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二の手 聖剣と資格

自分のトラウマどころか、一生知ることもなかったであろう悲しい統計まで暴露された光一の心が復活するまでに、軽く一時間ほどの時間を要した。


「うう、僕だって努力したんだ、僕だって・・・」


「すみません、効率良く説明するためにもここはひとつ私の凄さを知ってもらおうと思って調べた内容を上げてみたんですけど失敗しちゃいました。えへへ♪」


可愛く誤魔化そうとするルミナスをみて光一は戦慄した。全知全能に思える聖光神ルミナスの力にではなく、人の心を延々と抉り続けることのできるそのメンタルにである。

これ以上ダメージを受けては二度と戻ってこられないかもしれないと、光一は話を強引に進めた。


「ルミナス様が僕のことを何でもご存じなのはよおぉくわかりました。すごいです、さすがは神様です!」


「そうですか?うふふ、なかなか下界の人と会う機会もないので結構うれしいですね」


「そういえば僕に大魔王を倒す力があるって話でしたよね?」


「違います違います、私は光一さんに資格があると言ったんですよ」


「資格、ですか?」


「そうです、途中で腰を折られてしまいましたが、あの話には続きがあるのです」


「いえ、あそこで止めなかったら、折られていたのは僕の心と人としての最低限のプライドです!」


「そうなんですか?まあそれはいいとして、光一さんのこれまでの人生であれだけの数の人から気づかれない体験をされてきたのに、あなたは決して人を忘れることも、見捨てることもなかった」


「それは、覚えが全くないわけではありませんが、大げさではないですか?」


「いいえ、お年寄りが交差点を渡れずに困っているところを20回以上無視されても根気強く呼びかけて助けたり、捨てられた子猫をの貰い手を他人の何倍も手間をかけて学校中に声を掛け続けて一月後に探し当てたりすることは、当たり前のようではありますが誰にでもできることではありません。何より自分を振った香織ちゃんが別の男子に付きまとわれて困っていた時に、密かに身を挺してやめさせたことも私は知っています。自分が目立つことなど微塵も考えずに人を助けることができる、そんな光一さんの清らかな無私の心こそが聖剣エクスカリバーを使いこなす聖剣士の資格になる、ということなのです」


「聖剣?エクスカリバーですか?」


「そうです!何を隠そう、本来の力を発揮できれば大魔王すら屠れるとされるイヴァルディシリーズの中でも最強の一角に数えられる聖剣エクスカリバーこそ、光一さんがこれから手にするこの世界での相棒になるわけです!そしてお気づきかもしれませんが、この私聖光神ルミナスが世界の調和を保つためにはるか昔の混沌の時代にエクスカリバーを下界に遣わした担当神なのです!」


どやぁ、とキメ顔で言ったやんごとなき神様であったが、歴史を知らない異世界人の光一に自慢してもいまいちなリアクションしか返ってこないことに気づいていない。

最も、光一には女神のキメ顔よりもさっきから気になっていることがあった。


「あの、さっきの話ではそのエクスカリバーを持った最強の剣士がすでに大魔王討伐に向かったんですよね?それだと僕が今ここに呼ばれたことと矛盾が生じる気がするんですけど?もしかして・・・負けたんですか?」


「ゲボァ!!」


「!?な、なんだ今の声は!?何処から!?」


今話題の大魔王ならこんな声を出すのだろうな、というほど重低音の苦悶の声を光一は確かに聞いた。

もちろんこの場には一人の高校二年生と一柱の神様しかいない。


「さ、さすがですね光一さん。ちょっとあなたのことを見くびっていたようです。私からは切り出しにくい話をそちらから聞いてくれたのですから感謝をすべきなのでしょうね。そうです、その通りです。歴代最強とも言われた先代のエクスカリバーのマスターは大魔王の元まで辿り着いたことまでは確認しているのですが、その後大魔王の謎の力でこちらからの干渉が断ち切られ、一切の情報が入って来なくなりました」


「・・・」


話していくうちにあれほど陽気だったルミナスの表情が次第に色をなくしていく様子を見て、光一は合の手を入れる余裕をなくしていた。


「そして消息を絶ってから丸一日経った頃、私のもとに著しく弱体化した聖剣エクスカリバーだけが戻ってきました。通常イヴァルディシリーズが一度マスター誓約を結べば魂レベルで結びつくため、それこそ神意でも下されない限り、単独で神の元に戻ってくることなどありません。断言はできませんが、エクスカリバーとマスターはほぼ間違いなく大魔王に敗北しマスターは死亡したものと思われるのです」


「そ、それは大変ですね」


「だから!あれほど!力の無駄遣いは!するなと言ったのに!!キィーーーーーーーーー!!!!あの(ピー)野郎に(ピー)して二度と(ピー)できないように(ピー)してやるんだった!!あと(ピー)」


「あ、あのルミナス様・・・」


「うふふふふふふふ、光一さん、ちょっとこれからストレス発散するので、それまで寝ていてくださいね」


ッパン!


「あふっ」


何とか気づかいの言葉を絞り出した光一だったが、突如顎に強い衝撃が走ったかと思うと、糸の切られた人形のように膝から崩れ落ちて気絶してしまった。ルミナスはまたも自分の世界に閉じこもってしまったらしく、それから10分ほど聞くに堪えない罵詈雑言を独り吐き出し続けるのだった。

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