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EX3 仏国ダンジョン①

全6話予定です。




 箱館空港に近いゴルフ場を貰った。

 アラスカとか中近東でのダンジョンあれこれの報酬というか「拉致してごめんね☆」という口止め料みたいな意味合いも強いというか、確実に口止め料なんだろう。投棄された産業廃棄物の山を見た時には自衛隊と米軍関係者がブチ切れて不動産屋を問い詰めていたけれど、解体魔法の使い手にとっては貴重な資源である。半年ほどかけて分解再構築した資源はそこそこ良い値で売れた。

 ちなみにゴルフ場への産廃不法投棄は今も試みられている。

 夜な夜な建築廃材とかを満載したトラックが道内外からやって来るわけだ。

 そう、真夜中にである。

 エゾオオツノシカ達は基本的に夜行性である。わんこ達も本領を発揮するのは夜だ。幕末ゴブリン族は夜戦大好き。お分かりいただけるだろうか。


「しかかかかかっ」

「わわんわんわんおー」

「誤武」


 かくして定期的に開催される夜の運動会という名のデスゲーム。記念すべき第一回にはゴルフ場を管理していた不動産屋さんと結託していた反社組織の皆さんにも参加いただいている。探索者はよく不幸な事故で行方不明になったり死亡するので、元ゴルフ場を再び手に入れるという実に頭の悪い計画も発覚した。

 ごめんね、この元ゴルフ場を買い上げたのは米軍なんだ。

 デスゲーム主催者側に米兵さんが混じっているのは偶然と思いたい。日本のダンジョンで取得したスキルや魔法を存分に使う場を求めていたそうで。フレンドリーファイヤーだけはご勘弁。

 で。

 身元不明の遺体も複数ゴルフ場に埋めてたと発覚。ヒグマか殺人アライグマあたりが掘り返して喰っていた可能性も高いけど、こやつら生前葬もやらかしている。犠牲者にダンジョン関係者がいなかったので隠し通せたようだ。

 当然ながら大事件である。

 冬に備えてDIYでもと考えていたがゴルフ場の敷地全域が封鎖され、道警どころか複数の都府県から警察が派遣されての合同捜査。調査中にモンスターに襲われないよう護衛する仕事を仰せつかったけれど、想像以上に「痕跡」が出てきてしまったため自分はテントでの寝泊まりすら出来なくなった。


「肉屋、霊感なさすぎ」


 とは親しい同業者のコメント。自分もそう思う。ダンジョンに絡まなければ自分はその程度と笑う。ビジネスホテルに泊まろうとしても幕末ゴブリン族やわんこが押しかけてくるので、一泊すら出来ず野宿もしくは探索者組合の休憩室で寝るしかない。元ゴルフ場は掘れば掘るほど色々出てくるので警察から「今年は無理。どこか物件でも借りて」と捜査の長期化を告げられてしまった。

 箱館市内は幕末ゴブリン族と維新ゴブリン族の戦争遊戯が観光の目玉になりつつあり、都市部再開発に伴うホテル建設が追い付かない状態だ。少し前の巨大ナラタケ騒動でダメージを受けた市内建築物の修復も含めて、人手も足りなければ建築資材も足りていないという。

 面倒である。

 自分一人ならば四畳半で足りるという性分。害獣駆除を副業にしていた関係で道具類は沢山あるが、空間収納術のおかげで家財道具諸共まとめて突っ込んでいる。自分ならば、それで困らない。


「しか」

「きゅうん」

「不」


 自分一人ならば。

 いつもの面々に加えてアラスカダンジョンの竜の幼生まで遊びに来るようになった手前、元ゴルフ場の敷地というのは非常に有難かった。残念無念である。




◇◇◇




 そんな出来事があった後、いつものように探索者組合に顔を出すと支部長に呼び出された。


「欧州のダンジョン事情について知っているかね」


 ざっくりとした質問を出されてしまう。

 欧州。

 仏国でスタンピードが発生した時の映像は見てますよ。2メートル級の巨大カタツムリの群れがワイン用のブドウ畑を全滅させたやつ。ちょっとしたグロでしたね。そういうホラーマンガが昔あったよなーってビキニ姐さんが言ってました。


「うん。仏国で大発生したモンスター種の巨大カタツムリ。繁殖力と環境適応力がずば抜けてるみたいでね。ここ数年、仏国ワインが高くなったというか見かけなくなっただろう?」


 探索者がみな呑兵衛と思ってませんかね支部長。

 そもそも仏国のワインなんてワゴンセールのアレのヌーヴォーを稀に――そういやここ数年見かけてもいませんね。気にもしてませんでした。


「判明しているだけで仏国の主要なワイン用ブドウ畑の90%以上が巨大カタツムリの食害で消滅したそうだ」


 ……

 ……

 え、馬鹿なんですか。そんな手遅れになるまで何もしなかったんですか。人海戦術でも駆除できそうに見えましたが。


「移民系の労働者は不浄の動物と見做して接触すら避ける。そして動物愛護団体が『これだけ巨大になれば極めて高い知性を有する可能性を無視できない』と保護を訴え現地農家の邪魔をした。国民的スポーツ選手や著名な俳優を動員してのキャンペーンを行った結果、農家は自分のブドウ畑が巨大カタツムリの餌場となって消えるのを見守る事しか出来なくなったそうだ」


 なるほど馬鹿なんですね。

 アルティメット馬鹿いやウルティム級の馬鹿。

 ブドウ畑を喰い尽くした後は他の作物が餌食になるだけでしょうに。そこまで気付かなかったんですか?


「現時点で仏国の穀物自給率は今年17%程度と予測されている。高く見積もっての話だが」


 ……

 ……

 あの、ガチで国難というか、欧州全体の危機になってませんかそれ。


「ちなみに愛護団体のマスコットにもなっている女性活動家が『パンがなければヴィーガンフードを食べればいいじゃない』と素で発言したことで現代のマリーと評判だよ」


 ははは。

 はははははは。

 あ、それじゃあ自分これからわんこ達をダンジョンに解き放って散歩させなきゃいけないので。


「そこで!」


 いーやーだー。

 こんな前振りから続く話とか聞きたくなーいー。

 自分ただの解体職人なんです。パートタイムで害獣駆除も請け負っているけど。


「そこで!」


 繰り返さなくていいですから。

 仏国に必要なのは食糧援助と全土の焼却処分でしょうが。


「そうだ。追い詰められた仏国政府は自国のダンジョンに核投下を行い、出現した竜種に全土を焼き尽くさせて巨大カタツムリどもを卵の一個に至るまで焼き滅ぼす決断をした。どのみち国家としての死は避けられぬ以上、徹底的に。あとカタツムリよりはドラゴンの方が国が亡ぶ原因としては受容できるという国民投票の結果も出た」


 馬鹿しかいないのか。

 そこは恥を忍んで他国に協力を要請するところでしょうが。


「君ならそう言ってくれると信じていたよ」


 ……

 ……

 ああ、もう。自分も馬鹿ですよ畜生。




+登場人物紹介+


●支部長

探索者組合箱館支部の支部長。自治体の天下りではない。でも国や都道府県と密接な関係がありそう。肉屋やビキニ姐さんが何かやらかすたびに国や自衛隊と協議している。国からの依頼を持ってくる人でもある。


●仏国

フランスに似てるけど違う国。ということにしておく。欧州の食糧庫みたいな風に言われている美食と芸術の国。だった。過去形。巨大カタツムリに国土全域を凌辱されている。こうなったら核ドラゴンで美しく滅びてやるんだーって国民投票で決めたらしい。あんなオリンピック開会式をやるような国だから、とは世界中の認識。真っ当な人もいる。


●塩の柱

主に暴徒がなる。特定宗教の信者がなりやすく、神様が人類と定めたたった十か条のルールさえ守れないようなばかちんに対してダンジョンが代行して罰を与えた結果の産物。最初は元に戻していたが仏国では諦めた。諦めるなよ。


●愛護団体

巨大カタツムリの知性を信じて疑わず莫大な資金と人脈で討伐禁止を実現し仏国全土に甚大な被害をもたらした。小麦が無ければ光合成すればいいのだわー、とも言った。貧乏人は死ねとも。食料が無ければ外の国から買い付ければいいじゃない。というマインドである。羽振りがいい。


●元ゴルフ場

廃棄物から死体まで色々不法投棄されていた。特に死体関係で捜査しないといけないよね! 迷宮入り事件が幾つも解決するよ! おら鑑定魔法使え! というノリで肉屋も日々協力しているが冬まで封鎖されそう。クラブハウスの壁にもぬりこまれていた。


●不動産屋と愉快な反社組織

肉屋のことをよく知らなかった。肉屋と米軍のことをよく知らなかった。幕末ゴブリン族やわんこやエゾオオツノシカ君との関係も知らなかった。社会の底辺をちょいと脅して土地の権利書取り戻すだけの簡単なお仕事だと思っていた。なお結果。


●肉屋

死体が沢山埋まってたのに気付かなかったので霊感ナシ判定を受けた。





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― 新着の感想 ―
>死体が沢山埋まってたのに気付かなかったので霊感ナシ判定を受けた。  いや。  あ~~た。  霊感ない自分でもポルターガイストに有ったんですが・・・。(結構ヤバめ)  どんだけ鈍いの?
肉屋さん、人が良すぎw
ここちょっと間違ってますね() 誤)愛護団体 正)愛誤団体
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