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シノノメナギの恋わずらい  作者: 麻木香豆
第三章

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2020年夏

 時は2020年、夏。また暑い季節がやってきた。室内でも司書の仕事も地味に忙しく汗ばむこともある。

 新しい勤務地に働き始めてから迎えた夏。利用者さんは去年に比べると少ない。世界的に広がっているウイルスのせいだ。

 みんなマスクをしている。わたしもマスクをしている。そのおかげで化粧も口紅はしなくなり、薄化粧だけど露出する目元はバッチリお化粧する。

 髪の毛はだいぶ伸びたのでウイッグもする必要もなくなり蒸れずに済んでいる。


「東雲さん、読み聞かせボランティアの方がお見えになってます」

「あ、はい……今行きます」

 わたしはカウンターに行くとそこには……。


「梛さん、今月から再開ということで気合入れてきちゃった」

「登録してから初めてだから緊張するよ」

 門男さん、さくら夫妻である。二人もマスクをしている。わたしがこっちの図書館にいるからとこっちでボランティアしたいと希望したのである。

 今月から少人数の子供たちを集めて読み聞かせをするのだが本当に前よりも集まりが悪い。まぁそれは今にとってはいいことでもあるのである。


 わたしは今頃、大阪にいるはずなのに大阪にはいない。

 前の図書館の館長に薦められた通り市内の児童図書館に勤務している。それもこれも今の情勢のせいだ。

 せっかくとある大阪の図書館に勤務するために引っ越しする前に緊急事態宣言出ちゃって図書館も一時閉鎖、それにあたって大阪での採用も流れちゃった。

 緊急事態宣言解除後、前の館長や夏姐さんの計らいと人員不足のためなんとか児童図書館に勤めることができたものの……本当にわたしの人生計画は散々。


 同じ市内にある図書館だが、配置の違いや利用者層の違い、決まり事もこちらに合わせなくてはいけないのだ。大阪に行ったと思えばまだマシなのかも知れない。同僚の人もわたしが中身男で外身女であることもなんとか理解してもらえてホッとしているが、やはりまだなんか遠慮しがちなところもあって特に話すことも、仲良くなることも無い。

 それに感染症対策で必要以上に職場では話してはいけない、飲み会をしてはいけないというのもあり、職場の人たちは本当に仕事をするだけの仲間、である。


 ずっと前の図書館にいたからその時の仲間たちが恋しくなる。でも自分が成長するためにはこういう環境に飛び込むことも必要だ、と言い聞かせて仕事をしている。


 それに話さないことで妄想も捗るわけで。その辺はラッキーでもある。マスクでニヤケ顔隠せる。


 あと、利用者層が前の図書館に比べると圧倒的に親子連れ、学生さんであるとのこと。

 男の人で妄想ができないーっ! 土日に来る子供のお父さんとか高校生の男の子でドキドキするけど……どの世代も満遍なく来てた頃に比べると物足りないっ!


 つて、そんなこと考えていたらまた常田くんに怒られちゃうかも。

 左の薬指に輝く指輪の宝石……。撫でてみる。クリスマスにもらったこの指輪。


 常田くんに会いたい。


「梛さん、そろそろ始めてもいいかしら」

 さくらさんに声をかけられた。またわたしったら……。わたしはカウンターから読み聞かせコーナーに向かった。


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