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弱虫バトン  作者: oga
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第一話

この小説はリレー形式で掲載していきます。


作者 oga

 私の名前は忽那(くつな)アリス。

今までソフト一本、部活こそ私の青春! そんな風に思って過ごしていたのに、突然春が訪れた。

彼氏ができたのである。


 中学最後の大会で優勝、その直後に告白された。

相手は私と同じソフト部で、キャプテンの本田翼。

私も結構なソフト馬鹿だったけど、翼も負けず劣らずのソフト馬鹿で、後で聞いた話によると、完封で勝利した最後の試合を見て惚れてしまったらしい。


「一球だけ付き合ってくれ」


 教室でそう言われ、放課後、私たちは校庭にやって来た。


「もしオッケーなら、受け止めてくれ!」


 翼が投球フォームに入る。

私はわけが分からずその姿を眺めていると、こう叫んだ。


「お前のことが、好きだーーーーーーっ」


 不意を突く告白に、私は頭の中が真っ白で、条件反射みたいにそのボールをキャッチしてしまった。

はじめは騙されたみたいに感じていたものの、「まあ、翼ならいっか」と思うようになっていた。





 

 それからしばらくして、私たちは私立平盆高校に入学した。

この学校はソフトがめっぽう強いで評判の学校だ。

(他の部活は弱かったけど……)


 もちろん、ここでもソフト部に入り、エースピッチャーとして活躍するつもりだった。

ところが入って早々、私は現実を思い知らされる羽目になった。


 入部した初日、1年は適正ポジションを決めるためのテストを受けることになっていた。

バッティング、守備、最後にピッチングをコーチが確認する。


(びっくりさせてあげるわ……)

 

 私は普段抑えている力を解放して、全力のピッチングを披露した。

捕手目がけて投げた球の球速は103キロをマーク!

この球を打てるバッターは中学の時にはいなかった。

しかし、コーチ陣は眉ひとつ動かさず、次のピッチャーに投げるよう指示を出した。


(あれを見て驚かないなんて……)


 次の瞬間、驚いたのは私の方だった。

後続のピッチャーが投げた球の球速が105キロをマークしたのだ。


(……うそでしょ)


 この学校では、100キロ台を投げる投手などザラだったのだ。

結果、私はレギュラーにすら入れず、補欠入りが決定した。






 私は翼にはそのことを言えず、帰ってからもトレーニングに励んだ。

焦っていた。

そして、完全なオーバーワークだった。

毎日15キロ走り、重めのダンベルで翌日筋肉痛になるまで鍛えた。

無理なトレーニングを続けた結果、肩に違和感を覚えるようになった。


「もしこれ以上無理にトレーニングをしたら、肩壊れますよ」


 医者にそう言われ、私は愕然とした。


(もう、終わったかも……)


 




 部活も休みがちになり、3か月たった。

翼からも問い詰められた。


「お前、何で部活出てねぇんだよ!」


 電話も無視するようになり、次第に塞ぎ込むようになった。

ある日、下校している最中、歩道橋の上を歩いていると、眼下に目を疑うものが映った。

翼が自転車を押しながら誰かと平行して歩いている。

その相手は、ソフト部のエースピッチャーだった。

歩道橋と道路が交差する地点で翼と目が合った。


「……」


 私は無視された。

気づいているのに焦る様子もなかった。

私はとっくに振られていた。






 






 


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