空に飛ばす殺人鬼
散々である。勉強が手につかない。
テレビは、封印しようと考えて、リモコンの電池を抜いておく。
再び、勉強机に向かう輪であった。
ピンポン!
家の呼び鈴がなる。
今の時間は、親は共稼ぎで留守である。
兄弟もいないので、結果的に……居留守を使う。
ピンポン!ピンポン!ピンポン!ピンポ……
ああ!しつこい!
インフォーン越しに対応する。
「どなたでしょうか?」
旧式のためモニターは、付いておらず音声だけである。
「あれれ?いるじゃん。なんで出ないの?ドア開けて」
馴れ馴れしい女性の声が聞こえる。
「ん?要件は?」
「要件?うふふ。君の能力に関してかな?」
え?バレた??
「な、なんの事でしょうか?」
「あれれ?ニュースの消えた男の側にいて、刑事が見張ってる人物って君しかいないじゃん。君じゃないの?」
「まったく、心当たり無いんですが?」
「……嘘でも頭に来るから殺すし……本当だったら不要品で、殺していいし。なんだ、簡単だ」
ガクン!!!
地震?!いや違う!!
凄い落下してるような無重力状態になる。
何事だ?
無重力状態で、窓まで、なんとか行くと見えた景色は、落下する一戸建てだった。
家ごと空中から落下している。
理解できないが地上が迫る。
混乱して何も考えられなくたった!
これが良かったのか?目を瞬きしたら家が消えた。
私一人で落下中。
墜落死?!
どうして?何故?と考えている暇がない!先にこの状況を脱出しなくては!!
周囲で落ちても、助かるクッションの様な物を探す。
はっきり言って、そんな都合が良い物などなかった。
これって、死ぬんじゃないか?
今まで、テスト的に、消した物で取り出していない物を思い出していき、飲み物と食料だけと言う事で、何もない絶望感を味わう。
だが、何もないで、気がついた。
ギャンブルだが、足掻いてみよう。
遠くを見て目を瞬きしまくる。
迫り来る地面を見て目を瞬きをした。
地面から身体を持っていかれるほどの強風が、吹き荒れる。
何回も上向きに凄い速度で進む空気の塊を足元に出現させて、落下速度が低下していき、ふんわり着地に成功する。
遠くの空気を消し去って、私の下から上に向かって物凄い速度で出現させたのだ。
消した物を出現させる時に、速度は自由だから出来る技だ。
俺って風使いじゃん!!!
新たな応用力ゲットだぜ。
で、目の前に同い年ぐらいの160cmほどの女の子が立っていた。
赤いドレスを着ている……え?!なんでドレス?
金髪で、髪がくるくるしてるし目が青い……外人さん?
「あれれ?なんで平気なの?家ごと空に飛ばしたのに家は消えるし、ふんわり降りて来るし?お前、それで能力ないなんて言うか?」
スカートからナイフを二本出して投げてきた。
目を瞬きして消し去る。
「え?」
女の子が、ナイフが消えたので、キョトンとしている。
「インターフォンに出たのは、お前か?」
聞かなくても声が同じなので、わかっていたが聞いてみる。
一度、目を閉じて開ける。
背後の空き地になった場所に、家を戻す。
ズドン!
女の子が音で振り向くと、家があるのを見て笑いだす。
「うははははぁ、うそぉ。君すごい!凄すぎる!?
能力が、まったくわからないけど、ありえねえぇ。合格!満点だよ!」
女の子の背後から銃を持った二人の男が、まさに発砲しようと、してるのが見えた。
思わず瞬きしてしまう。
女の子が消えた。
「な!!遅かった!」
「跳んだのか?油断すると空に飛ばされるぞ!」
周囲を警戒しながら2人が寄ってくる。
「三根輪君だね?保護命令が出ているご同行お願いする」
刑事だったようで、警察手帳を出して、挨拶してきた。
「へ?勉強したいんですが....」
刑事の後ろに見える、傾いた我が家を見て、輪は頭を抱えるのであった。
--場面はクルリと変化する--
輪が、取調室に連れてこられて、説明を受けていた。
「君が異能者であると思うのだが、そうなのか?」
目の前に高級そうな背広を着たエリート眼鏡の鈴木が質問する。
「いや、異能者って何ですか?私は無関係ですよ」
この後に及んで、ごまかしてみる。
「いいのか?お前を襲ったのは、柊花芽利と言う殺人鬼だぞ。このまま戻ったら確実に殺されるぞ?」
鈴木が輪を説得する。
「え?頭はおかしそうだったけど、そんな人物には....見えるかも?」
だが、彼女は思わず消しちゃったので、取り出さない限り襲われる心配は、ない。
取調室のドアが開いて、セラー服の美鈴とチャラいカッコの堂本が入ってきた。
「コイツっすか?」
「あら!同い年?いや一個上だっけ?」
「運良かったわね、花芽利は、異能者を見つけると楽しんで殺したり、仲間に入れて虐殺を始めたり、すごいのよ。久しぶりに、助かった人を見たわよ」
「で?コイツの能力なんなの?」
「まぁ、焦るな。先ずは自己紹介から始めよう。
私は鈴木輝だ。
セーラー服の彼女が櫨美鈴だ。
馬鹿みたいな格好をしてるのは堂本進だ」
「馬鹿とはなんだ!このクソ眼鏡!」
「あぁん?お前の格好のどこが、まともだ?」
部屋の気温が一気に下がった。
「「わかった!わかった!」」
鈴木と堂本が、櫨に謝った。
室温の変化と櫨と何か関係があるようだ。
「で?君は、どんな能力があるの?」
「教えないとダメなんですか?」
「ぬ!ん.....そう言われれば、任意でしか聞けないかな...」
櫨が、口元に指を当てて、考える仕草をしている。
「殴って聞けば早いっしょ」
「......お前は、わざと言ってるのか?」
また、鈴木と堂本の口論が始まりそうだ。
「とにかく、私も訳がわからないので、どういう事か説明お願いします」
「良いわよ、三根輪君。私の事は、美鈴で良いわよ」
美鈴から説明を受けた。
日本には、10人の危険な異能者がいて、事件が世間には出ないように情報操作している。
その内の1人が柊花芽利であった。
彼女の能力は、自分を含めた物体転移。
得意技は、空に転移させて落下させて殺す。
触った物をかなりの大きさまで転移出来る。
我が家は、まるごと、上空に転移させられたという訳だ。
両親になんて言えば良いのだろうか?
「ご両親には、既にこちらの者が説明に行っている。運良く抽選で、国の援助奨学の【無料で泊まり込み予備校】に当選して予備校合宿に夏休みは、通っていると言う事にした。家の方は、こちらにいる能力者で、なおせる者がいるので、なおしている」
「え?本気で、その予備校行きたいんですけど!」
鈴木の強引な辻褄合わせに驚き、突っ込みを入れる。
「何言ってんだ?お前自分の状況わかってるのか?命と勉強どっちが大事だよ!」
「本当よ!花芽利が、捕まるか倒されるまで、勉強させないわよ」
堂本と美鈴が、怒っている。
私が確保してるから、永久に捕まえられない。
勉強出来ないじゃん!!
正直に言うべきか……
「花芽利なんですが、既に私が捕縛してるんですが?」
「「「は!?」」」
「正直に言うと、私の能力は、ゲームで言うとアイテムボックスみたいな感じでして、花芽利って言われてる人をしまってしまった感じです。何処で出しましょう?」
鈴木と美鈴と堂本が、呆然としている。
「で、でわ……駄目だ。まったく捕縛方法が浮かばない。まさか生きたまま捕まえる奴が出てくるとは、思ってもなかった。何しろ捕縛しても捕縛器具をテレポートすれば自由になるし、閉じ込めてもテレポートされてしまう。現在は、処刑命令が出てる一人だ」
鈴木が、頭を抱える。
うぁ、可愛そうと思う感情が湧いてしまう。
「殺さない方法は、無いんですか?」
「うむ、司法取引して、彼女が殺しをやめて公安の管理下に入れば可能かもしれないが、快楽殺人鬼だから難しいと考える」
「お、お前すげーな!俺の舎弟にしてやる!公安入れよ!」
「今、私と話してるだろうが!会話に割り込むな!」
「なんだよ!悩んでるからリラックスさせようとしただけだろうが!」
鈴木と堂本が喧嘩を始める。
「君は、なんで殺したく無いの?花芽利に殺された人は、100人単位よ。彼女は、すぐに殺すべきよ」
美鈴が説得をしてきた。確かにそうかもしれないが、偽善かもしれないが、私の中の正義感のせいか、彼女も詳しく知らずに殺す事に、ためらいを覚える。
「一回私が説得してみます?駄目なら処刑という事で……」
「「「どうやって?」」」
--場面はクルリと変化する--
長谷川涼子
31歳 女性
170cm
自衛隊特務機関の局長
独立した行政機関であり、自衛隊と内閣府に絶大な権限を保持している。
バリバリのキャリアウーマンで自衛隊にいる4人の能力者を管理している。
性格は、官僚的であるが、軍隊の硬い思想の方面が強い。慈悲や義理など一切通用しない非常な選択を鼻歌まじりでする人。
彼女の能力は、相手の危険指数を色で読み取る能力。
この能力のおかげで、犯罪者をすぐに発見可能である。
輪に関しては、初めて見るような七色を見てしまい警戒している。
花芽利は、黒色に見える。
鈴木と堂本と美鈴は、黄色。
通常の殺人者などは、赤色に見える。
戸尾洋子
19歳 女性
身長167cm
自衛隊特務機関の能力者の1人
ポニーテールの日本人
美人ではないがかわいい。胸は..あまりないために少しコンプレックスをかかえている。
普通の女子高校生だったが、18歳の時に能力が発動して、鈴木の勧誘で自衛隊に入る。
性格は、堅物で頭が固い。嘘つきが嫌いであり、生まれたから嘘をついた事がないのがプライド。
能力は、有言実行。会話中に彼女が承認すると、それを話した人物は言ったことを自分が可能な範囲で無意識下で守る。
斉藤紀夫
22歳 男性
身長179cm
自衛隊特務機関の能力者の1人
筋肉馬鹿でボディービルダーのような肉体を誇示している。
性格は、脳筋である。趣味は筋トレ。
能力は、肉体強化で、出力10倍と強度100倍を可能にする。
能力発動時に弾丸とナイフを防げるが、強度があがるためか動きが遅くなる欠点がある。




