表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
弱虫バトン  作者: oga
21/79

第二十話

作者 oga

「うわあああーっ!」


「ふわぁ~」


 ドゴオオオン……

私は勢い余って歩いていた女の子に飛び蹴りを見舞ってしまった。


「ご、ごめんっ、大丈夫?」


 しかし、ピクリとも動かない上に、腕が変な方向に曲がっていた。


「せ、先生ぇーっ」





「腕、折れてたわよ」


 保健室の先生はそう言った。


「……」


 あの子は萩野詩織。

歩いてるときもずっと本を読んでいるから、私は彼女にブックマークというあだ名をつけていた。


「ブックマークは、大丈夫ですか?」


「まあ全治1ヶ月ってとこね」


 ……やってしまった。

腕が折れたら本が読めない。


「病院の場所、教えて下さい」





 私は他のメンバーに事情を説明して、病院にやってきた。

受付でブックマークのいる病室を訪ね、そこに向かう。


「ここか……」


 萩野詩織、と書かれた札を確認してから中に入る。

腕に包帯を巻いた、痛ましい姿のブックマークがそこにいた。


「……腕、大丈夫?」


「……」


 心を閉ざしてしまったのか。

全く目を合わせてくれない。

やっぱり、本が読めなくなってしまったからか……

それでも、このまま引き下がる訳にはいかない。


「どんな本読んでるの?」


 机の上に置かれているのは、シェイクスピアの格言、という本だ。

ページをめくって読んでみる。


「今後のことは、ぐっすり眠って忘れてしまうことだ! だって。 ぷっ、もうちょっと悩み聞いてくれてもいいじゃんね?」


「……」


 しまった。

シェイクスピアをディスってどうする。


「あ、そうだ! ブックマークも駅伝出ない? 腕は1ヶ月で治るらしいから、大会には間に合うよ!」


「……」


 私は何を言っているんだ……

こんな時にまた部員集めをしようとしてる。

それに、誰彼構わず部員に誘うのは良くないと思い知ったばっかりだったのに。


「詩織、ごめんっ」


 私は土下座をして、病院から出ていこうとした。

その時、初めて詩織が私に言葉をかけてきた。


「……読みかけの本が読みたいなぁ~。 アリスちゃんに朗読してもらいたいなぁ~」


 ……朗読!?

私、漢字苦手なんだけど……




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ