釣りダンジョンに行きました(その6)
「じゃあ、釣りを始めましょう。針は鉄の針でいいかな? 浮きと錘は……あ、二人は湖釣りの経験はあるかしら?」
ミミーさんは釣り竿の準備をし、バケツ、そして餌を用意しながら言う。
餌は練り餌だった。
「はい、あります。海も川も――海の方が多いですけど」
「私もたしなむ程度だがな」
「そう、よかったわ。はい、リーフの釣り竿。こっちがことねちゃんの釣り竿ね」
ミミーさんが用意してくれたのは釣り堀とかで貸してくれそうなシンプルな釣り竿だった。
この釣り糸、もしかしてさっき言ってた蜘蛛の糸じゃないよね?
ミミーさんに聞いて――ううん、普通の糸だと信じよう。
これは普通の糸、普通の糸、普通の糸。
よし、普通の糸だ。
練り餌を付けてっと。
さて、どこに投げ込もうかな?
と思っていたらミミーさんが湖をじっと見つめ、何かを呟いた。
「あの大きな蓮の葉の下、あの流入口にも魚が多いわよ」
ミミーさんが釣りのポイントを指さす。
「わかるんですか?」
「ええ、魚群探知ってスキルを使ったの。いまは魚が多そうな場所しかわからないけれど、スキルレベルが上がれば魚の数や大きさ、種類までわかるようになるみたいよ」
「それは便利なスキルだな。スキル屋で買ったのか?」
「いいえ、釣りポイントで交換したのよ。なにしろ私は冒険者登録してからずっと釣りしかしてないから」
そう言って、ミミーさんは竿を振るう。
あっという間に浮きが沈み、竿を上げるとイワナみたいな魚がかかっていた。イワナよりも大きいけど。
凄い、一瞬で釣れるなんて。
「なかなかいい型ね」
ミミーさんがそう言って針さから魚を外してバケツに入れた。
「ほらほら、みんなも釣って」
「はい!」
私とリーフさんも釣りを開始。
ミミーさんが二匹目を釣り上げたあと、リーフさんも鯉のような魚を釣っていた。
よし、私も――かかったっ!
「ってなにこれっ!?」
釣れたと思ったら、出てきたのは巨大なカエルだった。
釣り上げた勢いのままカエルは宙を舞い、私を押しつぶそうと圧し掛かってくる。
剣を――あ、でもいま手を離したらミミーさんの釣り竿が持っていかれちゃう。
「ことね!」
リーフさんの炎を纏った剣が大きなカエルを引き裂いた。
カエルが消えてカエルのお肉だけがその場に残った。
大きさは普通のカエルだけど、皮を剥いだだけで手足もはっきりとわかるその姿は決して見ていて気持ちのいいものではない。
「ごめん、言い忘れてたよ。魔物がかかることがあるから気を付けてね」
「そうなんですか。でも、釣り上げるまで普通の感覚でしたよ。あんな大きなカエルなのに魚影(?)も見えませんでしたし」
「それはゲームあるあるだから気にしないで。釣り上げるまでわからないの」
そう言ってミミーさんは落ちているカエル肉を拾って私を見た。
「食べる?」
私は首を横に振る。
食べたことがない。
鶏肉に近い味だって聞いたことがある。
何も食べるものがなかったら食べるけれど、無理して食べたいと思わない。
「だったら、ガンテツに食べさせましょう。捨てるのももったいないし」
「ガンテツさんに悪いんじゃないですか? 私たちが遊んでいる間にボスを探しにいってくれているのに」
「女の子の手料理を食べられるんだから文句も言わないでしょ」
「それもそうだな。なに、黙っていればわからないさ」
リーフさんも乗り気だ。
本物のカエルじゃなくて、あくまでゲームの中のカエルだから平気かな?
私はいらないけど。
ちなみに、釣り上げた魔物は陸に上がると針を吐き出すらしいので、仮に竿を離してしまっても、水の中に竿が落ちてしまったりすることはないそうだ。
次からは気を付けよう。
その後、みんなで釣りを再開。
私は合計十回釣り上げた。
私は魚を七匹、魔物を二匹釣り上げた。
そして――
※ ※ ※
「偵察行ってきたぞ……どうしたんだ?」
ガンテツさんが帰ってきて訝し気な目でこちらを見た。
私たちが釣りをせずにそれを囲むように集まっていたから不思議に思ったのだろう。
「お帰りなさい、ガンテツ。いまさっきコトネちゃんがこれを釣り上げちゃってね」
「はい、釣り上げちゃいました」
私が釣った十番目の釣果――それは宝箱だった。




