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VR世界の双剣少女は初めてのゲームを満喫する  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中


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スライムイーターと戦いました

 スライムイーターはこれまで戦ったどの魔物より強い。

 でも、スライムイーターのハサミを見ると少し欠けているし、HPを示す緑のバーも少し赤くなっている。

 そうか、リザードソルジャーの剣と違って、スライムイーターのハサミは身体の一部だからそこを叩いてもダメージを与えることができるんだ。

 たぶん、これまでの私の武器だったらほとんどダメージを与えられなかったと思う。

 スミスの作ってくれた剣のお陰だね。

 だったら、このまま攻撃を続ければ倒せる――けど。


「そういうのは好きじゃないな」


 剣道において有効となる場所のどこを狙っても一本は一本。

 でも、私が一番好きなのは――


「面に一本を入れるよ!」


 と言ったとき、スライムイーターが小さな口から泡を噴き出した。

 一個一個がバスケットボールくらいの大きさがある。

 このまま突進したらマズい気がしたので、剣で泡を突く。

 激しい音とともに剣が震えた。

 たぶん、直接触ったらHPが減っちゃうと思う。

 そういう技もあるんだ。


 ここでも役に立つのが お父さんの意味のわからない謎訓練その13!

風翔突気法(エアリアルドリル)

 だね。

 ぷにスライムと戦ったときと同じように、身体に触れずに泡を突きながら進む。

 その時――


「もちろんキミのことも忘れてないよ、スライムイーターくん」


 スライムイーターの尾っぽの針が真っすぐこちらに伸びてきたけれど、二本の剣で受け止める。

 リザードソルジャーと戦ったときと同じ轍は踏まないよ。

 サソリと言ったら尾っぽの針だからね。

 泡、ハサミ、尾っぽの針。

 これが相手の攻撃法だ。

 それさえわかれば、後は――


「覚悟っ!」


 泡を避けながら距離を詰めた私の剣が、スライムイーターのハサミと衝突する。

 スライムイーターが私を力づくで押しのけようとする。

 私はそれに乗った。

 全てさっきと同じ流れ。

 ただ一つ違うのは――敵の泡がそこにあったというだけ。


 跳ねのけられた私の剣が敵の泡に触れた。

 強い衝撃により、人間の身体だけでは絶対に不可能な速度で剣の軌道が変わる。

 私の剣を跳ねのけたことでがら空きになったその頭上へと。


「めぇぇぇぇぇええええんっ!」

 

 スライムイーターの頭に私の剣が当たった。

 一本! と脳内審判員が声とともに旗を上げた。

 この一撃でスライムイーターは死ぬことはなかったけれど、脳震盪を起こしたのか頭上で星がくるくる回っている。

 ……まるでアニメみたい。

 つまり、チャンスってことだよね。


「もういちどめぇぇぇぇぇえんっ!」


 気合いを入れた頭への一撃で、今度こそスライムイーターを仕留めた。

 泡はちょっとだけ面倒だったけれど、意外と倒しやすい魔物だったな。

 落ちているサソリのハサミを拾ってインベントリに収納する。

 これを持っていけばお金がもらえるんだよね。


 安心したところで、私の横を泡が飛んでいった。

 スライムイーターの身体は消えても泡は消えないんだ……っけ?


 別のスライムイーターが穴から出てきていた。


「えっと、一匹じゃなかったの?」


 という私の質問に対し、三匹目のスライムイーターが穴の中から出てきたことが答えになった 

 リザードソルジャーといい、今回といい、数で勝負はズルいよ!


「剣道の勝負は一対一が基本だよぉぉぉおっ!」


 そして私の本当の勝負が始まる。


【コトネのレベルが上がった】

【コトネのレベルが上がった】

【コトネのレベルが上がった】

【コトネのレベルが上がった】

【称号:賞金稼ぎを獲得しました】


   ※ ※ ※


「酷いですよ、テルミナさん。私、死んじゃいましたよ! スライムイーターが何匹もいるならいるって教えてくれたらいいのに。デスペナルティというもので今日貰える経験値10%カットです」


 生き返った教会で神父さんに、私はもう一人前になったんだから――と死んだときのペナルティについて教えてもらった。

 デスペナルティはランダムで、経験値10%カットの他にもいろいろなデメリットがあるらしい。

 最初はスライムイーター相手に善戦した私だけど、スライムイーターが次から次に出てきて、最終的に一度に十匹くらいに襲われてしまった。

 さすがに逃げようと思ったときには、別のスライムイーターが背後に回り込んでいて逃げ場も泡で塞がれ、どうしようもなかった。

 それでも結構な数のスライムイーターを倒したし、そのハサミも持って帰ってきた。


「ごめんなさいね、ことねさん。でも、依頼書にはちゃんと書いてあったでしょ? 複数いる場合もあるって」

「……え? どこに?」

「ここに」


 依頼書を見ると、たくさんある注意事項の中に小さな文字で書いてあった。

 でも、そうならそうと口頭で説明してくれたらいいのに。

 もしかして、口頭で説明したら私が引き受けないかもって思ったのかな?

 ……うん、ちょっと躊躇したかもしれない。

 もしも死んだらそれまでの世界だったらこのようなことはしなかったけれど、この世界だと死んでもちょっとしたペナルティだけで生き返っちゃうからね。

 とはいえ、この文字の大きさはズルいと思う。


「それで、スライムイーターのハサミはどれだけ手に入れたの?」

「全部で三十本手に入れました」

「凄いわね! 報酬も三十匹分よ! これでコトネさんの欲しいスキルも買えるんじゃない?」

「…………」


 誤魔化そうとするテルミナさんを私はジトっとした目で見る。

 すると流石に申し訳ないと思ったのか、テルミナさんが提案をした。


「ねぇ、コトネさん。実はこのスライムイーターのハサミって食べられるのよ。しかもとっても美味しいの」

「え? これって美味しいんですか?」

「塩茹でしたら最高に! これ、担当したギルド職員が食べていいことになっているんだけど、よかったらいまから一緒に食べない? お昼ご飯、まだ食べてないんでしょ?」

「食べます!」


 誤魔化されているのはわかっているし、スライムイーターと戦う前にパンと焼き菓子を食べたし、元がサソリっていうのはちょっと気になるけれど、でも美味しいって言われたら食べるしかないよ。

 ちょうど昼休みらしく、私たちはギルド職員用の厨房を借りてスライムイーターのハサミを二人で食べた。

 美味しいカニの味がした。

 考えてみれば、泡を出すのってサソリっていうよりカニだし、もしかしたらスライムイーターの半分はカニとサソリのハイブリッドなのかもしれない。


「スライムイーター美味しいです。私、スライムイーターイーターを名乗りたいです」

「いいわね。本当はエールがあったら最高なんだけどなぁ」


 私とテルミナさんは昼食に大量のスライムイーターのハサミの身を平らげたのだった。

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