強き雨、たき火囲い-4
ミリィは立ち上がると2、3歩動いたところで地面へと倒れ伏す。
悠は咄嗟にミリィと地面との間に滑り込み、ミリィは地面へと叩きつけられることはなかった。
「あ、危なかった……」
悠は額から冷や汗を流し、ミリィの体を抱きかかえる。
体を揺するように支えると再度上着を敷いた地面へと寝かせる。
「……はぁ……はぁ」
苦しそうに血の気の引いた顔で、か細い息を吐くミリィ。
そのミリィの額を、持っていた手ぬぐいで悠は拭いてやる。そしてヴィスラに向かって振り返る。
「まあ、お互いに言いたいこともあるかもしれないけどさ。取りあえず止めないか? 不毛過ぎるだろ、ヴィスラの方が正しくても、さ」
「……この後どうするさね。この娘はしばらく歩けないさね」
「俺が背負っていくよ。それに、だ」
「あァん?」
「あんたも俺も今のこの世界の状況が分かっていないだろう。数百年も外界から遮断されていて、地名の1つすら分かっていないし」
「そりゃそうさね。ただ大体のことはこのアーティファクトがあればわかるさね」
ヴィスラは耳に付けたアーティファクト”万物の声”を見せつけるように手で触れる。
たき火の明かりに照らされて、白金の装飾が煌々と光り輝いていた。
「だけど道案内がいれば確実だ。しかもどっちみち、この子は俺たちから離れられないんだし、それにこの呪いを解くアーティファクトも見つかるかもしれないし」
「……悠、アンタの好きにしなさね。アタシはもうこのことには口を出さないさね」
そういうとヴィスラはたき火の前に陣取ると、うつらうつら頭を垂れ始める。
(まいったな……)
悠はミリィの下へ跪くと、小声でゆっくりとした口調で語りかける。
「なあ、ミリィ。きっと君の呪いを解く方法を探すから、それまで俺たちに着いてきてくれないか? ……ヴィスラが君に言ったことは謝るよ」
ミリィは無言でこくんと頷く。
悠は心の内で、どれほどの言葉で取り繕っても他人を利用しようとしていることに毒気を覚えるのだった。




