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シノノメナギの恋わずらい  作者: 麻木香豆
第二章

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37/76

手を繋ぐ

 35歳の12月。今までとは少し違う12月。なんだかウキウキしてしまう。

 今日は少しウェーブのかかったボブのウイッグをつけてて、新作のくすみピンク色のワンピースコートに膝上丈のチェックのスカート。(黒のタイツは忘れずに)まだロングブーツは早いからショートブーツ。


「梛、すごくウキウキだね」

「そ、そう? でも楽しいってことは間違いないー」

 私の横には……年下の彼氏、常田くんがいる。35歳にして初めてできた。彼は同じ図書館ではたらく可愛い可愛い部下でもあるのだ。

 私の着ているコートと同じブランドのメンズ展開しているベージュのロングコート、とても似合ってる。

 付き合う前は少しセンスなかったけど、デートの時に買ったの。そこから少しずつおしゃれになって、ますますイケメンになってきた。最高の彼氏。


 ちなみに常田くんは30歳なんだけど彼も私が初めての恋人。ちょっと今日は私がショートブーツのヒールが高めのやつ履いちゃって少し背が高くなってしまったけど。そして足も痛い。でも今着てるワンピースコートを可愛く着たいから我慢なのだ。「女の子」は可愛いのためなら我慢も大事。


「やっぱり車でこればよかったなぁ。梛なんてヒールやろ」

「大丈夫大丈夫。これくらい平気なんだから」

 常田くんは少し困ってる。二人ともお休みだからお散歩デートで一緒に住むアパートからちょっとそこまでーのつもりが駅前まで来ちゃったんだよね。

 それでランチしたり、買い物もしたり。これはこれで楽しい。ノープランでもいいの。


「いや、こんなに大きなツリーを買うとは思わなかったわ」

「あ、まぁ……ね」

 常田くんの反対側の手には大きな白色のツリーの入った箱。わたしががっちり抱えて歩いている。だからかすれ違う人すれ違う人こっちをみてくるんだよね。


「梛が持つのもなんだし、僕が持つ」

「いいのいいの、わたしはこれくらいへっちゃら」

「さすが、空手部チャンピョンや」

「もぉ、それ言わないで」

 こんな箱くらいヒョイっと待てちゃうんだから。そんな風だから周りがわたしをじろじろみてるのよね。


 いいの、わたしは普通の女の子とは違うんですもの。て、普通って何かしら。


 わたしは中身は男。でも女の子として生きていきたいと思ってる。恵まれたことに職場の人や友達、そして常田くんはその生き方を理解してくれている。


 だからわたしはとても伸び伸びと過ごすことができるの。


「でも楽しみやな。どこに飾ろう」

 そうねぇ、2LDKなんだけどやっぱりリビング? 常田くんの綺麗好きのおかげで部屋も綺麗だから邪魔にならないところに置いて、飾り付けもして、イルミネーションも付けてうっとり眺めて……常田くんに押し倒されてキャッ! でもリビングにはコタツがあるからミスマッチな気もするけどぉ。片付けると寒いし、さっきのように押し倒されてイチャイチャシチュエーションにはコタツ必須だし……いや、布団敷けばいいのかな。

 もぉおお、色々考えちゃう。


 ぎゅっ。


 常田くんが私の左手を強く握った。

「また梛、なにか考えてるやろ。どこかにぶつかって怪我したらどうすんねん」

「ごめんごめんっ。気をつけるね」

「こうやって現実に引き戻さないと梛はいつまでもボーッとするからなぁ」

 わたしは妄想癖がひどい。だからよく常田くんにボーッとしてるぞと、言われる。これもわたしの趣味なんだからほっといて。でも街の中での妄想は危険よね。


 でもこんなに大きなツリー買うのは初めて。常田くんもだって。しかも白いツリーなんて珍しい。

 少し高かったけど奮発しちゃった。二人で楽しみたいもん。


 ……常田くんは昔から目が悪い。何度か手術をしているが延命しているようなものらしい。正月明けにも手術が控えている。

 いつか彼が見えなくなるこの世界。その前にたくさんのものを一緒に見たい。体感したい。体験したい。


「もう12月かー。あっという間やな」

「うん、師走だもの。図書館も忙しくなるわね」

「ああ、今日はおでんにして温まろうな」

「やったー!」

 わたしは常田くんの右手を握った。彼のチャームポイントの犬歯を出してニカーッと笑う顔、大好き。


 ウキウキしながらツリー片手に二人帰る。今年の師走はいつもとは違う。絶対何か違う。

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