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裏の手

ここは魔人ドーギルの襲撃を受けた街からほど近い街道である。そこには唯一の通行者である男にしては長めの黒髪に黄みがかった白い肌、髪と同じ黒色の死んだ魚のような目をした青年が一匹の茶色の毛の犬を連れて歩いていた。


「だってしょうがないだろ、あの状況でペット同伴で止めてくれる宿なんてないよ。次の町まで我慢してよ」


周りに人がいないからいいようなものの、その青年は奇行に走っていた。よりにもよって、相棒の犬に話しかけていたのである。もし街中で同じことをしていれば確実に通報されていることだろう。

さらに奇妙なことに茶色の毛の犬の方もまるで言葉を完全に理解しているかのように吠えているのだった。

いや、ひょっとしたら大道芸人に間違えられて別の意味で人が集まってくるかもしれない。


「ワワン!ワンワワン!クゥーーン、ワン!」


「聖剣士だってバラしたらもっと不味いだろ。そやあ僕だってお腹を空かせたまま町から出てきたくなんてなかったけど、しばらくは道中で獣なんかを狩って自力で何とかするしかないね。一応犬なんだから獲物の追い込みはお手の物だろ?」


「ガウッグルルルルル!!」


「わあっ!?悪かった、悪かったよお犬様」


「ガウッ!」


「様付けすればいいってものじゃない?わかったよ、こうよべばいいんだろ、」




                   「エクスカリバー」




「ワフ!」


「まったく、どうせ聖剣エクスカリバーの仮の姿が柴犬だなんて誰も信じやしないだろうけど、どこから秘密が漏れるかわからないんだから人前ではポチって呼ぶことにしたじゃないか」


「ガブッ!!」


「ぎゃっ!?ごめんなさい、謝るから!甘噛みでも怖いものは怖いよ。そうだったそうだった、ルミナス様を表す光の一字も入ってるからコウジロウって名前にするって僕が言ったんだったよ。どうせ仮の名前なんだからどうでも・・・!!わかったから!もう忘れないから!」


「ワン!!ワフフ、ワンワワン!」


「さっきの戦いの反省会って?」


「ワフン」


「そうだな、本当はあんな派手な登場はしないでサクッと奇襲で終わらせたいんだけど、正々堂々じゃないと聖剣士として後ろ指さされたりするし、一番の目的が果たせないから仕方ないとして・・・

武器破壊がセコイ?仕方ないじゃないか、今は使える光の量が限られてるし、相手の力を利用して少しでも節約しないと。対魔法としてもそうだけど、相手の攻撃をそのまま跳ね返すっていうのは今回完全に意表を突けたから基本戦術として外せないよ。」


「ワウ、ガウガウ!」


「フラッシュグレネードもどきが卑怯だって?市街戦だから一般人に被害を出したくなかったし、アレをまともに食らったら大抵の生き物は動きが止まるから便利なんだよ。何と言っても一番の利点はエクスカリバーの特性のお陰で邪悪な者にしか影響がないから、普通の人から苦情が来ないし何をしたのかバレないところだよね。ルミナス様には迷惑をかけないと思うから勘弁してよ」


「ウウウゥゥゥゥ」


「そもそもこんな回りくどい戦い方をしなきゃならないのも、せっかく町を救ったのに褒美をもらえないのも、教会からまともに支援を受けられないのも、先代の聖剣士と君がアホな戦いをして大魔王に敗れたせいじゃないか」


「ワフン!?クウウゥゥゥゥゥン・・・」


先ほどまで威勢の良かった犬だったが、コウイチの愚痴を聞いた途端、しおれた花のように元気がなくなった。

ちょっと言い過ぎたかなと反省しかける光一だったが、ここは一度きっちり現状を自覚させないと、と思い直し負け犬に追い打ちをかけた。聖剣の一撃も真っ青なほどの苛烈な追い打ちを。


「全く勘弁してほしいよ。斬ると剣身が粉々に爆散して消滅する聖剣なんて」


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