年賀状の代わりに、宣戦布告を
「なろうラジオ大賞7」参加作品です。
『HAPPY NEW YEAR!
新しい年が始まったね!
宣戦布告、年賀状みたいにしてみたよ。
そろそろあきらめたらどうだい?
それじゃあ。К курице — с лимоном.』
宰相である私から年賀状――もとい宣戦布告を受け取った王様は、顔を引き攣らせた。
「馬鹿にしとるのか!こっ、こんなチャラい宣戦布告っ……」
王様は私の肩を掴み、前後にぐわんぐわんと揺らす。
「舐めている!そう思わんかね!」
ずっと大きな声で喚いている王様に、私は冷静に返す。
「陛下がそういう反応をするだけ相手の思う壺かと」
「む……それもそうだな」
あぁ、王様がやっと落ち着いた。これで安心して執務ができ……
「あぁぁ!むかつく!むかつくのじゃ!」
はぁ……
◇ ◇ ◇
「新年なのじゃ、新年なのじゃ、新年なのじゃ!」
王様が戦場で叫んで回る。自国の兵ですら嫌そうな顔をしているというのに……
そして、戦況を知ると同時に闘志を燃やし始めた。厄介なものだ。
「こちらはマヨネーズ爆弾を投下する!」
「しかし王様、あれは一部の者には至福であり、敵軍に効果はないかと」
「しるかっ!レモン派の奴らにマヨネーズの良さなどわかるはずがない!」
王様はそう言って聞かない。
しかたがないので、兵士たちにマヨネーズ爆弾を投下するよう指示を出す。
しばらくすると、遠くの方で莫大な量のマヨネーズが落ちていくのが見えた。
「あぁぁ……」
思わず情けない声が出る。あれだけあれば一生困らないというのに……もったいない。
王様を恨むように見上げた、その瞬間。
プシャーーーー
無防備な私達の上から、つんとした匂いのレモン汁がこぼれてくる。
「「うぎゃあぁぁぁぁぁ!!!」」
遥か向こうにいるレモン派のあいつが、にやりと笑った気がした。
――いや、レモンなら爆弾にしろよ。檸檬か。
ウェッ。
それから、帰宅後両軍とも妻に「洗濯が大変なのに!」と怒られたのは、別のお話。




