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【OLふたり、今日も明日も】  作者: 桜餅 詩音


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第8話「新しい扉」

第8話は、ひより視点の仕事回です。

今回は、新規開拓の話。

営業の仕事は、断られることの連続です。

でも、そこで諦めないことが大事。

ひよりは、第3話の失敗から学びました。

相手の困りごとを聞いて、解決策を提案する。

それが、営業の本質だと。

まだまだ未熟だけど、

少しずつ成長しているひよりの姿を、

感じていただけたら嬉しいです。

それでは、第8話をお楽しみください。

月曜日の朝。営業部のデスクで、私は資料を何度も確認していた。


今日は、新規顧客のアポイントがある。


相手は「フレッシュマート」という、中規模のスーパーチェーン。今まで取引がなかったお客さんだ。


先週、電話でアポを取った時、担当の方の声は少し冷たかった。


「ああ、今のところ間に合ってるんですけど……まあ、一度お話だけは聞きますよ」


そんな感じだった。


でも、チャンスはチャンス。


私は、資料を鞄に詰めた。


「朝比奈、頑張ってこいよ」


隣の席の田中先輩が、声をかけてくれた。


「はい! 絶対、取ってきます!」


「おう、その意気だ」


私は、オフィスを出た。


電車に乗りながら、もう一度プレゼンの内容を頭の中で確認する。


フレッシュマートは、地元密着型のスーパー。お客さんは主婦層が中心。


だから、提案する商品も、家庭向けの冷凍食品や調味料を中心にまとめた。


価格も、競合他社より少し安く設定できることを強調しよう。


それから、配送の柔軟性。小ロットでも対応できること。


よし、完璧だ。


フレッシュマートの本社に着いたのは、午前10時。


受付で名前を告げると、すぐに担当の方が降りてきた。


「朝比奈さん、ですね。購買部の岡田です」


岡田さんは、四十代くらいの男性で、少し疲れた表情をしていた。


「本日はお時間をいただき、ありがとうございます!」


私は、元気よく挨拶した。


「ええ。じゃあ、会議室に行きましょうか」


案内された会議室は、シンプルで無機質な空間だった。


岡田さんは、椅子に座ると、腕を組んだ。


「それで、どんな提案ですか?」


少し、警戒している様子だった。


私は、深呼吸をして、資料を広げた。


「はい。本日は、弊社の主力商品である冷凍食品と調味料を中心にご提案させていただきます」


一つ一つ、丁寧に説明した。


商品の特徴。価格の優位性。配送の柔軟性。


でも、岡田さんの表情は、あまり変わらなかった。


「うーん……悪くはないですけどね」


「はい」


「でも、正直なところ、今の取引先で満足してるんですよ」


その言葉に、私の心臓がドキッとした。


「そうですか……」


「ええ。価格も、サービスも、特に不満はない。だから、わざわざ変える理由がないんです」


岡田さんは、資料をパラパラとめくって、それから閉じた。


「申し訳ないですけど、今回は見送りで」


終わった。


そう思った瞬間、私の頭の中で、先輩の言葉が響いた。


 **「仕事はクレームから始まる!」**


いや、これはクレームじゃない。


でも、断られるのも、スタートだ。


ここで引き下がったら、何も始まらない。


「岡田さん、一つ質問してもよろしいでしょうか」


「ん? 何ですか」


「今の取引先で、何か困っていることはありませんか? どんな小さなことでも構いません」


岡田さんは、少し考えた。


「困ってること……まあ、強いて言えば、急な欠品があった時に、代替品の提案が遅いかな」


「代替品の提案、ですね」


「ええ。例えば、ある商品が急に入荷できなくなった時、こちらから聞かないと、代わりの商品を提案してくれないんですよ」


私は、すぐにメモを取った。


「分かりました。弊社なら、その点をカバーできます」


「本当ですか?」


「はい。弊社には、常に在庫状況をリアルタイムで把握するシステムがあります。もし欠品が発生しそうな場合、事前にご連絡して、代替品をご提案します」


「へえ……」


岡田さんの表情が、少し変わった。


「それから、フレッシュマート様は地元密着型ということで、季節ごとの地域イベントに合わせた商品提案も可能です」


「季節イベント?」


「はい。例えば、秋祭りの時期なら、お弁当に使いやすい冷凍食品を提案したり、年末なら、おせち用の食材を提案したり」


私は、持ってきたサンプルカタログを広げた。


「これは、昨年、他のお客様でご好評いただいた季節限定商品です」


岡田さんは、カタログをじっくり見始めた。


「なるほど……こういうのは、確かに今の取引先からは提案されないな」


「弊社は、お客様の売り場づくりまでサポートさせていただきたいと考えています」


「売り場づくり……」


「はい。ただ商品を納品するだけでなく、どうやって売るかまで、一緒に考えたいんです」


岡田さんは、腕を組んだまま、しばらく考えていた。


「朝比奈さん、正直に言うと、最初はあまり期待してなかったんですよ」


「そうですよね……」


「でも、今の話は面白かった」


「本当ですか!」


「ええ。じゃあ、試しに少しだけ取引してみましょうか」


「ありがとうございます!」


私は、思わず立ち上がって、深く頭を下げた。


「ただし、まずは小ロットから。様子を見て、良かったら増やしていく」


「はい! 必ずご満足いただけるようにします!」


岡田さんは、少し笑った。


「君、熱心だね」


「はい! フレッシュマート様と、長くお付き合いしたいんです!」


「分かった。じゃあ、まずは来週、具体的な商品リストを持ってきてください」


「はい! 必ず!」


会議室を出て、フレッシュマートのビルを出た瞬間、私は小さくガッツポーズをした。


やった。


新規のお客さんを取れた。


まだ小さな一歩だけど、でも、確実に前に進んだ。


駅に向かいながら、私は携帯を取り出した。


澪さんに報告したい。


でも、今は仕事中だ。


金曜日に、また澪さんの家に行った時に、たくさん話そう。


今週も、頑張れそうだ。


月曜日から、いいスタートが切れた。


これから、もっと成長していきたい。


営業として、人として。


私は、そんなことを考えながら、会社に戻った。

第8話、いかがでしたでしょうか。

ひよりの営業としての成長、感じていただけましたか?

第3話では失敗しましたが、今回は小さな成功を掴みました。

一歩ずつ、前に進んでいる。

それが、成長なんだと思います。

ひよりは、まだまだこれから。

でも、確実に強くなっています。

次回、第9話は澪の単独仕事回。同僚のミスをさりげなくカバーする澪。几帳面で優しい、縁の下の力持ちとしての活躍を描きます。地味だけど大切な仕事の価値を再認識する、温かい物語です。

第9話もお楽しみに。

最後まで読んでくださって、

ありがとうございました。

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