第十三話
作者 偽貍狸
「それは─────」
「─────……………………」
簡易ステージに立ちマイクを持った私に、いつの間にか増えたギャラリーの視線が注がれる。
私そういうの、正直苦手なんだけど…
「……な、何だっけ…………………」
永遠にも感じられる緊張の沈黙の後に口から出てきたのは馬鹿みたいな台詞だった。
この場の緊張やさっきの安堵のせいか、喉まで出かかった言葉が止まってしまったのだ。
隣に立つイエモンちゃんに助けてと目で訴えるが、生憎驚いて固まっている。
冷静なパンダちゃんでさえも「運動神経が良くて、天然……──」と、よく分からないことを呟いていて…
「え、えええええと、あ!じゃあお茶ジュースを一本プレゼントします!」
「「は?」」
息を合わせたようにぴったりと否定されてしまった。
否定、というかバッシング?
見えすぎるくらいに周りが見えるこのステージで、私は完全にパニックになってしまった。
もう、どうにでもなれ──────
「えええええええじゃあ陸上部の夏の合宿参加?!」
ちらりと横を見ると2人も渋々頷いてくれているので手元のメモ帳に『陸上部夏の合宿参加チケット』と書くと横からパンダちゃんにマジックペンで『強制』と書き加えられた。
────ついでに、ほっぺたに『ばか』って。
「まあ、そーゆーことなんで、はい。」
不満げなエンジョイとでんじろう、ついでにエミリーにもチケットを渡す。
エミリーだけは笑顔で受け取ってくれた。
────そりゃ男子たちも惚れるわ。




