技術と智。抽象化のハザマ
つい先程親子をみた。
なんの変哲もないよく居る父と幼い娘の組み合わせだ。
ふと父は娘に言った。
「もう時刻は4時だよ」
それを傍から聞いた私は近くに時計があることに気づいた。
分針までしかないアナログ時計だった。
時刻は4時を知らせていた。
ああ4時だ、時間が経つのは早いなどと私が思っていると、娘は父にこう返した。
「4時じゃないよ。4時10分だよ」
なるほど。確かにその通りだ。
アナログ時計を改めて見ると、時刻は4時10分を指していた。
「おお、もう時計を読めるようになったんだね」
父は娘の言葉を受けて、そう嬉しそうに返していた。
私は親子とは別の方向に歩きながら、手持ち無沙汰にスマホを開いた。
画面の上部には時計があった。
時刻は16:11だった。