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EX2 わくわく肉屋ランド開園

ちょっと遅れました。

 色々あったけど北海道に戻った。

 永住するつもりは無いけれど幕末ゴブリン族を箱館に戻さなきゃいけないし、エゾオオツノシカの群れも野生に帰したい。帰るよな。帰ると言ってください。


「しかー」


 駄目みたいだ。


「御分」


 地元の熱烈なファンへのサービスを終えた土方ホブ三様が沢庵を肴に茶を飲んでいる。こっちも五稜郭に戻るつもりはなさそうだ。


「わふん」


 わんこ達はそれなりに元気だ。検疫とか予防接種とか一悶着あったけど、米軍と合衆国が全力でバックアップしてくれたので想像以上に早く解決できた。ダンジョンのある温泉街に近いということでメガソーラー発電所計画が立ち消えとなったゴルフ場跡をアラスカ解放の報酬ということで譲り受けたが、元々そこはエゾオオツノシカ達の営巣地と化していたしアライグマもいるので探索者達が定期的に間引きすることで辛うじてダンジョンに呑まれるのを防いでいる場所だった。

 5メートル級のわんこ達が暮らすにはそれくらいの広さは必要だ、それは分かる。殺人アライグマはわんこ達の餌としても優秀だ。彼らの狩猟本能を程よく満たしてくれるようで、間引き要員としてこの上なく優秀だ。

 では現在、自分が何をやっているかというと。

 ……

 ……

 メガソーラー計画がとん挫した際に置き去りにされたソーラーパネル群、エゾオオツノシカやヒグマに破壊された風力発電機、どさくさに紛れて不法投棄された廃タイヤや建築廃材等々。ゴルフ場なのでスペースの余裕はあるが無視できないゴミの山を相手に奮闘中である。

 米軍さんはその辺の事情をうまく把握していなかったようで引き渡し後に謝って来たけれど、解体魔法の使い手にとっては資源の宝庫とも言える。無毒化され分解再構築され分別された各種素材サンプルを見た米軍および自衛隊関係者は凄まじい速度で算盤を打ち、サンプルを持ち帰るとその日の内に鑑定魔法すら総動員しての見積書を送ってきた。モンスター解体やってる人間がひとり都市鉱山と気付いたのだろう。そのまま建材として再利用するには法律の壁があるが、加工製造の原材料としては極めて優秀というお墨付きを得た結果、不法投棄されたそれらのゴミは半年ほどで綺麗さっぱり消滅して第二の人生を送ることになる。


 探索者組合で解体の仕事も再開している。

 アラスカでの話を聞きたがる同業者が多いのは、テイマー志望にとって聖地となった件のダンジョンについて情報を集めたいからだろう。組合に請われてアラスカダンジョンの報告書を提出する破目になったけど、直接聞きたがる探索者は少なからずいる。人懐っこく戦闘力抜群のわんこ達に脳を焼かれた犬派も大勢いるようで解体所に日替わりで護衛に来ているわんこへの勧誘も多い。


「わふ」


 気が合えば正式に契約を結んでもいいよとわんこ達には伝えているものの、成約した子は今のところいない。実力不足というよりも、その気になれば1000キロを軽く走破出来てしまうわんこ達の生態を知ったテイマー志望達の心が折れている状況である。自分も元ゴルフ場で走らせた後にダンジョン内で思う存分遊んでもらってようやく飼えてる有様なので、わんこ達と添い遂げる気ならばアラスカに骨を埋めるくらいの覚悟を持った方がいいのかもしれないと私見を伝えている。逆に言えばそこまでの覚悟が決まってる連中は真っ先にアラスカに移動しているので、自分に尋ねてくることはない。


 中近東の話は別に箝口令を敷かれているわけではないが、皆が避けている。

 あまりに大きな被害が世界各地で発生した。

 ダンジョンが宗派性をどこまで把握しているのかは不明だけど、報復は徹底された。中近東ダンジョンへの核攻撃を歓迎したものは共犯者と見做され、それを公言しなかった者までも報復の対象に加えられたのだ。日本でも移民系の人を中心に少なくない数が塩の柱となったようで、探索者組合が解呪を試みて一定の成功を収めている。塩の柱となった被害者そのものは数十時間で元の姿に戻っているので何処まで意味があったのかは今も議論になっているけれど、早く解呪できた者は精神状態が比較的マシだったとか。あくまで比較的。頑張れば日常に復帰できるかもと言われているレベルらしい。

 つまり大惨事である。

 日本ですらそうだったので世界規模では言うまでもなく、ましてやそれが国教となっている地域では悲惨きわまりない状況だとか。米国さんが核ダンジョン初期化を中断した理由は、しおしおのぷーになった人々のケアが急務と判断したからだ。このままだと核ダンジョンを初期化する度に似たような理由で犠牲者が爆増するという試算も出たそうな。東南アジアのコーヒー生産国などは塩にまみれて大打撃なんて話も聞いている。


 核ドラゴンですらダンジョンの温情だった。


 と人類は学んだ。

 学ばざるを得なかった。

 ダンジョンとの穏やかな付き合い方を学ぶという名目で、各国より日本のダンジョンを目指す人が増えている。他国ダンジョン経験者が日本のダンジョンで有用なスキルを得られるかどうかは不明だけど、戦闘に直接影響のないスキルならば可能性があるのではというのが同業者たちの見解。

 さて。

 そろそろ現実を直視しよう。

 自分の目の前には二枚の石板がある。ラピスラズリっぽい素材で、砕かれたのを補修された痕跡が目立つ。読めないけど同じ文章が書かれた二枚の石板。

 中近東ダンジョンを初期化した際に報酬としてダンジョンコアに押し付けられた。


【鑑定結果:掟の板(モーセおじいちゃんが砕いたのを補修しました)】


 ……

 ……

 厄物、圧倒的に厄物。

 どうしようこれ。



+登場人物紹介+


●土方ホブ三

幕末ゴブリン族の首魁。帰国してファンサービスに努めている。ピクルスの代わりに沢庵漬けの薄切りをたっぷり使った土方バーガーという御当地グルメが出来て困惑中。


●エゾオオツノシカ

箱館郊外の元ゴルフ場に居着いた。芝の管理をしている。食べているだけとも言う。ゴルフ場には結構キノコとか山菜も生えているようで美味しいです。時々ヒグマとかアライグマをしばいている。


●わんこ

箱館郊外の元ゴルフ場に居着いた。ダンジョンを散歩場にしている。アライグマハンター。常に一匹が肉屋の護衛として控えている。テイマー志望者に結構口説かれているがアラスカにいる兄弟たちなら紹介するよと返しているそうな。


●殺人アライグマ

処理を間違えなければ実に美味しい肉になる。


●ヒグマ

エゾオオツノシカの帰還により彼らは頂点捕食者の座を明け渡すことになった。血抜きが上手くいくと非常に美味い。


●テイマー志望者

潜在的に多い。日本では小型モンスターのテイムが主流だったが、それは育成進化という文化的素養があったため。もふもふに脳を焼かれた連中は真っ先にアラスカに向かった。


●塩の柱

ディスペルマジックで元に戻れることが判明した。しかし塩の柱になっていた間の記憶もしっかり残っていたようでSANが1D20+25くらい減った。


●掟の板

いわゆる十戒の石板。神がモーセに与えたけど偶像崇拝連中にブチ切れて打ち砕いたオリジナル。何故ダンジョンがそれを保持していたのか、そして修繕したのかは不明。肉屋に託された。


●箱館郊外の元ゴルフ場

メガソーラー発電所を作ってる最中にダンジョンがあふれたため頓挫。アライグマと鹿と熊の天国だった。わんこが走り回れる場所として米軍が地元不動産に半ば騙されて産廃ごと肉屋に押し付ける。が、肉屋にとっては素材の宝庫であり優良資源に解体変換されて貴重な現金収入に化けた。現在はわんこが殺人アライグマを蹂躙する場となっている。テントを立てて肉屋も寝泊まりしている。


●肉屋

探索者組合で解体職人として活動再開。休日はカエルを狩って売っている。

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― 新着の感想 ―
わんこが大活躍www うん。 お散歩が大変そう・・・。←柴犬飼ってて散歩で死ぬほど苦労した。
お、アメリカですら国内に緊張が走る聖遺物かぁ…。 ダンジョンも肉屋崇拝なら許すかな?
肉屋さん、箱館でもカエルの干物売りしてるんですか。地元のとどっちが美味しいのか。 という以前に、トラフグカエルは日本のダンジョンならどこでもいるのかな?それとも別種のカエル?
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