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シノノメナギの恋わずらい  作者: 麻木香豆
第一章

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繊細さん2

 繊細さんを案内する。今までいろんな人から本を探してほしいと言われてそつなくこなしていたけど(言わなくてもわかるだろうが、妄想はもちろんしてる時もあった)その中でドキドキするのは何でだろう。

 いつも探してる人に合うような本に案内できるかドキドキすることもあるけど今回は具体的にこの市の植物についての文献って言われたからあそこしかない。

 そして本も数冊絞られる。とても的確でわかりやすい聞き方である。


 中にはふわっとした言い方で全く見当違いのものを案内してしまいがっかりされたこともあるけど数年やっていればなんとかマッチング率も高まった。


 図書館では利用者さんの知りたいことやこういう本が欲しい、こういうタイトルの本を探している、などコンピュータが普及していても私たち司書に訪ねてくる人はいて。聞いて探してもらうのも、借りるのも無料。

 中にはどこどこに旅行したいけどプランを立ててくれと旅行代理店なみのこともしたこともあった。


 そんなこんなでたどり着いた。このコーナーは新聞雑誌コーナーの近くにある地元の文献が置いてあるスペースである。

 そして植物、そう……わたしもあまり見ないけど小学生や中学生が学校の課題とか宿題なんかで探しに来る人いるけど……あと山が好きな人とか。わたしはあまり興味ないからなぁ。

 よかった、この本の存在知ってて……。


「あ、これです。こちらのテーブルで確認されますか」

「ありがとうございます、すごい……あるんですね」

「そうなんですよ、地元の方が作ったらしいんですよ。とてもマニアックで……ほら、これなんか近くの寺の参道にある植物が……ほら!」

 ほら、とか言いながらも全く中身は知らない。その場で取り繕ってるだけである。


「これはこれは! 子供たちも喜びます」

「子供、たち……?」

 なに、子ども? しかも最近見ない目元の細さ……喜んでるけど、子ども? 繊細さん……結婚してるの?

 き、既婚者……また既婚者……。


「あ、僕……小学校の教師やってましてね」

「教師……子どもたちというのは」

「生徒たちです。この寺の近くの小学校の」

 あああ、よかったー。……て、何が良かったなの。繊細さん、先生……もしかしてあの栞は修学旅行の?


「でもあの参道は急すぎて子どもたち大丈夫かな……」

 あー、確かに。わたしも数回行ったけども行きはなんとかいいけど帰りがキツくて……次の日筋肉痛になったっけ。


「下見に行かれたらどうですか」

 なんでそれ言う、私。自然と口にしてしまったけど、言ったところで一緒に下見どうですか……なんて言われたら。


「下見、行きませんか」 

「はい……えっ?!」

 静まりかえった図書館でつい大声を出してしまった図書館司書のわたし。


「なんてね。お姉さん、かわいいね」

「ええええっ」

「反応が」

 ああああ、冗談をさらっと言う男はチャラい。可愛いって言う男もチャラい。(経験談)……でも繊細さんが笑うの初めて見た。


「そういえば今度図書館見学に行きますので……東雲さん、あなたに頼んでいいですか」

「あ、はい……なんなりと」 

 ドキドキ……名前を見られちゃった。東雲って読めるなんてさすが先生。

「じゃあこれ、借りるから」

「かしこまりました……ではお持ちしますので受付へ」

「こんな重いものお姉さんに持たせられないよ。あ、東雲さん……下の名前は」

 下の名前まで聞くなんて、チャラい! チャラすぎる! でも言うもん……。


「梛……東雲梛です」

「梛さん。いい名前だね。僕は仙台春生」

 仙台っ……! 繊細さんならぬ、仙台さんのお名前いただきました……。



 ◆◆◆


 なんだろ、これこそ浮き足立つ……と言うのかな。その後の仕事中もふわふわって感じで。夏姐さんはジーって見てたけど、ね。


 仙台さん……カッコいいっ。


 ってわたしは今日は早番。

「お疲れ様ですー」

 声がいつもよりも高くなる。なんだか幸せ……。



「どしたん、ええことあったかー」

 常田くん?! なんであんたがここにっ。しまった、この人にこないだキスされたんだった。


「梛さんが早番だから待ってたで。寒かったわ〜」

 でんさんと話してたんでしょ。


「なぁ、デートせぇへん?」

「えっ、今から?」

「うん、今でしょ」

「今……」

「車出して」

 常田くん……。


「はよ。じゃないと他の人に見られる」

 ……まだ夕方前。剥き出しの犬歯、屈託のない笑顔。


「近くまでよ。わかった?」

「よっしゃ」


 負けた。

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