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シノノメナギの恋わずらい  作者: 麻木香豆
第一章

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13/76

キスされた次の日

 あれから常田くんとは特に何も進展してないかというと、ないわけではない。

 翌日は遅番で、裏口から入るときに彼が待ってたりしてーと思ってたらそれが現実になって。

「おはようさん、梛さん」

「あ、お、おはよ」

 とたじろいてしまった。そんな反応してしまったら好きだって、あのキスを受け入れたことになってしまう。だから普通に取り繕わないと、と思うたびに動きがぎこちなくなる。


「おもろいわ、わかりやすくて」

 犬歯を剥き出しにして笑うの、本当に反則。

「行くよ、今日は夏姐さんいないからって手を抜かないように」

「はぁい」

 そんな感じで。そのあとどこかに出かけたとかそういうわけではないがこの一週間のわたしの妄想の中ではもうディープキスをしているテイになっている。

 あれから一週間か。

 もちろんキスはあれからしてもいなければ、されてもいない。


 やっぱり遊びだったのだろうか。帰りはわたしは車で常田くんは歩きだし。

 だったらわたしが駅まで車に乗せれば2人きりになるけど他のスタッフに見られたらあれだし。

 隙間時間でちょこっと目配せしたり、すれ違ったときに少し話したり。


案の定数日後。

「梛。最近ボーッとしてるけどなにかあったの?」

 やばい、夏姐さん……。わたしは首を横に振る。だが姐さんはわたしの顔を見る。


「飲み会の帰り、常田くんと一緒だったでしょ」

 ぎくっ! 

「あれからなんか2人ともおかしい」

 ぎくっ!


 というわけで休憩時間に夏姐さんに下の喫茶店に連れてかれた。


「あんなちゃらいの、やめておきなよ。今日は常田いないからいっちゃうけどさ」

 おごりと言うことで目の前にある特上ランチ。これは素直に言えと言う姐さんからの圧力だ。何かある時個別に呼ばれてこの手を使って何度も言う羽目になったか。


「わたしもそう思うので付き合いません」

「セックスはしてないよね」

「し、してません……」

 おいおい、姐さん。この時間帯にその4文字はダメだって。てかできないの知ってるくせに。


「そうか、チャラ男結構しっかりしてんな」

 と姐さんはエビフライをガツガツ食べる。いや、しっかりしてるとかそういう問題じゃないから。わたしと常田くんは乗り越えなきゃいけない壁があるから。


 ってまだあれから何も進展してないのに。


 特上ランチを食べた後に業務に戻るわたし。今日は人が少ない。おかげで合間合間に妄想が捗る。が、その隙間に常田くんが入ってくる。このやろう。


 でも帰ってくる本は多い。でも何か仕事があるというのは本当に良いことだ、と思いながらも業務に明け暮れる。


 あっ、繊細さん……そうか、だいたいこの曜日のこの時間に来るのよね。顔色は相変わらず悪いけど。

「返却お願いします」

 いつも丁寧に声をかけてくれる。そういう細やかな人はすごく好き。


 今回帰ってきた本は、

「嫌なこと言われても凹まない方法」

「うつぬけ」

「うつけしご飯」

 回避系、うつ体験記、レシピ本……。うつってさ、他人からの攻撃から来るものが多いけど自分の意識を変えなきゃダメ、他人は変わらないから! って言うよね。なんで嫌なことされた人が変わらなきゃいけないのよ。


 って、また! 繊細さん……あの例の栞を挟んだまま。

「あの、栞が……ってあれ?」

 繊細さんが消えてる。カウンター前から。隣のスタッフが指差す。


「先ほどの方は慌てて奥の方に行きましたよ」

 な、なにっ?! いつのまに。わたしはその場を頼み指差す方に歩いていく。いたいた、覇気のない後ろ姿。また啓発本でも借りにいくのよ。そんなの読まなくても……変われる、あなたならっ。


「あのぉ、返していただいた本に栞が……」

「あ、ああ……すいません……」

 繊細さんがへこへこ頭を下げる。もぉ、おっちょこちょいだな。意外と背が高いのね。気づかなかったけど。


「ちょうどよかった。探している本がありまして」

「は、はい……なんでしょうか」

 ちょうど真横に最新鋭の本の検索システムがあるのに人間のわたしに聞いてくるとは。いや、それはいいことよ。たしかにこれを導入してから本のありかを聞いてくる人は減ったけども、やっぱり人間に聞くのが一番である。


 それよりも繊細さんとお話できるのが嬉しい。

「その、この地域の植物とかそういうのが載った本を探してまして……」


 あれ、いつもとは違う……。彼は目元が笑ってる。どういう心境なのか。


「では、ご案内します」

 よし、これはチャンス。繊細さんを知るための。少しでも話を長引かせて彼のことを知りたい。もう頭の中には常田くんはいない。


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