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VR世界の双剣少女は初めてのゲームを満喫する  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中


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初心者ダンジョンを攻略しました(その5)

 リザードソルジャーに恥ずかしいところを見られちゃった。

 照れながら袖から出した手を頭にやる。

 リザードソルジャーは初心者ダンジョンのボスらしい。

 ボスを倒したらダンジョンから出ることができるんだっけ?

 あ、もしかして回復の泉って、ボスと戦う前にHPを回復して元気な状態で挑んでいいよっていう意味なのかも。


「これが噂の親切設計か。ユニバーサルデザインだね」


 何か違う気がするけれど、でもお陰で万全の状態で戦える。

 リザードソルジャーの待っている部屋に入った。

 ボス部屋が閉じる。

 私をじっと見るリザードソルジャーに近付く。

 ここまでだ。

 ここから先はリザードソルジャーの間合いだ。


「宮本ことねです。よろしくお願いします」


 私はそう言って双剣を構える。

 リザードソルジャーも長剣を抜いた。

 審判員はいない。「始め」の合図もない。

 勝負の開始はどちらかが動いたとき。

 うん、そうだよね。

 挑戦者は私。

 だったら――


「私から!」


 真正面からリザードソルジャーに挑む。

 まず右の剣で相手の剣にぶつけ、競り合ったところで左から――


 ――カンっ!


 金属音とともに、リザードソルジャーの剣が弾かれ、リザードソルジャー自身も大きくのけぞる。

 え? 嘘っ!?

 何かの誘いを疑った、あまりの無防備な姿を見て、私は思わずがら空きの胴に一太刀を浴びせた。

 リザードソルジャーのHPバーの値が大きく減る。

 もしかして、ボスなのに弱い?


 尻尾を使って後ろに飛んだリザードソルジャーは剣をぐるぐると振り回した。

 なにあれ?

 子どもの遊び?

 当たったら危ないけど、あんな見え見えの攻撃当たる訳がないよ。

 普通に剣で弾いて胴を薙いだ。

 リザードソルジャーのHPバーが全部真っ赤になり、リザードソルジャーが倒れた。

 剣を構えてから十秒程度の出来事。


「これでもう終わり?」


 拍子抜けだった。

 でも、初心者ダンジョンだったらこんなものかな?


【BOSS BATTLE CLEAR】

【戦闘評価:Sランク】

【称号:若葉の踏破者を獲得しました】


 ……S?

 スリーエス?

 Sってなに?

 SMLのS?

 一番低いってこと?


「ことねさん、初心者ダンジョンクリアおめでとうございます!」


 突然現れたのは角の生えたワイルドハムスター!?

 じゃなくて、このゲームを始めるときに現れたふわるだった。

 

「こんにちは。ありがとうございます」

「ことねさんの戦闘評価は最高ランクのSランクですね」

「え? Sって最高ランクだったんですか?」

「そうですよ。ランクはC、B、A、Sの順番に高くなっていきます」


 ……C~AはわかるけどなんでS?

 凄い(SUGOI)のS?

 素敵(SUTEKI)のS?

 サステナブルのS?


「Sランクを取った人はチャレンジボスと戦うことができます」

「チャレンジボス?」

「はい。さっきのボスでは物足りないって人のための強い強いボスです。チャレンジボスに挑戦すると素敵なご褒美が貰えます」

素敵(SUTEKI)なご褒美!? 戦います!」


 私は即答した。

 でも、あれ?

 即答したのはいいけど、おかしくない?

 普通、こういうのってチャレンジボスを倒したら貰えるんじゃないの?

 挑戦したら貰える?


「ご褒美は倒したリザードソルジャーの数で決まりますからね! HPが0になったらそこで終了ですよ」

「え? え?」


 私が戸惑っていると、ふわるが消えて、部屋を埋め尽くすくらいの尋常じゃない数のリザードソルジャーが現れた。

 

【CHALLENGE BOSS】

【リザードソルジャー100匹】


 100匹っ!?

 それが同時に私に襲い掛かってきた。

 さっきは間合いに近付かなければ戦闘が始まらなかったのに。

 私は目の前のリザードソルジャーの、今度は胴ではなく首を狙って剣を振るう。

 クリティカルが出た。

 よし、まずは一匹!

 とその時、背中に衝撃が。

 痛くはないけれど、攻撃を受けたのだと直感的にわかる。

 HPバーが二割減った。

 そうだ、ポーション。

 剣を振って背後の敵を威嚇しつつ、インベントリからポーションを出そうとするけれど、別の方向からリザードソルジャーが襲ってくる。

 これだとインベントリから取り出すことはできてもポーションを飲むことができない。

 攻撃して数を減らして、敵の攻撃から身を守って、せめて壁を背にできれば回復を――


 ってそうじゃない!

 突然大勢のリザードソルジャーに襲われてパニックになったけど、冷静になれ、私!


 私がいまするべきは攻撃でも防御でも回復でもない。

 空間の把握!


 私は高速で一回転しながら、リザードソルジャーの位置を把握。

 その場所を記憶する。

 いまだ。

 私は左に避けて、リザードソルジャーの背後からの攻撃を避けつつ左方の敵の急所を的確に突いた。

 わかる、わかるよ、みんなの動きが。

 これもお父さんとの稽古の成果だ。


 お父さんの意味のわからない謎訓練その1!

背感回避法バックセンス・リフレックス


 同門の門下生たちの背後からの攻撃を避けるという訓練法だ。

 気配を読むとかそういうアニメのキャラにしかできないことをする稽古ではない。

 相手の癖、動き方を予想し、息遣いや足音などでその予想を確信に持っていき、どう打ち込んでくるかを予想して避ける。

 そういう稽古だった。

 お父さんの教えてくれた不思議な訓練の始まりであり、そして一番実戦的に思える。

 でも、すぐにこの訓練は意味がない謎訓練だと悟った。

 だって、剣道の試合って向かい合ってするものだから背後から攻撃されることってまずないんだもん。

 それがまさかこんなところで役に立つなんて。


 あの訓練法で得たのは剣術の癖や軌道を完全に把握しているから通じる回避術だ。

 クレハスさんどころか普通の相手でも流石に通用しない。

 でも、ちょっと戦って分かった。

 リザードソルジャーの攻撃法は単純。

 斬る、払う、ぐるぐる回すの三種類だけ。

 しかも剣の軌道は全て同じ。

 そして、動きも真っすぐこっちに来るだけ。

 私が気を付けるのは自分への攻撃ではなくリザードソルジャー同士の接触による行動の変化。

 回避を繰り返しながら、倒せる相手を一匹ずつ倒していく。


 優先するべきは場の把握。

 とはいえ、さすがにこの数全てを把握するのは難しい。

 一回、さらにもう一回とダメージを受け徐々にだがHPが減っていく。

 残り一回ダメージを受ければ死んでしまうところまで追い込まれた。

 そこで活路を見出した。

 リザードソルジャーの隙間――そこを回避術で避けて背後に回り込めば一気に壁際まで走り抜けられる。

 そこで回復ポーションを飲めばHPを回復できる。


 いまっ!


 クレハスさん直伝回避術!

 よし、抜けた!


 剣の間合いを抜けて一気に走――


 身体を衝撃が襲った。

 え? 嘘、なんで?

 リザードソルジャーの背後に回ったときの攻撃パターンが通常とは違うってこと?

 でも、剣の間合いからは完全に外れ――って尻尾っ!?

 吹き飛ばされながら、私は自分の背中を打ち付けるリザードソルジャーの尻尾を見た。

 そうか、剣道の試合じゃないから蹴りも尻尾での攻撃もありってことか。


 やっちゃったな、私。

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