さー行こー!
今回は普段以上に短いです。
なにか、忠告とかあったらばんばん言ってください!
街は静寂に包まれていた。
おそらく、緊急の避難所にある程度人が集まったところでいっせいに街の外にある大きな建物にでも移ったんだろう。
2階建てのあの建物は、モンスター出現等による街規模の避難用に作られたものだ。
内部はホテルのようになっていて、街の住人約2万人が寝て起きることができるくらいの大きさを備えている。
俺も何度か入ったことがあるが、設備も普通のホテルとなんら変わりはない。
といっても、そう長い間こんなたくさんの人間が生活することは出来ない。あくまで『緊急用』。
だが、この建物が使われたのは俺がこの街に来てからたった二度目だ。
いくらこの街でもこんな規模の災害はそうない。
そして今回は確実に過去最高だろう。
ともかく街人全員が避難をとっくに終わらせ、一部では俺達に関する話が噂として流れているにちがいない。
良くも悪くも、この街の住人は仲間意識が強い。
今回、俺達にとっては悪いほうに向いたみたいだが。
「黙って出て行くのも後味悪いけど・・・明日を待つ、もしくは今避難施設に行くかするならそれなりに覚悟が必要だな・・・」
「私はこのまま出て行きたい。マスターとは少し話したい気もするけど・・・他の人たちにならいい、でもあの人にさえ冷めた目で見られたりしたらやっぱり傷つくよ。たとえ1年に満たない間とはいえいろいろよくしてくれたから・・・」
あの優しいマスターがそんな仕打ちをするか、と言いかけたが、人の心なんて簡単に変わるしな。
ミナにもいろいろあるんだろう。
だからこれ以上突っ込まないようにしよう。
「でも一応置き手紙くらいは残して行く。まぁもしマスターがそういう風に思ってるなら、見もせずに破り捨てたりするかもしれない。けど、それは気持ちの問題だと思うし。お世話になったのは変わらないから」
・・・やっぱり俺とは違う。
なんかこう、根本的に。
俺なら黙って行く。
誰かと深く関わったことがないから言えるのか。
一人っ子だったと思う。今となってはそれさえ分からないが。
そして両親は、俺が、生まれて1~2年ですでにまわりから一般教養を吸収しつくし、すでに知識的な面では社交辞令さえこなし社会人として生きていけそうなほどにまで成長してしまったことに恐怖し、すぐ俺を捨てた。
兄弟もいなく、両親にもすぐ捨てられた俺には、だから誰かに恩を感じたりするミナの気持ちが分からない。
命を助けてもらってそれに感謝するとか、そういうことではないんだろう、きっと。
「それより、サクヤはどうするの? 学校通ってたでしょ。出て行くってことはやめるってことだよね。まさかこれからずっと最前線以上の『世界の外側』目指すのに、学校に在籍し続けるわけじゃないでしょう?」
「ん、もちろんやめるけど?」
「でも友達とかいたんじゃないの。そんなほいほいやめられるものかな?」
「そんな別れを惜しんでくれるような友達なんかいない。唯一心配事といえば、・・・・・・・・・・んー・・・・うん、いくら考えてもやっぱり何もないわ」
「・・・・・・」
「そんな同情してるのが丸分かりな目でみないでくれるかな」
「まぁいいわ。ついでに、どのくらいの地位だったの?」
「クラスは『F』だった」
「あの『A』クラスでもせいぜい30後半くらいのレベルしかないあの学校で、『F』・・・そうとう弱い設定だったのね・・・でもたしか最低は『G』でしょ?」
「あぁ、なんか一回だけどうしても断れない感じの超簡単な任務頼まれたから仕方なしに受けてそれ成功させたら上がった。正直、あれはびびったな・・・。任務たった一回成功でランク一つ上がるって・・・」
「・・・そう」
「それでもたかが『F』だから簡単にやめられるはず」
「そっか。じゃあ・・・・そろそろ行きますか!」
「ん、一時間後に転移門前に集合でいい?」
「いいよ。私はそんな時間かかんないし。・・・・・じゃ、行ってくるね」
そう言い残しミナは、おそらくは『喫茶店』へと向かって走っていった。
俺は・・・とりあえず学校へ向かおう。
あー・・・本当に始まるんだな。
なぜだろう、これからはより死に近づくはずなのに・・・憂鬱だとか、そういった負の感情はまったくない。
むしろ心も身体も羽のように軽い。
なぜか、は考えないでおこう。
どうせよく分からないに決まってる。
とりあえずは・・・経験値を稼ぎつつ戦闘に身体を慣れさせるために比較的『外側』を徒歩で進もう。
そして情報収集もかねて、世界にもおそらくたったひとつしかないだろう『天才』達が集まる唯一の街、[Denial]へ行く。
それが俺達の第一歩だ。
・・・・あ、でもまずは学校に行かなきゃな。
く・・・