釣りダンジョンに行きました(その3)
川の周りに大きな蛇がいっぱいいる。
結構怖い見た目の黒蛇だ。
名前はダークスネーク。
「リーフ、二人で片付けるとするか。コトネとミミーたちはそこで待ってな。女の子にあの数の蛇はきついだろ」
「おい、ガンテツ。私は女の子に入らないのか?」
「俺より強くて何言ってやがる。さっさと剣を抜きやがれ」
ガンテツさんとリーフさんが前に出る。
ガンテツさんはいつの間にか金属の籠手――鉄拳ガントレットという名前の装備らしい――を手に着けていた。
あれが武器なんだろう。
リーフさんも、紅蓮の大剣という大きな剣を抜く。
どうやら二人だけで戦うつもりなんだろうけれど――
「私も戦います! 蛇なら地元の森で出たので問題ありません」
「私も戦うわ。非戦闘職ならではの戦い方を見せてあげる」
私は双剣を、ミミーさんは釣り竿を構える。
って、ミミーさん、やっぱり釣り竿が武器なんだ。
どうやって戦うんだろ?
「しかし――」
「問題ないだろう。コトネも我々も前衛職だ。範囲攻撃を使うわけじゃないなら同士討ちのリスクは少ない」
実力が違う即席のパーティが混戦に挑むと混乱することをガンテツさんは懸念した。
でも、リーフさんは行けると言った。
「私の釣り竿は中衛だけど仲間に当てるようなヘマはしないよ」
「私も混戦は慣れっこです!」
ミミーさんと私が言うと、ガンテツさんが「混戦は慣れっこって、どんなプレイしてるんだ?」と訝し気に言った後、私の顔をじっと見て、
「コトネと言ったな。お前、どっかで会ったか?」
と尋ねる。
「なに、ガンテツ。ナンパ? セクハラは通報案件だよ?」
「違うわ! 別のゲームで会ったことがあるか聞いたんだよ」
「いいえ。私は他のゲームもしたことがないんで」
「悪い、たぶん気のせいだ。ゲームは初心者って言ってたもんな。悪いな変な事言って」
ガンテツさんがバツの悪そうな顔をして頭を掻く。
「危ないと思ったら逃げろ。パーティ設定で経験値は等分になってるしアイテムの取り分も平等だ。俺もリーフも蘇生アイテムは持ってないから死んだらダンジョンから強制退室で戻ってこれないぞ。最初はHPバーは常に七割キープのつもりでいけ」
「はい!」
「ガンテツ、おせっかいおじさんみたいだぞ」
「うるせぇ、行くぞ!」
リーフさんに変なことを言われたガンテツさんは照れるように蛇の群れに突撃した。
私たちも行く。
「肉体強化! スマッシュボンバー!」
「炎付与! 燃えろ!」
ガンテツさんの筋肉が膨れ上がり、地面に拳を叩きつけると大きな振動で蛇の動きを封じた。
そして、リーフさんの炎を纏った剣が蛇を燃やす。
たぶん全部スキルなんだろうな。
私も負けていられない。
と言っても、私の使えるスキルは――鈍重化?
うーん、使ったことないし今回はパス!
普通に斬る!
蛇が大きいおかげで斬りやすい位置にいてくれる。
でも、鱗が固い。
やっぱり一撃だと倒せない。
双剣は手数が多いけどその分攻撃力が低いって最初にふわるに説明してもらった。
だから何度も斬ればいいのだけど、それだと効率が悪い。
蛇はそのイメージから骨が少ないように思われるけど、本当は逆。
椎骨と肋骨だけで千本以上あるって教えてもらった。
だから硬い鱗を通しても骨に阻まれる。
そして肉まで届いても、重要な臓器がどこにあるかわからない。
だったら狙うのは頭っ!
噛みつこうとしてくるダークスネークをカウンターで狙う。
頭も固い――けれど与えられるダメージが大きい。
でも、このカウンター狙いはやっぱり辛い。
敵の数が多いから、一度でも外したら蛇に噛みつかれる。
大きな蛇は毒を持たないっていうから、毒の心配はないと思うけれど、でも牛すら丸のみにされそうな蛇に噛みつかれたいだなんて思わない。
私は的確に蛇を倒していく。
それにしても、最近は複数の敵と戦ってばかりだ。
「コトネ!」
リーフさんが叫んだ。
ダークスネークまるでしなる身体全体で鞭のようにこちらに攻撃をしてきた。
締め付けようとしているのか、それとも殴り飛ばそうとしているのか。
どちらにせよ、身体が急所でない以上、普通のカウンターは有効ではない。
だったら――スキル屋で買ったあのスキルを試すときだ。




