表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【OLふたり、今日も明日も】  作者: 桜餅 詩音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/40

第4話「いつもと違う帰り道」

第4話は、澪の視点です。

今回は、少し大人な雰囲気の物語。

いつもは家で一人、静かに過ごす澪さんが、

ふとした偶然から、新しい扉を開きます。

澪の、また違った一面を

感じていただけたら嬉しいです。

それでは、第4話をお楽しみください。

木曜日の夕方、定時で会社を出た。


いつもなら、まっすぐ駅に向かって、スーパーで食材を買って、家に帰る。それが私の日課だった。


でも、今日は少し違った。


駅前の路地を歩いていると、見慣れない暖簾が目に入った。


「炭火焼鳥 鳥心」


新しくできたお店らしい。ガラス越しに見える店内は、カウンターが中心で、落ち着いた雰囲気だった。木の温もりが感じられる内装。一人でも入りやすそうな空気。


私は、立ち止まった。


いつもなら、こういうお店は素通りする。家でゆっくり料理を作って、本を読みながら食べるのが、私のスタイルだから。


でも、今日は何か違った。


ふと、ひよりのことを思い出した。


彼女だったら、迷わず入るだろう。「澪さん、行こう行こう!」って、私の手を引いて。


私は、少し躊躇してから、暖簾をくぐった。


「いらっしゃいませ」


店主らしい男性が、笑顔で迎えてくれた。


「お一人様ですか?」


「はい」


「カウンターでよろしいですか」


「お願いします」


案内された席に座ると、目の前で焼き鳥を焼いている様子が見えた。炭火の音と香りが、心地いい。


メニューを見て、とりあえず生ビールと、おまかせの串を注文した。


「お仕事帰りですか?」


店主が、話しかけてきた。


「ええ。近くで働いていて」


「そうですか。ゆっくりしていってくださいね」


運ばれてきたビールを一口飲む。冷たくて、喉に心地いい。


焼き鳥は、シンプルな塩味だけど、肉の旨味がしっかりしていて美味しい。


一人で外食するのは、久しぶりだった。


結婚していた頃は、外食といえば夫と一緒だったし、離婚してからは、もっぱら家で食べていた。


でも、こうして一人でカウンターに座るのも、悪くない。


「お隣、よろしいですか」


ふと、横から声がした。


見ると、同じくらいの年齢の男性が立っていた。スーツ姿で、仕事帰りらしい。


「どうぞ」


「ありがとうございます」


男性は、隣に座って、店主に「いつものやつ」と注文した。常連らしい。


しばらく、お互い無言で焼き鳥を食べていた。


「ここ、初めてですか?」


男性が、話しかけてきた。


「ええ。今日、たまたま見つけて」


「そうなんですね。ここ、美味しいですよ。僕は週に一回くらい来てます」


「常連さんなんですね」


「いや、そこまでじゃないですけど」


男性は笑った。


話してみると、彼も同じ食品業界で働いているらしい。年齢も近くて、話が合った。


「一人で飲みに来るんですか?」


「最近、そうしてます。家で飲むのもいいですけど、たまには外の空気も吸いたくて」


「分かります。私も、普段は家で料理して食べるんですけど、今日はなんとなく」


「料理するんですね。偉いなあ」


「いえ、趣味みたいなものです」


ビールが進んで、日本酒を頼んだ。彼も同じものを注文して、二人で杯を交わした。


気づけば、2時間近く話していた。


仕事のこと、趣味のこと、最近読んだ本のこと。


彼は聞き上手で、私の話にちゃんと耳を傾けてくれた。


「そろそろ、お開きにしますか」


彼が言った。時計を見ると、もう9時を回っている。


「そうですね」


会計を済ませて、店を出た。


外は、少し冷えていた。


「あの……」


彼が、少し躊躇いながら言った。


「もう少し、話しませんか。近くにバーがあるんですけど」


私は、少し考えた。


いつもの私なら、ここで断って帰る。


でも、今日は違った。


お酒も入っていたし、久しぶりに誰かと話すのが楽しかった。


「……いいですよ」


私は、そう答えた。


バーで、また少し飲んだ。


話は続いて、笑って、気づけば終電の時間だった。


「送りますよ」


「いえ、大丈夫です」


「でも……」


彼の視線が、私を見つめていた。


私は、自分でも驚くほど、冷静だった。


「あなたの家、近いんですか」


「……ええ」


「じゃあ、少しだけ」


その夜は、久しぶりに人の温もりを感じた。


お互いに名前も連絡先も交換しなかった。


それでいいと思った。


朝、彼が眠っている間に、私は静かに部屋を出た。


朝日が、眩しかった。


駅までの道を歩きながら、私は少し笑った。


一夜だけの関係。


それでいい。


私には、帰る場所がある。


静かで、穏やかで、誰にも邪魔されない部屋。


そして、明日はまた、ひよりが来る。


それが、私の日常だ。


でも、たまにはこういう夜があってもいい。


そう思いながら、私は家路についた。

第4話、いかがでしたでしょうか。

今回は、少し大人な展開でしたね。

澪は、一人で生きることを選んだ女性です。

でも、時には誰かの温もりを求めることもある。

それは、弱さではなく、人間らしさだと思います。

一夜限りで終わる関係。

それを割り切れる強さも、澪の魅力の一つです。

次回、第5話は二人が再会する金曜日の夜。ひよりは仕事での挽回を報告し、澪は昨夜の出来事をぶっちゃける!? 

二人の距離がさらに近づく、ちょっとドキドキな第5話です。

お楽しみに!

最後まで読んでくださって、

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ