攻略組VSサクヤ
迂闊だった、というかなんというか・・・
警戒していなかった訳でもないが、特別していた訳でもない・・・
何が言いたいかというと、やつらを多少甘くみていたということ・・・なのか?
「ちょっとーどうするのっ?」
「どうするって言われても・・・」
「おい。貴様らは『何』だ? なぜこの最前線で貴様らのようなガキがうろうろしているんだ」
これは・・・そうとうやばい状況だ。
何がやばいって、俺達は確実に疑われている。
それこそなぜだ、という話なんだが・・・
話は少し、といってもほんの数分前までさかのぼる。
俺達は、一応誰の目にもつかないようにひっそりと(あくまでも『一応』だ)『外側』へと向かっていた。
なぜ身を隠す必要があったかというと、それはやっぱり俺達が普通ではないからだ。
俺は16歳、ミナは15歳。
このくらいの年齢だと、Lv.50に達していれば世界的に最高レベルで、将来性を買われ最前線に送りこまれたりするほど。
でもそれは表面上は『修行』の一種ということになっており、そこで戦えるほどのものはいない、と最前線のやつらは思い込んでいる。
本当に馬鹿なことだと思う。
さっさと『天才』を認めて共存でもなんでもすればいいのに、世界のトップの中でもごく一部のやつらは必死にその存在をひた隠しにしている。
そのごく一部のトップとやらもレベル的には『天才』を除けば最高値なんだろう、認めたくないのはわかる。
だがそれで、たったそれだけのちっぽけなプライドを守るために、見つけた『天才』を集団で、まるでモンスターを狩るかのように殺そうとするのは人間としてどうなんだ?
過去に一度だけ、そんなことがあった。
そして才能ある人間が一人、狩られた。
その、人間を狩った時のパーティにはこう伝えていたらしい。
『最前線近くに出没する人間のようなものがいて、それが最前線ギルドに参加していなかった場合、確実にモンスター、それもかなりの高レベルの人型モンスターだ』と。
普段は他人を『否定』している『天才』達もこれには全員が激怒した。が、何も出来なかった。
『天才』達の99%以上は進んで人間を傷つけようとするものはいないから。
神、なんているかどうかは知らないがもしいるとするならば、神は才能を与える者を選ぶ、ということだ。
そして、殺されたとはいえ、その犠牲者は全ての『天才』達と深い関係は築いてなかったから、命を危険にさらしてまで仇を討とうと考える者はいなかった。
だから『天才』達は、世界のトップ(それを一部の『天才』達は『人を人だと思わぬ生物』と呼んだが、長いので俺は普通に『攻略組』と呼んでる)を憎みながらも手は出せず、逃げる、避けるなど、消極的にならざるを得なかった。
革命を起こそうという意見も上がったには上がったが、やはり誰も受け入れなかった。
・・・俺にはすぐ話を脱線させてしまうくせがあるらしい。
とにかく俺達は進んでいたわけだが・・・うん、やっぱり油断していた。
攻略組とばったり出会ってしまった。
周囲に全く索敵もなにも施していなかった。
完全に俺のミス。
正直、冷や汗が止まらない。
・・・・どうする!?
「やばいわね・・・」
「・・・・・・・・」
「答えないのか? ということはやはり貴様らはモンスターなのか?」
攻略組側のメンバーがざわめきだす。
18人・・・ち。
随分本格的なパーティだな、くそ。
「・・・・・やるか・・・」
「ッ!? サクヤ!? 本気!?」
「・・・迷ってる。俺達のことが露見するリスクを0にするには全員殺すしかない。でも、俺はこいつらと同じように人を殺すなんてしたくない。・・・全て割り切って殺すか、逃げるか・・・」
「逃げよう? やっぱり私は・・・」
「分かってる。でも、ここで顔が割れたら、もう二度とこの世界の全ての街に来られなくなるかもしれない。それほどあいつらは『天才』を憎んでる。すぐに全世界規模で俺達は指名手配に近い扱いをうけるだろうな。そうなったら、俺達が生きてく場所は本当に最前線の遥か遥か奥のダンジョンしかなくなるぞ?」
「いいよ、それでも。私は。サクヤだっている。もう一人じゃない、だからどこでも生きていける。それに・・・[Denial]だってあるよ。あそこは世界なんか関係ないでしょう?」
「そう、だけど・・・」
「・・・貴様ら・・・やはり、才能ある者達なんだろう?」
「!!」
「・・・知ってるんですか、俺達の存在を」
いくら攻略組でもやっぱり隠しきれるものじゃないのか。
『天才』とは言わずとも、天賦の才能がある人間が存在することくらいは気づいてる。
・・・だとしたら、だ。
こいつらのような、ただレベルが高いだけの一般的な人間は俺達をどう思う?
前の街では、確かめた訳ではないがおそらくは恐れられたり、その才能を疎んだりしているだろう。
なら、こいつらは?
レベルは高く、見た感じ、誇りのようなものもある風に見える。
となると、攻略組トップや一般の人間のように才能あるものを消そうとするのか。
それとも、誇りある武人として俺達に敬意までは見せなくとも見逃すくらいはしてくれるのか・・・。
どっちだ・・・?
「まぁ、な。上の方は必死に隠そうとしているようだが。そのくらいの情報は入ってくるさ。巧妙にカモフラージュされてはいるが、察することくらいはできる」
「そうですか・・・で、どうする気なんです? 俺達としては、今日あったことを全て忘れたことにでもしてくれるとありがたいんですが」
「我々も仕事でね。そんなことを言われてすぐ『はいそうですか』というわけにもいかないな」
「・・・ふぅん」
「さ・・サクヤ・・・」
「大丈夫、なんとかなりそうだ」
俺はミナに笑いかけておく。
多少は安心したらしい。
表情もほんの少しだけ和らいだ。
「・・・条件は」
「なに、簡単なこと。私には才能がなかった。だから努力、といえば安っぽいが本当にそれだけでここまで上り詰めた。だから・・・私の『努力』という力が真の才能にどこまでくらいつけるのか・・・。それを知りたいのだ」
「そうですか。そういうの、嫌いじゃない。でも、断言します。あなたは必ず後悔する」
「ふん、もともと才能ある者達が想像を絶する程強いということくらい聞いている。仮に負けたところで何も思わんさ」
「『仮に負けたところで』・・・それがすでに答えですよ。あなたは諦めていない。才能ある者に、努力が打ち勝つ可能性を」
「それがどうした? というよりも貴様らが才能ある者だという証拠もなにもない。そんなことを言って、私が怖気づくとでも? ・・・やるのか、やらないのか」
声が急に低くなる。
・・・仕方ないな。
でもこっちとしては願ってもいない展開。
やるに決まってる。
俺も纏う空気の雰囲気を変えてみる。
相手は敏感に感じとれたらしい。
「方法は、剣も魔法もなんでもあり。殺さないこと。条件はこれだけだ。いいか?」
「いいですよ。・・・それと、これだけは覚えていてください。才能だけあったところでこの世界ではなんの意味も持たない。あなたもそれは知ってるはず。なのに俺達は強い。それは、才能にみあうだけの努力を怠っていないから。そして、あなた達が一生見ることのない程の地獄、一生感じることがない程の孤独を知ってる。たかがその程度の努力なんかでそれを覆せるなどとは、死んでも思わないで下さい」
「・・・・・口でならなんとでも言える。行動で示して見せろ。・・・ではそろそろ始めよう。私の名はアイザ。小僧、いや、才能ある者よ。名はなんという」
「・・・サクヤ」
「そうか・・・その名、しっかりと胸に刻みつけておこう」
「いや名前とか顔は忘れてほしいんですが」
「いくぞ!!!」
アイザが剣を抜いたので、俺も出す。
ヴン!!
と、どこからともなく『現れた』のは、白銀色に光る、刃がないように見える長方形の刀身を持つ剣。
この剣はほとんど使ったことがない。が、恐ろしいほど手に馴染む。
戦線を離脱する少し前に手に入れた。
まぁ細かいことはいいか。
そして俺はアイザへと向かった。
瞬間、二本の剣が火花を散らしながらぶつかり合う。
う~
ちょっとどうかな・・・
意見待ってます・・・