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ゲームな世界!  作者: サクヤ
16/22

最強は、人間に何を見ている?

シリアスですね。

タイトル変えたほうがいいかもしれません。

そしていつにもまして訳わかりません。

しかもまたもや会話ばかりです。

次話でとうとうバトル入ります・・・

・・・前書きもなんのこっちゃ。










 全て話し終え、これからの方針を決める。


 場所は変わり、応接間のようだったさっきの部屋から、トーレンスの私室のような所へと移動した。


 そこは、生きることに疲れた老人が静かに余生を楽しみたい、という人が喜びそうな部屋だった。


 中は、壁も家具も全て木製だった。


 まず目に入るのが暖炉。


 部屋に入った途端にトーレンスが腕をさっ、と振り、一瞬で大きな火を灯していた。


 そこから少し離れたところに揺れる椅子・・・ロッキングチェアーというものが置いてある。


 この人は全然老人ではなく、年齢的にも若い。


 といっても中年? ひげさえなければちょっとはしゃいでる禿げかけの40歳、という感じなのだが、なぜかこの部屋がこの人にはぴったりだと俺は直感で思ってしまった。


 なぜかは分からない。・・・謎だ。



 俗に言うログハウスなる部屋の中にいると、なんだか眠くなってくる。


 が、なんとか眠気を振り払い、俺はさっさと話すことにした。



「まずは人員をどうするか、だな。中途半端な『天才』を入れたところですぐ殺されるのがオチだ。もし黒幕に出会ったりなんかしたら俺でも護り切れないかもしれない」



「俺でも・・・か。サクヤ、わしがなぜお前の名前を覚えていたか分かるか? 前に一度少し顔を合わせただけだというのにだ。現にお前はわしのことを覚えておらんかっただろう?」



 確かにそうだ。


 俺だって記憶力がない訳じゃない。


 こんなにレベルが高いんだし、そういう知能面のステータスだってすごいことになってるはず。


 しかも俺にはあまり知り合いはいないし、他人と話すこと自体が稀だから一度話したことのある人間の顔を覚えられないなんてことはない。


 それでもこの人のことを、ちょっと見覚えがある。程度にしか認識出来ないということは、よっぽど軽く、それこそ挨拶くらいの会話しかしていないということになる。


 その時は余程常識人だったのか。


 それであまり印象に残らなかったとか・・・


 今のこの姿からは想像もつかない。


 無言で肯定を示すと、トーレンスは話し出した。



「わしは、初対面の相手の魔力は必ず調べることにしておる。魔力の状態を見れば、その魔力の持ち主はどのような人間かある程度分かるからな。この能力を買われ、今まで、そしてこれからもだが、なにかやましいことを考えこの街に取り入ろうとしている輩を自ら実力行使で捕らえるという役割を極秘に担っていた。初めてこの街に来る者は必ずわしと会わねばならない、ということだ。お前ももちろん例外ではなかった。一人でこの街にやってきて、『旅をしてたら、ここに着いた』などと言い始めた。・・・『天才』というものは、なぜか互いに引き寄せあう。だいたいの天才はこの馬鹿みたいに広い世界で偶然出会い、それが何度も続き、最終的にこの街に所属している『天才』にさえ出会い、街にやってくる。それがどれだけ低い確率なのかは知らんが、そういう者が大多数、と言うより全てがそうだろう。わしもそうだ。だから、お前のような存在は異質過ぎたのだ」



 話を聞いて、俺は納得した。



「・・・だから、俺を覚えていたと」



「いや、正確には違う。いくら異質とはいえ、わしが魔力を検査し、この街に害があるものだったなら捕らえればいいし、最悪の場合は排除すればいい。ただそれだけだ。だからわしも、お前に出会うまでは大して気にしていなかったのだ。そうでなければ良いなと考えてはいたが」



 最後の方は少し声が沈んでいた。


 やはりそういう者はいたんだろう。


 その能力は周りからすれば確かに便利かもしれないが、持つ者によっては結構な苦痛だと思う。


 この人は、そんな能力に喜べるような人間ではなかった。


 誰かの嘘を暴くとか、誰かを捕らえるとか、裁くとか・・・


 そういう仕事に向いていなかったんだ。


 それでもこの街のために自分がすべきことを、自分にしか出来ないならと、ずっとやり続けてきた。


 ・・・やばい。


 敬語を使ってもいいとさえ思ってきた。



「なら他に理由があったってことか」



「そう。初めてお前に会ったとき、わしは心の底から驚愕し、そして自分自身に失望した。そのときまで自分が不幸だ不幸だと嘆き続けていたことにな。これでもわしは『天才』と呼ばれる者、それなりの過去は持っているし、この街に来たら『天才』は安らぎを得られると聞いていたのにわしだけはここにきてもそんなものはなかったことから、ずっと、自分は不幸なんだと思っていた。やりたくもないことをやらされていたんだからそう思うのは当然だと自分に言い聞かせてもいた」



「別にいいだろ? 普通この街にきたやつらは誰でも楽しく生きていけるはずなんだ。救われるはずなんだよ。でもあんたは・・・」



 そう思って当然だと思う。


 この人は救われなかったんだから。


 なのに遮るようにトーレンスは言う。。



「だがな。・・・サクヤ、わしにとってお前の魔力は、存在は、全てがもう圧倒的だった。わしは初めてみたよ。・・・何一つ憎んでいない『天才』を。お前の魔力は、そうだな。表現しづらいが無理やり言うなれば、優しい黒色と冷たい白色。この世界の何かに、あるいは全てなのかもしれんが、お前は絶望していた。わしが今までにみた中で、何よりも深い悲しみが見てとれた。だがそれでもお前は、何も憎んではいなかった。確かに攻撃的な意思はあったのだ。でもそれは決して憎しみではなかった、あれはおそらく、向上心。そしてこれがわしには最も理解し難かったのだが、お前からは『護りたい』という強い願いのようなものを感じたのだ。過去になにがあったのかは分からないが、どうしてもそれが理解出来なかった。もちろん、今もだ。そしてそれらを瞬時に見抜き、わしは本当に小さい男だったのだと打ちのめされた。わしよりも深い絶望を持っていながらも自分を不幸とも思わず、世界を憎んでいないどころか、何かを護りたいとさえ思っていたお前に。・・・ずっと答えを探していたんだ、これでも。だが世界を、何もかもを憎んでいたわしなぞにわかるようなことではなかった。だから、もしまたお前に会えたなら聞こうと思っていたのだ。サクヤ、聞いてもいいか? なぜお前は世界を憎んでいない?」



 へえ。


 おそらく会った時間は短かっただろうに、その短時間でそこまで考えていたのか。


 だがこの人が求めているような答えを、俺は言えない。



「悪いけどな。そんな高尚な理由じゃないんだ、生憎と。ただ、俺が幼いころに捨てられたから。2歳になったかどうかって頃にな。でも俺はそのときすでに全部理解していたんだ。俺が捨てられたってことも、捨てられた訳も。赤ん坊の頃にそんな恐怖体験をしたんだ、深い絶望になってもおかしくはないだろ? あと、親に捨てられたってことで、幼い俺は愚かにもこう考えたんだ。他にも悲しい思いをしてる人がいるのなら、みんな助けなくちゃ、ってな。だからじゃないか? そんなちっさい時に世界を憎むとか、そういうことは考えなかったんだよ、きっと」



 本当は違うが、これも一因となってるのは事実だ・・・と思う。



「それも、随分ダークな話だ・・・が、そうではないだろう。わしの前でそう簡単に嘘をつけると思うなよ? ・・・まあそれが聞けただけで今は満足しておくか」


 

「そうしてくれ。さっきからミナが置いてけぼりだ」



「そーだよ・・・二人でなんか訳分かんない話しちゃって。まあ、サクヤの過去が少し聞けたから、いいけどさ・・・」



 随分膨れているが、別にあまり機嫌を損ねてはいないらしい。


 それより、話が脱線してしまった。


 というか既に脱線どころの問題じゃない。



「ったく、俺の名前がどうとかの話でなんでここまで話が変わったんだ?」



 よく考えればおかしい。


 あの流れで俺の名前について触れるきっかけも何もないはずだ。



「ああそれはだな。サクヤのレベルが分からない、ということだ」



「は?」



「初めて会った時も魔力の量自体は巧妙に隠されていたが、お前にわしらを護るほどの力があるのか、という話だな。統合的にみて、お前の魔力の質にも興味があったが『量』にも同じくらい興味があり、その二つの要素が揃って初めて、お前はわしの印象に残ったのだ。お前は、さっきの発言からするとわしらを護るつもりだったろう? そんなことをお前が言ったから、お前の実力について考えて、そこからお前と初めて出会ったときのことを連想したのだ」



「ああそう」



「で、単刀直入に聞くが、サクヤは今何レベルなんだろう?」



「なんだろう? じゃねーよ! そんな馬鹿正直に教えるか!」



「そうだよ! 私だって知らないんだから!」



 このおっさんは本当に捉えどころがないな。


 騒がしいやつだ。



「んなこたどーでもいいんだっつの! 本題はこれからどうするか、だ!」



「人員をどうするか、だよね!」



「そう! で、まじでどうするんだ?」



「う、うむぅ・・・二人で行ってきたらどうだ?」



「サクヤ・・・ちょっとこの人ぶん殴って来ていいかな?」



「お偉いさんに手を出したら色々問題になったりして面倒だ。どうしてもっていうなら、服の上から、あざにならない程度にな」



「リアル!! ちょwwおまwww・・・・・・・・・これは真面目に言っておるのだぞ?」



 本当にやろうとしたので俺はミナを止める。


 そのときミナが露骨に舌打ちをしていたが、聞かなかったことにしよう。



「でもどうしろと? 俺達は場所も分かんないし、そもそも具体的に何をすればいいのかさえ分からんぞ?」



「場所は教えるさ。何をすればいいかというと、まあ究極的には二人が死んだ原因を突き止めて、人為的なものだった場合はその犯人を見つけ出す、ってところだ」



「でもそんなのどうやって見つければいい? その二人以外に被害者はいないんだろ?」



「まずは原因究明か。わしらも原因は分からんからな。攻略組の仕業だったなら、本部へ行けばいい。その他の人間や、もしモンスターによるものだとしても、わしらが総動員して敵を討とう」



「ならその原因とやらを探るためにも、まずは二人が被害に合った場所へ行け、と」



「そういうことだ。悪いが、わしはこれでも最高責任者、仕事もある。自ら現場へ行くことは出来ない。それに、今は他の『天才』達も手一杯だ、出来れば人員は割きたくない。だから二人で行ってくれると助かるのだがな」



「そういうことならいいんじゃない、サクヤ。変に誰か加わるよりも二人の方が色々と動きやすいし」



「そうだな。とりあえず俺達で探ってみる。場所を教えてくれ」



「今すぐ行くのか?」



「ああ。こんなことはさっさと終わらせるに限るだろ」



「そうだが・・・」



「大丈夫だよ。ここまでだってのんびり来たから疲れてもいないし」



「・・・助かる。場所は、この街よりも外側の[フリュート]というダンジョンだ。最奥まではまだ到達していない。レベルは500Lv.前後。行けるか?」



「ああ。ぶっちゃけ余裕だな」



「私も大丈夫」



「お前達のレベルは、どれほどなんだ・・・? もしかするとわしよりも高いのではないか・・・?」



 もちろん高いさ。


 でもそんなことは言えない。


 最高責任者なんて絶対なりたくないしな。



「さあ? まあ朗報を期待しててくれ」



「そうそう! きっと見つかるよ、原因くらい!」



「そうか・・・どうあれ、とにかく生きて帰ってきてくれ。危なくなったらすぐ逃げろ。・・・まあそれがいつでも出来たなら、こんなことも起きないのだがな・・・」



「引き際くらい心得てるさ。じゃ、行くか、ミナ」



「うん! 待っててね、おじさん」



「ああ、頼む」



 結局俺達はこの人に協力することになった。


 こういうの、久しぶりだな。


 内容は少し暗いけど、あの人も前向きに頑張ってるし。


 そういう人にならいくらでも協力してやるって思える。



 ・・・・・・パッとしないけど、とりあえず行くか。

















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