どんな事件にも黒幕はいる。
短くてすいませんw
笑えねえーw
久しぶりなくせに・・・
パチパチと音をたてて薪が燃える中、雲ひとつ無いため月明かりがよく届くほんのり明るい夜中に俺達は何をしているのかというと・・・
「あーーー! また負けたああ!!!」
「シオン君、弱すぎ・・・」
ミナが心底あきれた声で言う。
「お前ら組んでるだろ、絶対組んでるだろ・・・!」
「負けっぱなしの人間って、なんでまずその理由を相手のせいにするのかなあ」
「だってそうだろ!? 始めてからずっと俺しか負けてないんだから疑うに決まってんじゃん!!」
なんてシオンは言ってるが、もちろん俺達は組んでるわけでもなければ、イカサマだってしてない。
これは確実に、『運が病的に悪い』だけだ。
「もうやめ!! トランプなんてやーめた!!!」
「ワガママだなぁ、お前」
そう、トランプをしていたわけだけども、これが面白いくらいにシオンが弱い。
はったりもばればれな上に、実際手札もしょぼい。
いろいろなゲームをしたが、全てにおいて弱かった。
言っちゃなんだけど、ここまで運が悪くて、よくこんな世界でしぶとく生きていられたな、と思う。本当に。
確かに大きすぎる力はあるが、戦闘で死亡とかじゃなくて、こう・・・不慮の事故?とかであっさり死んでもおかしくないレベルだ。
それすらも全部『天才』の力でねじ伏せてきたのだろうか。
だとしたらこの先、本当に不安だ・・・。
多分、何かの拍子でぽっくり死んでも、『ああ、ついに・・・』とか俺達は思うにちがいない。
これほど、一緒に旅をする仲間として不安な人間はいないだろう。
なんでこいつと旅をする羽目になったのか、そしてトランプをすることになったのか・・・その原因は全部シオンにある。
*****
「まず、サクヤとミナ。二人は一つ勘違いしていることがある」
シオンはしょっぱなから俺達に喧嘩を売った・・・っていうのは冗談だけど、なぜか子供の間違いを諭すように言うから少しイラっときたのは俺だけみたいだ。
ミナは全く気にしてない。というか気付いてないといったような感じだった。
「え? 何いきなり? それはこの事件のことで?」
「そう。結構決定的なことだ。あんたらくらいにもなったら気付けるもんだと思ってたけど・・・どうも分かってないみたいだからさ」
「俺は気付いてるぞ、多分。現場を見てみないと分からないからトーレンスさんやミナには言わないでおいたんだけど」
なんとなくだが予測はついてる。
でもそれは二人が誰に殺されたかではないし、なぜ殺されたかでもない。
「どういうこと、サクヤ?」
「俺はあのとき加害者についての予想でこう言っただろ? 1、実力だけはあったが、頭は悪い集団。2、ばれても問題ないほど実力に自信があるか。3、挑戦状の一種。で、俺は3が一番怪しいんじゃないかと言った。でも、それは厳密にいうと少し違う。確かに挑戦状なのかもしれないけど、何かイレギュラーな要因がある可能性がある。トーレンスさん達『天才』がまだ気付けていない事実が」
「でも、だったら私達にその要因を知る方法はないでしょ?」
「そうだけど、予想は立てることができるだろ? まあ、そうだな・・・例えば、『二人は実は死んでない』・・・とかさ」
シオンがかすかに身を捩った。
ビンゴ、か?
「な!? そ、そんなわけないよ! だってトーレンスさん程の人が自分で、し・・・死体、を調べたんだよ?」
確かに信じられないことではある。
俺も一つの予測として少し考えていただけだ。
でもどうしてもそれが気にかかって、どうにか死体を調べられないかと色々と(黒いこともね、一応)してみたが結局無理だった。
「あの人でさえ気付けない程の死体、もしくはそう見せるための幻術か何かを行う技術を持っている人間の存在。そしてそれがこの事件の本質。・・・これが、俺がたてた予測の全てだよ」
そんな人間がもしいるとしたら、それは『天才』を超えた、俺達のような真の『天才』しかいない。
何人いるかは分からないが、そいつ、またはそいつらが黒幕という可能性をこっそり考えていた。
確証は全くなかったけど、シオンの反応を見ると・・・
「なんだ、ちゃんと気付いてるじゃん。俺に事件について話せとか言っときながら。ただ確証を得たかっただけかよ。・・・そう、二人は死んでなんかいない」
「そんな! じ、じゃあ、今すぐ助けに行かなきゃ・・・!」
「まだだ。ちょっと待って、ミナ。だとしたら一つ確認しなきゃならない。知ってる範囲でいいからさ。二人は死んでいない、それが事実なら、それは『生かされて』いるのか? ・・・それとも二人は、クロなのか?」
もうだいたいは分かる。
全てが本当に最悪な方向に進んでいる。
俺の予想通りに。
そして多分、『黒幕』のシナリオ通りに。
「もちろん、クロ。二人は死を装って街から出て、『黒幕』に取り入った。これが真実だよ」
*****
とまあこんな話があって、仕方ないから原因究明まで一緒に行動しようということになって、暗い雰囲気が嫌だったのか、ミナが急に「と、トランプしよう!」とか言い出したからこんな感じになった、というわけだな。
「あーぁ、なんか先行きが怪しくなってきたなあ」
「シオン君のせいだよね、サクヤ」
「だな」
「あーもういいやそれで・・・お前らめんどくさい・・・」
随分態度がでかいな。別にどうでもいいけど。
シオンもミナもすでに夢の中。
随分気楽でいいな、とちょっと思った。
なんか大きな事件になってきたけど、俺達は世界の果てを見るためにただのんびり旅をしていたいだけだ。
こんな事件、さっさと終わらせるに限る。
なんて、半覚醒な状態でミナの寝顔を見ながら考えていた。