金の宝箱を開けました
スミスが作業を始めようとしたところで、カフェの女性店員さんが水のおかわりを持ってきた。
あ、この世界って海外っぽいのに水は無料なんだよね――ってそうじゃなくて。
「ごめんなさい、店員さん。スミス、やっぱり迷惑だよ。ここで鍛冶なんて」
こんな場所で絶対迷惑だよ。
私が謝罪してスミス止めようとするが、
「鍛冶行為は問題ありませんよ」
女性店員さんは「水は無料ですよ」と言ったときと同じように当たり前の口調で言った。
「え?」
「ここは非戦闘エリアですので、戦闘行為と破壊行為は禁止ですが、それ以外は問題ありません。お水のおかわり入れておきますね」
「あ、ありがとうございます」
店員さんがグラスに水を注ぎ去っていく。
その間もスミスは魔鉄鉱石を武器のハンマーじゃなくて、小さいトンカチみたいなもので叩いていく。
あれ? 魔鉄鉱石って不純物がいっぱいあるから、まずは魔鉄の成分だけを取り出す作業とか必要じゃないのかな?
と思っていたら――
「はい、剣ができたよ」
「え? もう!?」
気付けばスミスの持っていた魔鉄鉱石が新しい双剣に変わっていた。
これが新しい双剣。
私はそれを受け取り、軽く振ってみる。
驚くほどに手に馴染んだ。
「お客様、店内で武器を振り回す行為は御遠慮ください」
「あ、ごめんなさいっ!」
店員さんに注意された。
ショボン。
さらにスミスは鎧も作ってくれた。
リーフさんみたいな甲冑じゃなくて、胸やお腹あたりだけを守ってくれる前掛けみたいな感じだ。
垂に小手もあって剣道着に似ている気がする。
魔鉄って言ったから鉄の色だと思ってたけど、白色なんだ。
とってもかわいらしい。
「早速着てみてよ」
「え!? ここで!? さすがにみんなが見ている前で着替えるのは――」
「鎧を持って装備すれば自動で着替えられるよ」
「そうなの? 装備――」
すると持っていた鎧が突然消え、身体に装着された。
変身したみたい。
うん、ちょっと体を動かしてみたけれど思っている以上に邪魔にならない。
それに剣道着よりも重さを感じない。
これなら剣を振るときも邪魔になったりしないと思う。
でも――
「ねぇ、これスカート丈がちょっと短くない? 太ももがかなり見えてるよ」
「そのくらいの方がかわいいよ。学校の制服もそのくらいでしょ?」
うーん、確かにそうかもしれないけど、激しい動きをしたらスカートの中が見えたりしそう――まぁ、垂があるから少しは大丈夫かな。
「ありがとう。お金払うよ……あんまり持ってないけど」
「いらないよ。見てたと思うけど簡単にできるし、むしろ鍛冶作業をしたお陰でスキル熟練度が上がったくらいだから」
「でも――」
「どうしてもって言うなら、ここのケーキを買ってもらおうかな? 一個テイクアウトしたいんだよね」
「うん、もちろん! 店員さん…………アプフェル……シュトゥルーデルを四つテイクアウトで。あ、一個と三個に分けてください」
「三つも食べるのかい?」
「今日の夕食後のデザートと、明日の三時のおやつと、明日の夕食後のデザートだよ」
少しスミスが呆れてるけど、太らないんだから問題ないよね。
「そうそう、明後日の正午から広場でイベントがあるんだけど、お知らせ見た?」
「イベント?」
「うん。牛を追いかけるイベントらしいよ。豪華賞品も出るらしいし、終わってからステーキも振舞われるらしいからコトネも参加するといいよ。たぶんプレイヤーも結構集まると思う」
「ステーキ!? うん、参加する!」
闘牛みたいな催しかな?
現実だと危ないけど、ゲームの中だったら楽しそうだ。
参加しよっと。
その後、スミスと連絡先を交換して別れた。
まずは借りている宿屋に行って、宝箱の中身を確認。
それと、スキル屋に行ってスキルを覚えよう!
早速部屋に戻った私は宝箱を取り出す。
金色の宝箱で、この箱だけでも価値がありそうだけど、宝箱そのものの売買はできないし、宝箱を開けて中身を取り出したら消えてしまうらしい。
なんだかもったいない気がする。
でも、小物入れにするには少し派手過ぎるし、部屋に飾ることができても要らないかな?
よし、開けちゃおう。
まずは一個目。
「ドゥルルルルルルルルルルル(口でドラムロール)……ジャジャン!」
宝箱を開けて出てきたのは――
「ふわるのぬいぐるみだ!」
実物サイズのふわるのぬいぐるみだった。
カワイイ!
宝箱は消えちゃったけど、断然こっちの方がいい!
【ふわるのぬいぐるみ:抱いて寝ると気持ちいい。就寝時間と同じ期間、取得経験値が5%×所有数アップする(最大+100%)】
つまり8時間寝たら、起きてから8時間、経験値が5%アップするってことかな?
20個あれば100%アップする。
凄い効果だね。
早速今夜から抱いて寝よう。
……あ、でも寝たら一瞬で朝になるから、抱き心地とか感じる暇はないかもしれない。
私はふわるのぬいぐるみを抱きながら、二個目の宝箱を開ける。
「ドゥルルルルルルルルルルル(口でドラムロール)……ジャジャジャジャン!」
二個目の宝箱を開けた。
中に入っていたのは――薄い青色のガラス玉……あ、スキルオーブだ!
早速出た。
どんなスキルなんだろ?
ワクワクしながらスキルを確認する。
【スキルオーブ(鈍重化):攻撃した相手を重くすることができる】
重くする!?
な、なんて恐ろしいスキルなんだろう。
ケーキを食べても太らない世界なのに、攻撃されただけで太るなんて。
さすがに現実世界には影響がないよね?
スキルオーブはスキル屋で売るか、自分で使うかどちらかの使い道しかないって言うけれど。
……初めて手に入れたスキルオーブだし、自分で使おう。
【スキル:鈍重化Lv1を獲得しました】
でも、使い道を考えないとね。
魔物に使うにしても、重くなったら動きが遅くなっても攻撃の威力が増すこともあるだろうし。
次が最後の宝箱だね。
「……ドゥルルルルルルルルルルル(口でドラムロール)……ジャジャジャジャジャン!」
鈍重化の効果、重くなるという恐怖のせいでテンションが下がったけど、無理やり気を取り直してドラムロールの後、宝箱を上げた。
中から出てきたのは――
ダチョウくらいの大きな卵だった。
食用?
それとも、魔物の卵?
【ペットの卵:何が生まれるかお楽しみ(孵化まで残り4日23時間59分52秒)】
ペットの卵!?
そんなのがあるんだ!
何が生まれるんだろう。
ワイルドハムスターかな? ぷにスライムかな?
この世界の動物ってみんなカワイイから楽しみだよ。
「あっ!」
私は一つの可能性を考えて卵を床に置くと、手を合わせてお祈りをした。
「どうか蜘蛛じゃありませんように、蜘蛛じゃありませんように、蜘蛛じゃありませんように」
その願いが天に届くかどうかわかるのは5日後らしい。
予約日ミスってた




