた。


「あ、あそこの図書館が梛が勤めるところや」

「……図書館?」

「図書館というよりも公民館と一体型やからな」

 ……かなりコンパクト、と文句言ってもしょうがない。35歳、他所から来た中年を雇ってくれるというのだから。

 少し進むと大きな建物が見えてきた。

「あれが僕が入りたい図書館や」

「一度落ちたけどな」

「兄ちゃん! るっさいわ、あほ」

 ……いいな、府内でも一番大きいところだってネットで調べたら出てきた。

 常田くんにとっては働きやすい環境だとわかっている。目が見えなくなっても働ける。


 ……わたしもできればそこに働きたい。児童図書や絵本コーナーもとてもきれい。まだ改築したばかりらしい。


 でもそこでの採用はなかった。


「そろそろ着くで」

 大通りから離れ、細い道へ。住宅街に入っていく。


 そして一軒の一戸建ての家の前に着いた。

「着いた……変わらないなあー」

 常田くんの口元が緩んだ。5年ぶりの実家。帰れなくない距離なのに帰らなかった彼だけど、とても穏やかな顔をしている。

 いいな、常田くんには帰る場所もあるし出迎えてくれる家族もいる。うらやましいな。


 玄関から常田くんのお父様が出てきた。年始の挨拶。持ってきたお菓子を渡す。お母様が好きなお菓子だと常田くんは言ってた。

「浩二……おかえり。梛さんも遠くからわざわざありがとう」

 とてもにこやかに迎えてくれた。お父様といい、慶一郎さんといい……年始からイケメン祭り。もちろん常田くんもだけどさ。


「まずはコタツで暖まって、昼前には参拝に行きましょう」

 と玄関からすぐの居間に通される。


「梛、ここ座りや」

 と常田くんがフカフカの座布団を出してくれた。なんかとばあちゃんと住んでいた頃の家に似ている。

 みかんも出てきたし、おかしにコーヒー。なんかブワッと昔のことを思い出してなんかこみ上げてくる。

 こんなところで感極まっちゃダメね。緊張してるし。

「梛、冷えたか? ほら、足をしっかり入れて。正座せんでもええ」

 つい人の家だから正座しちゃうよね。


 そういえばさっきからお父様に、慶一郎さん、常田くんがお茶やらお菓子やら荷物運びやらテキパキしてるけど、お母様がいない。妹さんは今日は来れないと聞いてたものの……。


「おかんはどこ行った? 梛来たのに」

「母さんは今、着物を用意してるんだが……そろそろ来るんじゃないか?」

 あ、そういえば着物を着るんだった。……お母様はどんな人だろう。わたしに似てるとか言ってたけど?


 バタバタっと廊下から足音。

「あらーごめんなさいねぇ」

 と女の人の声……そしてふすまが開いた。そこにいたのは紺色の着物を着たショートカットの小柄な女性。


「梛さん、浩二、あけましておめでとう」

 ……この人が常田くんのお母様……。とても優しく微笑んでいる。


 わたしに似てるとか言ってたけど、そうでもない。

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