釣りダンジョンに行きました(その7)
宝箱なんて、針のどこに引っかかったら釣れるのかわからない。
たぶん、この辺りは深く考えたらダメなところなんだと思う。
とりあえず、宝箱を釣り上げてしまった。
「それで、なんで開けないんだ? コトネさん……コトネが釣ったならコトネが開けるべきだろう」
ガンテツさんが尋ねた。
確かに普通ならそうなんだよね。
でも、一つ問題がある。
「釣りで手に入る宝箱は釣り関係のアイテムが多いらしいんだ。それが釣り竿とか針とか道具だったらいいのだが」
「ああ……なるほどな。リーフの言いたいことはわかった。スキルオーブは譲渡不可だからな。釣り関係のスキルの場合、コトネにとっては無用の長物、宝の持ち腐れとまではいかないが、しかしミミーが手に入れた方がいいってことか。普通の宝箱ならともかく、釣りで宝箱を釣り上げられる確率ってどのくらいだ?」
「少なくともNPCから情報を貰っただけで、実際に釣り上げたって話は聞かないわね。コトネちゃんの貰った称号も情報屋さんが持ってない称号らしいし」
ミミーさんが言った。
私が宝箱を釣り上げたとき、称号を手に入れた。
【称号:当たり竿を獲得しました】
【当たり竿:LUKが2%アップする】
というものだ。
初めて1%ではなく2%の称号だ。
ステータス画面では変化はないけれど効果は反映はされているらしい。
それだけ釣りで宝箱を手に入れるというのは珍しいことだ。
「このダンジョンの鍵も釣り竿や餌もミミーさんが提供してくれたんですから、ミミーさんが開けてもいいと思います」
「いえ、マルチプレイの基本は自分の成果は事前に取り決めがないかぎり、手に入れた人に権利があるべきよ。コトネちゃん、開けていいわ」
「でも、釣り関係のスキルが手に入ってもそんなに使いませんし」
私とミミーさんがそれぞれ譲り合ってると、ガンテツさんがしびれを切らしたのか、提案してきた。
「ミミーが開けて、スキルオーブが出たらコトネに金を払え。値段はスキル屋の買い取り価格の二倍だ。それでいいだろ?」
「えっと、私、新しい釣り竿とか釣り糸を新調したからお金あまりないのよね……」
「足りない分は俺が貸してやる。ただし、お前に必要のないスキルでもしっかり買い取るんだぞ」
「私、お金はいいですよ」
「いいや、こういうのはしっかり決めておいたほうがいい。適当な前例を作ると、同じようなことがあったときに甘えが出るからな。そしてパーティの崩壊に繋がる」
そういえば、ダンジョンに入る前も報酬の分け方も細かく決めていた。
親しき仲にも礼儀ありとか、そういうことなのかな?
結局、スキルオーブが出たらお金を払う。
スキルオーブ以外が出たら私の物になるけれど、釣り竿とか釣り関係の物だったらその時にどうするか決めるということになった。
「じゃあ、開けるわね」
ミミーさんが宝箱の蓋に手を掛けた。
息を呑む。
何が出るんだろ?
スキルオーブ?
それとも別のアイテム?
「これは――」
ミミーさんが宝箱の中からそのアイテムを取り出した。
それは――
「ペッパーミル?」
くるくる回して胡椒をすり潰す道具だよね?
あれ? このメモリは?
【Black Pepper】【White Pepper】【Salt】【Nutmeg】【Sesame】........
胡椒だけじゃなく別の名前もある。
塩、ナツメグ……セサメ? セサメってなんだろ?
【万能スパイスミル:高品質のスパイスが回した分だけ無限に出てくる魔法のスパイスミル】
え!? 無限にスパイスが出てくるスパイスミル!?
「料理人垂涎の品だな」
「現実ではまず作れない品だな。どちらかというと猫型ロボットのひみつ道具に近い」
「これがあればいろんな魚料理ができるわね。はい、コトネちゃん」
スキルオーブじゃないので私が受け取る。
凄い、調味料が三十種類くらいある。
わからないスパイスも多いけど。
「リーフさん、セサメってなんだかわかります?」
「セサメ? あぁ、セサミ、胡麻だな」
あ、セサミって読むんだ。
でも、胡麻ってスパイスなの?
「それで、ガンテツ。ボスは見つかったのか?」
「大きな狼が洞穴を守ってるのを見つけた。俺と目が合っても襲って来ないから、間違いなくゲートキーパー、ダンジョンボスだ」
「そうか。ボスが見つかったなら安心だな。じゃあ、私たち三人で食事でも作るか。ガンテツはその間、釣りをしていてもいいぞ」
リーフさんが宣言をする。
「料理? 魚を焼くだけじゃないのか?」
「思ったより多くの魚が釣れたからな。それに、釣りダンジョンに来て一人釣りができないのも寂しいだろ」
リーフさんがウインクをして持っていた釣り竿をガンテツさんに渡した。
ガンテツさんも釣りはしたかったのか、礼を言って釣りを始める。
じゃあ、私たちは三人で料理を作るよ!




