2
で、そんな俺の前に奴がいる。
奴の前には、ガッチリ系の偉そうな人物が。
王様って奴か?
そして俺らの足元では、輝きを潜め始めた幾何学模様の何か。
分かるか?
ほら、あれだあれ。
“召喚陣”とか言うヤツだ。
ファンタジー小説に良く出てくるアノ定番のシーンだな。
全くもって捻りってもんが無い、テンプレートな展開だ。
周りの状況だって、まさにそのまんまじゃねぇーか。
全身を包み隠すローブを着用した3〜40人の人物。
教鞭位のワンドを握り締めたまま、垂れ下がっている手に力は無い。
ついでに活力も無さそうだ。
ここは、異様に蒸し暑いんだが、その影響か?
あのローブの中は、絶対に蒸し風呂状態になってるぞ。
…まぁ、どうでもいいんだがな。
彼らが倒れようが、気絶しようが俺には関係無い話だ。
まぁ、頑張り〜。
ローブの集団から目を反らせばマタ違う群れが目につく。
偉そうにふんぞり返って俺らを見下してる人物、20人前後。
内、タヌキ腹、15人前後…全体の3/4程がメタボだ。
奴らは袖無しシャツとショートパンツ姿で涼しげな様子。
だが、だがな、非常に見るに耐えないんだよ。
周りを良く見てみろ、誰もが直視を避けてるだろ!!
高貴なオーラで近付き難い訳じゃねーぞ!!
勘違いすんな。
タヌキ腹と剛毛脛毛の森にギトギト油っぽい顔がキモイだけなんだぞ、お前ら。
しこたまキモイ、物陰からコソッと現れやがるGに匹敵するキモサだからな!!
とにかくキモイ!!
キモイんだ!!
お前らこそ、長衣の衣装が必要だ!!
遠慮無くくるまってろ!!
ラッピングは無料サービスしてやる。
そしたら俺が宅配便で世界の果てに送ってやるぞ!!
絶対、送ってやる!!!
後は、奴の正面にいる王冠を着けたガッチリ系のオヤジ。
あれが王様って奴だな。
間違い無さそうだが、酷く残念な王様だな…。
全く似合って無いぞ、その王冠。
テーマは頭にお花が咲いちゃったか?
もう少しデザインを考えてもらえ。
それは、いくらなんでも、あんまりだからな…。
それにしても超絶美形の奴を見て、随分と間抜けな顔を晒しているんだが、気が付かないのだろうか?
やっぱり気付いて無いんだろうな…。
王様の残念具合、半端じゃねーな。
その王様の左右に一人づつ立ち並ぶ2人の男性。
分かるぞ、彼らは王子って呼ばれる者だな。
奴には劣るが、十分美形だ自慢して良いぞ。
まぁ、奴の事は気にするな、あれは既に人外の域だ。
比べるだけ無駄ってもんだな。
王様の一歩後ろで左右に並ぶ女性陣、王妃&王女×3。
王様、間抜け面してる場合じゃ無いぞ!!
あの夢見るようなポォーっとした眼差し。
俺が宣言してやろう!!
あれは恋する乙女の表情と眼差しだ。
著しく厄介だぞ。
早く現実に帰って来い、王様!!
俺の心の叫びが届いた訳じゃ無かろうが、やっと王様が動き出した。
が、鈍い!トロイぞ!!
まだカタツムリの方が速いんじゃないか?
王様が手に持つ錫杖を床に置く。
片膝を着き敬意を払う仕草をすると、他の者達も慌てて膝を着いた。
一面の者共が跪く風景。
映画かテレビでしか見ない光景が目の前で繰り広げられている。
おぉ〜!壮観!!すげぇ〜!
おっ!!さすがの奴でもコレには目を白黒させてるかぁ。
分かるぞ分かるぞ!
俺もそんな感じだからな!!
こんなもん、生で見る機会なんぞ無いぞ!!
王様が奴に手を差し出し、その手を恭しく持ち掲げる。
「貴殿が勇者で良かろうか?」