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出店する為に 2

 翌日私は、早速冒険者ギルドへ行き、受付で依頼に関する説明を受けた後依頼を出し、その依頼を受けてくれる冒険者さんを、ギルド内に併設されている酒場でひたすら待ち続けた。

 酒場といってもそのメニューは豊富で、私は当然お酒ではなくソフトドリンクと軽く摘まめる軽食を注文した。

 それらを口に運びながら、私は頻繁にチラチラと受付と掲示板に視線を向ける。

 焦っても仕方ないと頭ではわかっていても、ちゃんとスキルで綿を入手できるか否かがどうしても気になって、早く誰か依頼を受けて来てくれないものかと気が急いてしまう。

 依頼は、受付にて詳しい内容と、その内容に見合った報酬額を受付の人に伝えると、直後にそれは依頼書として掲示板に貼られ、冒険者さんがその依頼書を見て受ける依頼を決め、依頼書を受付に持って行くという手順で進行していくらしい。

 私は"内容に見合った報酬額"という点で頭を悩ませたが、それに気づいた受付の人が妥当な額を提示してくれたので事なきを得て、スムーズに依頼を出せた。

 だからあとは一刻も早く、冒険者さんが私の依頼を受けてくれれば、スキルを試しに行けるんだけど……。

 掲示板と受付、そしてテーブル上の軽食へと忙しなく視線を動かし続けて、約一時間。

 再び受付のほうを見ると、一人の青年が酒場に向かって歩いて来るのが視界に入った。

 青年はどんどん私に近づき、やがて私の数歩手前で足を止める。

 そしてにこやかに微笑むと、口を開いた。


「こんにちはお嬢さん。お嬢さんが、ユイ・クルミさんかな? 魔物のドロップ品で入手したい物があるから、代わりに魔物を退治してくれる護衛兼同行者を求むって依頼を出した、依頼主の」

「あっ、は、はい! そうです! 私がそのユイ・クルミです!」

「そっか、良かった。その依頼、俺が受けたんだ。俺はシャーウ・レオシィ。よろしく」

「あ……ありがとうございます! よろしくお願いします!」

「ん、こちらこそ。さて、じゃあ早速出掛けようか。ドロップ品が欲しいんなら、魔物が多く生息してて遭遇率も高い迷宮に行くのが一番かな。結構歩くけど、近くに一つあるから、そこへ行こう」

「は、はい! わかりました!」


 シャーウさんに促され、私は席を立って歩き出した。

 隣に並んで歩を進めながら、私はちらりとシャーウさんを観察する。

 シャーウさんは明るいオレンジ色の髪に、綺麗な翠色の瞳の、優しい雰囲気のお兄さんだ。

 美形やイケメンとは言えないまでも、普通に格好いいくらいの容姿をしている、と思う。

 どんな冒険者さんが来るかわからなくて実はちょっぴり不安だった身としては、厳ついおじさんや粗野な感じのお兄さんが来なくて良かったとホッとする。


「……ユイ・クルミさんは、迷宮に行くのは初めて? 怖いかい?」

「え?」

「それとも、冒険者を雇うのが初めてで、緊張してるのかな? だから少し強張った顔で、俺を見てるのかな?」

「えっ、あ、す、すみません! ジロジロ見るなんて、失礼ですよね……!」

「いや、構わないよ。そういう人も結構いるから、もう慣れてる。君の視線に悪意はないしね。問題ないよ」

「あ……すみません、ありがとうございます。実は、仰る通り、迷宮も、冒険者さんを雇うのも初めてで。優しそうな人で良かったって思ってたんです」

「ああ、やっぱりね。大丈夫だよ、依頼はきっちり遂行する。護衛として、君には絶対怪我はさせないから、安心して」

「あ……はい。よろしくお願いします」


 シャーウさんは穏やかな、そして真摯な声色で、真っ直ぐに私を見て言ってくれた。

 その様はこの人は信頼できると思わせるもので、私は安心して初めての迷宮に臨む事ができたのだった。


★  ☆  ★  ☆  ★


 結果として言えば、綿を入手する事には成功した。

 やっぱり私のこのスキルは、たとえこの世界にない物でも、私が知っている物になら変換できるようだ。

 これで、綿に関しての問題はクリアした。

 けれど、新たな問題が浮上した。

 それは、入手の量……いや、入手できる確率だ。

 スキルを覚えたての状態である私は、その内容である"任意の物に変換する"確率が非常に低いらしい。

 実際、午前中から夕方まで迷宮に籠り、シャーウさんに魔物退治を頑張って貰っても、入手できた綿はたったの三つ。

 綿の大きさはマチマチで、今回入手した綿だと手のひらサイズのヌイグルミなら二つ、それ以上のサイズでも、やや小さいヌイグルミが一つ作れるかどうか、というところだろうと思う。

 商品として店に並べる量のヌイグルミを作るには、迷宮に日々通い、綿を入手しつつスキルを磨いて確率を上げる必要がある。

 同様に、人形変化のスキルもそうだ。

 このスキルに関しては、今日は一度も成功しなかった。

 シャーウさん曰く、この手のスキルは相手を弱らせてからでないと使用しても効果はないらしい。

 しかも、スキルを使う対象より自分のほうが強くないとまず成功しないという。

 この強さとは力ではなく、例えばレベルが上だったり、能力が優れていたりする事を指すらしい。

 その言葉を聞いた私は、はて、昨日見たステータスには能力は記されていたけどレベルなんてなかったような気がするけど……と疑問に思って首を傾げ、再びステータスを開いた。

 すると。


 ユイ・クルミ

 レベル 1

 職業  雑貨屋店主(予定)


 という項目が追加されていた。

 これを見たシャーウさんは、『へぇ、ユイ・クルミさんは雑貨屋さんを開くのか。なら店主としてお店の為に頑張っていれば、レベルは上がっていくよ』と言っていた。

 店主として、お店の為に頑張る。

 店舗が建設中の今、私が頑張れる事といえば、やっぱり商品を用意し、この世界にヌイグルミという存在を広める事だろう。

 つまり、綿を入手し、生きたヌイグルミをGETする事、に戻るのである。

 しばらく迷宮に通う事が決定した瞬間だ。

 そしてその為には、やはり私の代わりに魔物と戦ってくれる護衛が必要なんだけど……。

 昨夜考えた通り、迷宮に通う度に冒険者さんを雇っていては赤字になるだろう。

 店舗が完成して店をオープンさせても、この世界にはその存在が知られていないヌイグルミが、順調に売れるようになるまでどれくらいかかるかもわからないから、王太子様に貰ったお金は節約しながら使わなきゃならないかもしれない。

 となると……冒険者さんではなく、お店の用心棒を兼ねた護衛を雇ったほうがいいかもしれない。

 給料は…………応相談で。

 ああ、でも、私に人を見る目なんてあるかなぁ?

 用心棒として雇ったのに、実は店のお金目当てで、それをこっそりくすねるような人でした、なんて事になったりしないかな?

 もしくは、いつの間にかお店乗っ取られたりとか……。

 こ、困った、これは重大な問題だぞ?

 こういう時に、周りに相談できる人がいないというのは厳しい。

 今更、王太子様を頼りに王都に戻るわけにはいかないし……そもそも保身の為にあそこにはもう近づきたくないし。

 はあ、困ったなあ、何かいい案、ないかなぁ?

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