一の手
ふと思いついて書いてみました。主人公も作者も行き当たりばったりですが頑張っていきます。よろしくお願いします。
「ゲギャギャギャギャ、壊せ、燃やせ、奪い尽くせええぇぇ!!」
「魔族の襲撃だー!みんな逃げろー!」「門が破られてるぞ!あれは、まさか魔人!?」「衛兵では歯が立たん、早く騎士様を呼ぶんだ!」
とある異世界のとある国。その中の中規模の、とある町でよくある魔族の襲撃が起きていた。
よくある話「ではない」部分は、これまで人類と魔族の勢力が拮抗していたのだが、魔王の中の魔王である大魔王が誕生したという噂が世界中を駆け巡っていることと、次第に人類圏が脅かされるようになったことだろうか。
この町も決して魔族の勢力圏から近くはないのだが突如として200程の魔族の部隊が侵攻、しかもその中には魔族の中でもエリートであり、上位種でもある魔人がおり、部隊を指揮していた。彼らは進化の影響か、普通の魔族より姿かたちと身長が人間の姿に近くなるため、誰が見ても分かるような外見をしていた。それだけに魔人を発見した人々の絶望は深かった。
「見ろ、騎士様が到着なされたぞ!」「騎士様ーー!!」「魔族なんかやっちまってくだせえーー!!」
無論、この国もただ傍観していたわけではない。魔族に対抗しうる戦力として国中から選抜した騎士を要所要所に配置して魔族の襲来に備えていたのだ。
「聞け、魔族ども!私の名は疾風の騎士エンゾ!!これまで戦った魔族どもはすべて私の風魔法と速さの前に敗れ去った!!貴様らにもその力存分に味合わせてやる!!」
そう宣言した騎士エンゾは魔族の部隊へと単身走り出した。
「騎士様、さすがに一人で突っ込まれては!!」
近くにいた衛兵が止めるのも聞かずエンゾはそのまま走り続け、次の一瞬で魔族の最前列を薙ぎ払った。
「疾風剛撃!」
ゴオォグウウウアアアァァァ!!
「ギャアアアアアアァァァァァァ!!!!」
「すげえ、あれが騎士様の力か!」「魔族が手も足も出なかったぞ!」「キャーーーー!エンゾ様ーー!!
「さあ魔人よ、今なら退却も許してやる。だがもしこれ以上やるというなら容赦はせんぞ!!」
「ゲギャギャギャギャ!!笑わせてくれる!身の程知らずが、お前こそ大人しく降伏するなら配下に加えてやってもいいぞ」
そう言って現れたのは豚の頭を乗せた2メートルを超える大男だった。
「おのれ!騎士を愚弄するとは許せん!あの世で後悔するがいい!疾風尖突!!」
再び騎士エンゾの姿が消え、今度は強風が魔人の元へと叩きつけられた。だが、
ドン!ズザザザザザザッッッダン!!
「グハッ!!ぐああああああ!!!」
ダメージを受けたのはエンゾの方で、魔人は先ほどの位置から全く動いていなかった。
「ゲギャギャギャギャ!!なかなかの攻撃だったが、大魔王様より直々に新たな力を賜ったこのドーギル様の敵ではないわ!ギャッギャッギャッギャ!!」
「キャアアァァ!エンゾ様ーー!」「何ということだ、あの噂は本当だったのか」「もう駄目だ、この町は終わりだ」
絶望に支配され始めた人々は今からでも逃げることを考え始める。
「ゲギャギャ、人間ども、逃げようなどとは思うなよ。そんなことをすればこの男の二の舞、だぞ!」
そう言って魔神ドーギルが口から放ったのは光と見まごうほどの炎の柱。その先の立ち上がろうとした騎士エンゾを飲み込んだかと思うと、一瞬で彼の鎧ごと消し炭にした。
「ああ!騎士様が・・・」「確か騎士の鎧には耐魔コーティングがしてあったはずでは」「あんなの敵いっこない」
唯一の希望が打ち砕かれた衛兵隊は武器を捨て、町の住民は逃げることも許されずに町一番の広場に集められた。
「ゲギャギャギャギャ、全員よく集まってくれた。普段ならこのまま魔族の領域へと連れて行き奴隷にするところだが、今回この町の方々にはさらなる魔人誕生のための血の生贄になってもらうことにした!!光栄に思うがいい、ゲギャギャギャギャギャギャ!!!!」
「な、何だと!?」「おかあさーーん!!」「やめろやめてくれーーーー!!」
死よりも酷い結末に人々はパニックに陥るが、すでに武器も取り上げられ逃げ場もない。諦め始める者が続出する中、一人の男の子が母親にある方向を指さして尋ねた。
「ママ、あそこ、何か光ってるよ」「え、何あの光、太陽はもっと上にあるのに」
「ドーギル様!教会の屋根の上から光が」「ゲギャ?ま、眩しい!?」
眩くも清らかな光に包まれたその影はこの場の全員に発見されたのを見計らったのか、立っていた協会の屋根から落下、何のダメージも感じさずに人々と魔人ドーギルの間に着地すると高らかに名乗った。
「光撃の聖剣、エクスカリバー推参!!」