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弱虫バトン  作者: oga
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第三話

この小説はリレー形式で掲載していきます。


作者 偽貍狸

「え…先生、部員今からなんですか…?」


「あぁ!そうだ!お前はすっごく人望あるからなー!部室は用意したからあとは勝手に頑張っとけー!」


え…丸投げですか先生…?


人望なんて、ついこの前崩れ落ちてしまったばかりだったのに。こんなことを言われてもぼーっとうなづくだけの私は、冷房の効いた職員室を後にした。


「えー、と、《総合学習室》か…?」


私の前通っていた中学は、こじんまりとしてクラスが2つしか無いような所だった。

そのため、学年全員の仲がとてもいいのが取り柄だったのだが、何より………迷うことがなかったのだ!


現在、慣れない広い校舎に挙動不審に歩き回っている私が探しているのは、たった1人の駅伝部の部室だ。

本音を言うと、別に運動部に広い部室はいらない…と言うより、着替えは階段の裏でもできるので部室など必要無いと思う。掃除も面倒だし…


「ここだっ!」


ガラガラガラッ………………………


「え、あれ…?」


「え、だれ…?」


教室表示は無かったが、地図を見た限り絶対ここだ、と思い切り開いたドアの向こうにいたのは、真っ赤な着物の似合うお団子頭の女の子だった。


「えぇと、誰ですか?」


「へ!?え、私れすか?怪しい者じゃありんせん…忽那と言うもんだす…?」


緊張と動揺で思い切り噛んでしまい口調も変なものになってしまった。その子は訝しげにこちらを見ている。


「何でここにいるんですか?」


まずは訳を説明せねばと、必死に理由を伝える。


「え、私は駅伝部の部室を探してて…って言っても今日できたばっかで部員も1人で寂しい状態なんですけど、それでここかなぁって…でも、違います、よね?」


「あ、ここ茶道部です。」


言われてみれば、この畳も着物もお茶の香りも、茶道部のものだ。


「あの、この地図で、ここに行きたいんですけど…」


そう言って渡された地図を見せる。


「え!こ、ここ正反対じゃないですか、地図も読めないんですか?」


「はは…そ、そうなんですか…」


長年運動にだけかけてきて、受験もソフトの推薦で入学したので勉強の方は全くの自覚のある私だったが、まさか地図も読めなくなっていたとはびっくりした。


「あ!ありがとう、じゃあねっ」


部活中に迷惑だったと思い、お礼を言ってドアを閉めようと…


「あああ、あのっ…」


「?」


ドアが閉まる寸前、大きな声に呼び戻された。

さっきからの会話はおしとやかな静かな声で聞いていたので、この子がこんな声を出せたということに驚いてしまう。


「え、ええと、駅伝部、かなんかでしたっけ…?駅伝って、走るんですよね、えっと、部員がいないみたいなこと言ってましたよね…え、あの、わたくしが、別に部員の足しになってあげても…ええ、と…」


一息に話し終えて、彼女は少し恥ずかしそうに下を向いた。


「え…!」


「え、え、ほら、やっぱり今『茶道部が走るとか…なにそれ』とか思いましたよね!?そう、それなんですよ、わたくし、今年の体育祭のリレーって推薦じゃ無いですか、でも、みんなわたくしのタイムも見ずに『茶道部だから』って一蹴するんです。な、なので…」


「そう!そうなんだね!駅伝部、来てよ!ぜひ来てよ!茶道が大好きなら、辞めてもらわなくても構わないし!ね!?」


思わぬ発言に、嬉しくてついテンションが上がってしまう。

着物姿の彼女の手を引いて駈け出す。


………あれ?この子私が全力で走ってるのに、ちょっとついて来れてる…?

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