♣︎8
楽しんでください!
永久不滅のクレセントもどうぞ!
どうでもいいと思ってから急に、何も感じなくなった。
さっきまで苦しいと思っていたのが嘘のように。
何をしていたのか、なぜ苦しかったのかわからないほどに。
死んでいるのか、生きているのか、はたまた夢なのか。
なんだかすごく心地いい。暖かい感覚に包まれて、目の前が暗くなった。
「…あ!…ぁ…!リア!!」
なんだろう誰の声だろう?あれ。死んでない?
「ん…、?」
色々と考えた結果目を開けるに至った。
目の前には羅宇の泣きそうな顔があった。
「リア!よかった、大丈夫か?」
「うん…、」
なんだったんだろう?なんで死にかけてた?
彼を倒したから死にかけた。会長が死んだ時のようだ。
どういう原理でこうなってる?私じゃわからない。
「そうか…。リア、落ち着いて聞いてほしい。」
羅宇がこう言うと言うことは相当のことが起こっているんだろう。
「ん。何、」
「夏衣が、致命傷を負った。」
は、?え、?あの夏衣が?ありえない。
それに、呪い対策部の危機に繋がる…。相当まずい状況だ。
このご時世で、呪い対策部が危機に陥るのは人類も危機に陥ると言える。
「……、なんで。」
一番大事なのはなぜなのか。
「奇襲だ…大勢に襲われて。
だが、その奇襲のリーダーがクレアと言うらしくてな。
リーダーがいなくなったことで被害は随分と減ったらしい。」
「クレア…え、私何日寝てた?」
最低でも3日位寝てることになる。2日か?
「5日くらいだな。もう少し遅かったら殺してた。」
死にかけにトドメを刺さないでほしいな。
「……。」
パーティーだった人が、二人もいなくなってる。
夏衣に関してはまだチャンスはあるかも知れない。
「夏衣のこと、見にいくか?」
「うん…。」
そう言って私たちは病院を出た。私は病院で寝ていたようだ。
夏衣の致命傷。夏衣は体がすごく丈夫だったから、相当な傷だと思う。
普通の人なら即死するような。羅宇だって死ぬだろう。
病院から都市中央病院へと向かう。その途中で私たちはお互いに起こったことを話す。
私は、倒れた時と同じようにクレアと戦っていた。(7話参照。)
「俺は、招集が終わった後夏衣と途中まで一緒に帰ってたんだ。」
羅宇の話をまとめるとこうなる。
〈夏衣side,〉
「じゃあな。羅宇」
そう言って私たちは別れた。
今日は師匠がよく行っていたあの場所に行く。
元々その予定だったし、気晴らしにもちょうどいいだろう。
確かここを曲がって、と言う曖昧な記憶に頼りながら歩く。
師匠が暗殺されて亡くなってから思い出すのが怖くなって、
残った少しだけの記憶で、今まで師匠を見ていた。
師匠の苗字はエクスティア。リアと同じだ。
リアに聞くと、確かにそれはお父さんだと言っていた。
お父さん、師匠というそれぞれ大切な存在を殺されている私たちだ。
惹かれる運命でもあったのだろうか?普通より相性がいい。
私の家族は、私が小さい時に私を捨てていなくなった。
そこから少し経った日に、師匠が私を拾って育てたのだ。
私は、時系列をよく知らない。だがリアは私より年上だ。
師匠はいつ私を育てていたのだろうか?
そんなことを考えていると、思い出の場所についた。
ここは師匠も気晴らしに行っていた美しい場所だ。
「ふぅ…、」
息を深く吸って少し休む。
師匠との暮らしを思い出しているうちに涙が出てきた。
私の頬を、一筋の涙が伝ってゆく。
「っ…!」
魔物やマッドの気配がする…。しかも大勢の。
テラーダンジョンのボスのような人型のものもいる…。
ピュューンッ
グサッ
「あ"っ…、」
魔法が私の体を貫通した。まずい…、
血が大量に出ている。目眩がして立ち上がれない。
そこで私は意識を手放した…
〈現実、リアside,〉
「不意打ち…。」
話を聞いて一番最初に言葉に出たのはこうだった。
不意打ちは、死ぬ可能性が一番高い攻撃だ。
夏衣のあたりどころが悪くなればなるほど死に近づく。
不安になればなるほど、夏衣がいなくなった時のことを考えてしまう。
そんなことはありえない。ありえていいわけがないのに。
「あぁ。ついたぞ。ここだ、」
私たちは病室に静かに入って夏衣を見つめる。
痛々しい姿。夏衣には一生つかないと思っていた点滴がついている。
でも、このケガの深さで点滴で済むのは普通の人ならありえない。
夏衣がすごく丈夫な体をしていてよかった。
夏衣の脈は比較的安定しているらしく、もうしばらく待てば回復するらしい。
ピピピピピッ~!
「…、」
機械には脈が低下していると表示されている。
禁忌…、使ってもいいかも知れない。
「リア、ダメだ。夏衣の望みを壊すな。」
夏衣の遺言にはリアが禁忌を使いそうになったら止めろと書いてあったらしい。
絶対に使わせるな、使わせないでくれと。
「わかった…。」
機械の表示が0になった時、医者が言った。
「ご臨終です。」
まるで世界が終わったようだった。
私は泣き崩れた羅宇を眺めて目を瞑った。」
ありがとうございました!