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シノノメナギの恋わずらい  作者: 麻木香豆
第一章

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34/76

わたしはわたし

お昼すぎ? にわたしは図書館の裏口から入る。

「お疲れ様です」

「おつ……かれ?」

 でんさんがわたしを二度見する。


「どうも」 

「シノノメナギちゃん?!」


 わたしはスタスタと上がりロッカールームへ。そこには輝子さんが先にいた。わたしは女子のロッカールームを使っている。


「きゃっ!!!」

 おばさんの割には可愛い声出すのよね。輝子さんは後退りしてじろじろわたしを見る。


「……な、梛ちゃん???」

「お疲れ様です」

「お、お疲れ様……」

 わたしはエプロンを着てロッカールームを出る。途中パートさんとすれ違うと、輝子さんやでんさんと同じ反応をする。


 そして事務所に着くと夏姐さんがパソコンに向かって作業していた。

「おはようございます」

「おっはよー、あのさこないだの企画の……」

 夏姐さんは目を丸くしている。そりゃそうよね。


「梛……」

「わたし受付ですよね、変わってきます」

「え、ちょ、ちょ……」

 わたしはそのまま受付に向かう。そこには常田くんとパートさんが受付をしていた。お昼過ぎでも人は多い。本もたくさんたまってる。そろそろこの2人もお昼休憩ね。


「おはようございます、変わります」

 常田くんに声をかけた。彼は返却作業を終えてわたしと気づいてにこやかに振り返った。

「おう、たのむ……で……」

 と一瞬で顔色が変わった。そうよね、口あんぐりよね。


「あのぉ、返却したいんですけど」

「はい、かしこまりました。常田くんは休憩入って」

 わたしは椅子に座って返却作業。常田くんは、後退りして何度もわたしを見ているようだ。


 あっ、次郎さんが隣で並んでる。わたしの方は借りる本の冊数が少ないから早く人が少なくなっていく。


「2番目にお待ちの方どうぞ」

 と言っても次郎さんは来ない。


「どうぞ」

 と声をかけても違う方を見るが、何かに気付いてわたしを二度見する。

 わたしは目を合わせて微笑んだ。すると次郎さんは持っていた大量の本をドドドドドっと足元に落とした。

「大丈夫ですかっ」

 わたしは駆けつけてカウンターに置くと次郎さんはタジタジしている。

 手紙をもらってわたしからの返事待ちだけどいつ言おう。今? と思ったら本を受け取って次郎さんは去っていった。


「……東雲さん、さっきから呼んでる人いますよ」

 パートさんからそう言われて見てみると門男の奥さん。


「ねぇ、梛さんは? あのボブカットでコロボックルみたいな、可愛らしい子」

 ……コロボックル! わたしそう思われてたの?!


「あ、あの……わたし」

「ちがう、あなたじゃなくて……いや、東雲って書いてある」

「わたしですよ」

「梛さんっ!?」

「はい……東雲、梛ですよ」

「そ、そ、そ、そうよね。声がそうだもの……ど、どうしちゃったの」

 彼女が驚くのも無理はない。


 わたしはここにいく前にいつもの美容院に行きボブカットからがっつりショートヘアー、刈り上げもしてサイド少しツーブロ、メイクはベースメイクだけ、ポイントメイクは無し、服も常田くんの男物の紺チェックシャツ。


 いつもの女の子の東雲梛はいない。


「梛さん、あなた……」

「あ、その」

 と言いかけた瞬間。後ろから夏姐さんがやってきた。

「ちょっとあなた、お電話入ってるから。代わりに他のものが対応しますのでお待ちくださいーほほほほー」

 と事務所に連れて行かれた。ちょっと……なんでよっ。


 中には常田くんも弁当を食べずに待っていた。

「梛……どうしたんだよ、その髪の毛にその格好!」

「ごめん。服借りた」

「借りた、じゃなくてさ……いつもの梛は?!」

 わたしは常田くんの顔を見たら一気に緊張の糸が切れた。


「その、ええと……ああ、やっぱり無理ーっ。男の子なんて無理ーっ」

 わたしは腰が抜けてしまった。男の格好なんて久しくしてなくて男として振る舞うなんて無理っ。


 常田くんに心配かけたくないって気持ちがオーバーヒートしちゃって思いきって男になったけどやっぱり無理だった。

 目から涙がボロボロと流れ落ちる。

「梛、なにがあったんや? なんか僕ひどいこと言うたか? ……まさか昨日僕が……そのっ」

 違う違う、常田くんが悪いんじゃないの。たしかに昨日はすごく執着しすぎてたし、キスマークやっぱり消えなくてコンシーラー塗ったけどさ。


 ティッシュ渡してくれて嬉しい、わたしは涙を拭く。言い寄ってきた人たちが私の正体が男であることを知ってサーってひいてくれるかなってなんか本当にやりすぎた。


「梛、化粧品貸すからいつもどおりメイクしなさい。らしくないわよ」

 と、夏姐さんが持ってるメイクポーチを貸してくれた。


「ありがとう、夏姐さん……」

 優しさにまだ涙が溢れてしまうよ。常田くんも休憩中なのにごめん。しかもわたしの手を握って。そんなことしてたら周りの人に隠しているのにばれちゃうよ。ってもうバレバレか。


「梛、大丈夫。君は僕以外の所には行かない。そう言いたかったのかな」

 わたしは頷いた。たまたま来たモテ期。どの人も魅力的だけどわたしの一番は常田くんなの。わかって。

 母さんみたいに(ばあちゃんも?)フラフラといくような人間じゃない。それをわかってほしい……。にしても思い切って髪の毛切りすぎたなぁ。なにやってんだか。


 数分後、夏姐さんの化粧品でわたしはいつもの東雲梛に戻った。けど男の髪型で化粧品……んー、鏡と睨めっこしたけど。


 まぁなんとかなるか……。


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